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骨折の代償

足の指を骨折してから、その後の話。

骨折した日のことは、こらちから…。↓


真っ黒な爪

骨折してからというもの家の中で、ずっと安静にしていた。なるべく動かないように。


コの字型の金具を骨折した指にはめて、すり足で歩く生活が始まった。
マンション暮らしなので、移動距離は短い。安静にし、早く治したい気持ちで家に引きこもっていた。
履いていく靴もないし、包帯ぐるぐる巻きにされた足は、サンダルにも入らなくて痛々しい。
友達との約束は、月末だから4週間あれば間に合うだろう。それまでに治るだろうし、ここは我慢だ。

買い物は夫がしてくれ、最低限の動きのみで過ごした。胸を張って言うが、十分安静にできていたと思う。外に出たくてストレスがマックスになっていたくらい。

コの字金具


次の診察が近づいていたある日、足に塗っていたマニュキュアを取ってみようと思った。骨折した時に塗っていて、そのままにしていた。
ぐるぐる巻きの包帯から見える赤っぽいマニュキュアがちょっと浮いていた。おしゃれしてる場合じゃない、ちょうどいいから爪も休ませよう。

マニュキュアを取り終わると、親指の爪だけ三分の一が真っ黒だった。
内出血してる!
これは骨折したタイミングでぶつけた以外に思い当たらない。
だって、ずっと安静にしていたんだから。

親指と薬指をぶつけた…ってこと?
一体どんなぶつけ方をしたのか自分でも謎だ。ボーリングのピンのように弾き飛ばしたのだろうか。椅子は飛ばしてないから、私が飛んだのか?! いずれにしろ器用なぶつけ方をしたみたい。

内出血した爪を見て、親指こそ骨折していないのか不安が込み上げる。自力で曲げようとしてもピクリとも動かなかったから。

急いでスマホの写真を遡る。
先生の許可を貰い、骨折した日のレントゲン写真をスマホで撮っていた。
先生に薬指のことしか話さなかったけど、もしかしたら親指も負傷していたのかもしれい。今更感はあるが、誰だってとんでもない方向に向いている指にしか目がいかなかったはずだ。


スマホで写真のアルバムをスクロールする。

あった、レントゲン写真。

そこには、写っていなかった。
レントゲンには、人差し指から小指までしか写し出されていなかった。ますます親指の状態が、分からなくて不安が込み上げる。

痛みは無いし、手を使えば曲げられるからきっと大丈夫よね。
次の診察の日に先生に話してみよう。


診察の日

2週間が過ぎた頃、病院に行った。
骨折した薬指の周りにあった内出血は消えていた。親指の爪の内出血は相変わらずで痛々しい。レントゲンを撮ってから診察室に入ることになったので、親指も念のため撮影してもらった。

結果から言うと親指は何ともなかった。
動かしてなくて硬くなっていただけ。
良かった、ほっとする。

先生と一緒にレントゲン画像を見る。今日のレントゲン画像は、骨折した直後のレントゲンとほとんど変わっていなかった。

2週間経つのに変化が見られない!折れた個所は相変わらず変化なし、骨の濃さを見て骨密度の方が気になった。

「固定はもう外していいので、テープで横の指としっかり固定するバディーテープに替えましょう」

包帯が巻き取られ、薄いテープのみが巻かれた足をサンダルに納めてマジックテープをぎゅっと締め直す。サンダルから剝き出しで、無防備になった感じ。

「骨ってなかなかくっ付かないものなんですね…」
先生にポロっとこぼした。

「レントゲンではっきり治った、と分かるにはもうちょっとかかりますよ」

はぁ~そうですか、3、4週間って気休めだったんですね。
その言葉はさすがに飲み込んで、お会計を済ませた。

友達と約束した月末が迫っていた。


約束の日

友達と約束の日が来た。順調に回復しているし、病院の時にしか外に出てなかったせいで、ちょっと発狂しそうなくらいストレスが溜まっていた。
外へ出る時は、この状態で踏まれたりするとダメなのでコの字の固定金具を付けて出掛けるように言われていた。

久しぶりに包帯をぐるぐると巻いて
\私は足を骨折しています!踏まないで/
と沈黙のアピールができる状態で出掛けた。

駅まで車で送ってもらい、階段は使わずエレベーターで駅構内を移動しながら友達との待合せの駅に降りた。

あぁ自由、外の風が心地よい。

一か所だけ駅の改札からホームに行くのに階段しかない場所があった。
ゆっくり降りようとすると、足が変。
痛い…とは違う、痛くはないけど降りる瞬間にガクンと軽い衝撃がくる。普通に降りられない。足を交互に出して階段を降りるという動作ができなくなっていた。

1カ月動かしていない足は、足首までもが硬くなってしまっていた。
マンションでアップダウンが無い生活をしていた私は、そのことに気付かず過ごしていた。

その日の夜は、健康な右足が筋肉痛になった。たった1カ月でこの硬さはまずい。入院すると歩けなくなるって耳にしたことがある。このことか、と不安が広がった。

いつ元通りに戻れるのか。


急なリハビリ

診察の日が来た。骨折してから5週間が経とうとしていた。
前回から2週間ぶりにレントゲンを撮る。
どうか、くっ付いていますように!

期待しながらレントゲン画像を覗き込む。
えっと、デジャブかな?
全然くっ付いてなさそうなんですけど。

もういつ治りますか?なんて野暮な質問はやめた。
それより先生に聞かないといけないことがあった。

包帯が取れた足で歩くことに異変を感じていた。地面に親指が付いている感じがしない。ちょっと親指の腹が浮いているような変な感覚。実際少し浮いていた。
何ともないはずの親指を動かしてみるが、動かない。触って曲げてみる。曲がるし、痛くはない。

薬指にずっと金具を付けていて高低差ができたのが原因か。その状態で1ヶ月も過ごしていた為、浮いた状態で硬くなってしまったようだった。
O脚気味なので普段から外側に体重をかける癖もあった。それも原因だろう。

骨折した薬指以外の指ももちろん動かしていない。足の指って連動して一緒に動いちゃうものだから”安静に”を意識し過ぎて動かさないでいた。どうやらそれが良くなかったらしい。

親指のこと、他の指が動きにくいこと、足全体がずっと腫れていて湿布を貼った方がいいかを先生に聞いた。素人判断で湿布を貼っていたので、冷やせばいいのか温めた方がいいのかも正解を知りたかった。

先生は、じっと足を見てから
「痛くないなら、貼らなくていいですよ」

痛みはない。

「浮腫みだから、それ」

え、腫れてるんじゃなくて、むくみ?

「動かしてください。タオルを足の指で手繰り寄せる運動あるでしょ?あれやって」

レントゲンで見る限り、まだ骨はくっ付いていない。先生曰く、骨が付き始めているから、この状態なら動かしてももう折れることはないとのこと。

安静に、の状態からいつ動いて良かったの?
動かさないと硬くなるよー、なんて言われても
それ、いつからOKだったんだろう…

骨折してから1ヶ月以上経過しても骨がやっと付き始めただけ。簡単に修復はできない。
治りがあまりにも遅く、しびれを切らして、私はGoogle先生に聞いていた。無常にも完治まで2~3ヶ月、それ以上かかる人もいると書いてあった。なので今度は素直に「分かりました」とだけ返事をする。

会計を済ませて、夫が待つ車に戻った。
「まだ、だった」
動かしていいってことは、回復してるってことだよ、と前向きに言ってくれた。

あと10日もすれば骨折から2ヶ月になる。
バディーテープも取れて、一見治ったかのように見えるが、相変わらず浮腫みが取れない。

マッサージしたり、お風呂で温めたり、足を高くして寝てみたり…リハビリしながら浮腫みが取れることをあれこれしている。

ほんの一瞬の不注意で骨折した代償は、大きかった。
ゆとり、余裕、落ち着き、年齢と共に兼ね備わるかと思いきや、そんなことは無かった。

意識が大事ね。急がない。余裕を持って。
今回の骨折で学んだ。

「痛っ」
15年以上住んでいる家で、相変わらずドアノブに肘をぶつけているけど。


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