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読書感想文『ホワイトラビット』伊坂幸太郎著
『ホワイトラビット』伊坂幸太郎とは
単行本は2017年発売。
文庫は2020年発売。
兎田孝則は焦っていた。新妻が誘拐され、今にも殺されそうで、だから銃を持った。母子は怯えていた。眼前に銃を突き付けられ、自由を奪われ、さらに家族には秘密があった。連鎖は止まらない。ある男は夜空のオリオン座の神秘を語り、警察は特殊部隊SITを突入させる。軽やかに、鮮やかに。「白兎事件」は加速する。誰も知らない結末に向けて。驚きとスリルに満ちた、伊坂マジックの最先端!
――『ホワイトラビット』
とにかくいろんなエピソードが出てくるのだが、終始登場するオリオン座に関するトリビアは浪漫がある。
伊坂幸太郎さんに対しては説明不要の人気作家だが、『ゴールデンスランバー』(2008年、本屋大賞、山本周五郎賞)、『重力ピエロ』(2003年、直木賞候補となるも辞退)が個人的フェイバリット。
直近2020年では『逆ソクラテス』で柴田錬三郎賞を受賞(まだ読んでいない)し、作品発表以外では山本周五郎賞の選考委員も務めることになる。
千葉県松戸市出身だが、東北大学に進学し現在も仙台在住らしい。
そのためか、多くの作品の舞台が徹底して宮城県だったり仙台市になっているのが大きな特徴。
こんな有名作家にフォーカスされる仙台って街が羨ましい。
この本を読んだ理由
久しぶりに小説でも読んでおきたいなと思い、目についたのが伊坂幸太郎。
当時文庫化された最新作ということで、いたるところでプッシュしていたのだろう。
で、図書館予約したが、順番がまわってくるまで半年以上かかった。
ココに刺さった
社会において、人の行動を自重させるのは、法や道徳ではなく、損得勘定だ。
――『ホワイトラビット』
香港に行って覚えたことの一つに、「香港人は、瞬時に損得勘定をするから、彼らにとって得になると思わせることを提示しないと、やってくれない」ということ。
日本人の場合、空気を読んだり、自分の気持ちを伝えるのが下手なこともあって、理不尽な要求でも渋々従ってくれることがあるが、香港人の場合はそうはいかない。
自分にとって明確なメリットがない事柄に付き合ってくれないのだ。
そんなボランティア精神はない。
だからサービス残業なんてもってのほか。
ところが僕は、香港で生活しているうちに、この習性が一概にマイナスとは感じなくなった。
そもそも何故、他人や会社の都合で、自分が犠牲にならなければいけないのか。
100歩譲って自分だけならまだしも、家族や仲間までを巻き添えにしていいのか。
だから日本の男は「仕事」を理由に家族を放ったらかしにすることが許される風潮になってしまうのではないか。
もっとエゴイスティックになったほうが、ハッピーになれるのかもね。
「仕事ってのは」と自分に言い聞かせるように洩らした。「人の人生の大半を食い尽くす化け物みたいだな」
「仕事がないと、人選が続けられません」
「化け物のおかげで生きていられるわけか」
――『ホワイトラビット』
この本を読み終えて
人と時間と伏線とニヒルなユーモアがとにかく入り組んでいる、伊坂ワールドが炸裂だった。
久しぶりの小説だが、充分過ぎるほど満足。
ビジネス書ばかりではなく、定期的に小説も読んでおいた方が、思考のバランスが取れそう。