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左右失認当事者の困りゴトと工夫。その人にしか分からない困ったこと【最適化】

先日知人と話している中で、「私自身が、左右がとても苦手で、でも工夫をしている」という話になり、驚かれたことが面白かったので、書いていきます。

この記事は「左右失認ってなに?」「私も左右が苦手!」「自分も人とは違う苦手分野があって工夫したい」「ヨシタケシンスケさんの『おしっこちょっぴりもれたろう』好き」という方向けです。読んで、何かのヒントになれば嬉しいです。

⚫︎「左右失認」って?→左右がすごく苦手な人のこと

みなさんは、「自分が左右が苦手」だと感じたことはありますか?

私は小学生の時から現在にいたるまでずっと苦手です。「右」と言われても、直感的にどちらか分からないのです。2秒考えてようやく「こっちがみぎか」と理解する感じです(感覚はなく、あくまで「頭で理解」)。

「苦手」でない人には全く伝わらない感覚だと思います。

ちなみに、医学的には「左右失認」は状態であり、疾患名ではありません。疾患と関係があるとすると、脳梗塞などの脳の障害により、他の感覚の低下と一緒に起こるものです。
なので自分程度の「左右失認」は疾患ではなく、「特性」に近いかなと思われます。ただ、おそらく頭頂葉という脳の部位が関連しているとは推測しています。


⚫︎「左右失認」の人の困りゴト。ゲームや視力検査、仕事、車の運転

困ったエピソード①ツイスター(ゲーム)

小学生の時に苦手だと自覚しましたが、1番思い出に残っているのはツイスターです。
ツイスターは4色の丸が描かれたマットの上で、複数で両手両足を、指定された色に置いていくゲームです。
小学生の頃友達や親戚とよくやったのですが、「私って人よりおバカかも?」と思って落ち込んだのをよく覚えています。

例えば、
「右手を赤」と指示が出て、みんな身体に近い赤い丸の争奪戦になります。でも、私は「みぎはどっちか?」を2秒考える必要があるので、遅れてしまって、いつもすぐ負けていました。
親にも相談しました。「私はなんで左右がすぐ分からないんだろう。逆にみんなはどうやって分かっているの?」と。でも親も「分からない感覚がわからない」ためか、「お箸を持つ方が右だよ。それか時計をつけるのが左。でもなんとなく分かるでしょ?」という返答で、解決しませんでした。


困ったエピソード②視力検査Cマーク

次に、地味に困っていたのが視力検査です。
アルファベットのCのようなマーク(ランドルト環というらしいです)を見て、切れ目がどの方向か伝え、視力を推測するものです。

これも苦手でした。上下はいいのですが、右と左がむずかしいのです。
「C」と見えても咄嗟に「みぎ」と言えず、「こっちはみぎでいいんだよな?」と一拍考えてから伝えていましたし、視力検査の前、いつも緊張します。


困ったエピソード③仕事

医療職ということもあり、デスクワークだけでなく、他の人と協力し身体を動かす作業もあります。
例えば患者さんのベッドサイドなどです。相方に「少し右にズレるよーせーの」と言われても、「みぎがどちらか」すぐ分からないので、少しタイミングが遅れてしまうことがありました。

困ったエピソード④運転のナビ

車の運転も大変です。特にカーナビから耳で情報を得る、もしくは自分が助手席でナビをする時はとても緊張します。

ナビに「次、左に曲がります」と言われても、感覚的には分からないので、いちいち「ひだりはこっち👈」と頭で理解してからハンドルを切る必要があります。

ナビする時も「次👈に行ってほしいな」と思ってから、「👈は『ひだり』でいいんだよな」と頭で確認して、「次の角を左ね」と伝えなければいけません。

1人で運転する時などは、左右を間違えても焦らず、なるようにしかならない、と諦めることにしています。

エピソードを振り返っても結構困っていますね。でも、人からは共感してもらえません。分かってもらえないので、誰も解決方法を教えてくれず、何かで調べることもできませんでした。

そのため、大学の授業で初めて、「左右失認」というワードが一瞬出た時、「これだーーー!」と感動したのを鮮明に覚えています。疾患ではないですが、名前がついて安心し、「世の中には同じことで困ってる人がいる」と思い、勇気が出ました。

⚫︎「左右失認」当事者の工夫。2秒考える・ジェスチャーとセットで伝える・自己開示する

小学生の時から地味に困っているので長年かけて自分なりの対処法を工夫してきました。対処法は主に3つです。

対処法①自分の直感を信じない。2秒考える
以前は、「みんなできるんだから、私だって直感的に分かるはず」と直感的に判断しようとしたこともありました。でも、高確率で間違えました。
ですので、今は直感を信じず、2秒考えて判断するようにしています。

対処法②ジェスチャーと一緒に確認・伝える
視覚⇆聴覚・言語 でミスマッチが起きている(「👈⇆ひだり」が分からない)ので、ジェスチャーと一緒に相手に確認したり、伝えたりすることにしています。

助手席で車のナビをするときも、「次、左。👈ね」と指で示しながらです。
夫は私が左右失認であることは重々承知なので、私の「みぎ・ひだり」の発言には頼らず、ジェスチャーも確認したり、発言を疑ってくれます(ありがたい限りです)。

対処法③自己開示をする
これが一番大切かもしれません。パートナーや仕事でよく一緒になる人に「自分は左右が極端に苦手です」と自己開示することです。
普通の人は困ってない部分なので、ミスが起きた時に、相手は何が原因なのか混乱します。
ですので、事前に「苦手ですが、こんな対処をしています。でも咄嗟の時に間違える可能性があります」と伝えておくことで、相手の混乱を避けることができます。

伝えると、「左右失認なにそれー?!初めて聞いたー」と驚いたり笑われることもありますが、一緒に過ごす時間が長いと、ちょいちょい私がやらかすので、納得感があったり、(夫のように)慣れてくれます。分からないままよりお互いのストレスが減ると感じます。

⚫︎『おしっこちょっぴりもれたろう』のように、みんなきっとそれぞれの悩みがある

最後にヨシタケシンスケさんの絵本『おしっこちょっぴりもれたろう』の一節を紹介します。悩みを抱える少年の話です。
(この先少し内容に触れますのでネタバレを読みたくない方はここまででお願いします)

ぼく、おしっこちょっぴりもれたろう。
おしっこをするまえかしたあとに、ちょっぴりもれちゃうから、いつもおかあさんにおこられる。

でも、いいじゃないか。
ちょっぴりなんだから。
ズボンをはいたらわかんないんだから。
しばらくするとかわくんだから。

でも、ぼくみたいにもれたろうでこまっている人、ほかにもいるんじゃないかな?

町で「こまった顔」をしている人に「ねえ、キミ、ひょっとして  もれたろう・・・?」と話しかけていくのですが、なかなか同じ悩みの人はおらず、孤独を感じます。

そとからみたら  わかんないけど
みんな  それぞれ  そのひとにしか
わかんない  こまったことが  あるんだな・・・

おなじことで  こまっているひとって
なかなかいそうで  いないもんだね。

そらはこんなにあおいのに
ぼくはちょっぴりもれたろう。

うみはこんなにひろいのに
ぼくはちょっぴりもれたろう。

でも、その後仲間を見つけて…というお話です。

私が左右が分からないように、
顔を覚えられなかったり、文字を読むのが苦手だったり、数字が苦手だったり、表情から感情が読めなかったり、マルチタスクが得意じゃなかったり。

きっとみんな、それぞれの「困りゴト」があって、すごく困っていたり、理解されなかったり、人に言えずに孤独に悩んでいたりするんだと思います。

全く同じ悩みを共有できないとしても、自分らしく前向きに、時には面白おかしく工夫していきたいですね。

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