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上質な舞台『宝飾時計』を観て

舞台を観たのは、何年振りだろう。
久しぶりに観た舞台の余韻が半端ない。

高畑充希さんが歌う「青春の続き」をSpotifyでリピートしまくっている。
一度テレビで歌唱されていたのを聴いた時は、歌が恐ろしく上手いなーという感想だけだった。でもこの舞台上で目の前で聴くこの曲は、ゆりかの想いがぎゅっと詰まっていて、切なくて、力強くて、心の核心に響いて、震えて涙が出た。生の、あの日、あの瞬間でしか聴けない歌声を聴けたこと、これが舞台を観る醍醐味なんだよね。圧巻だった。
本当に観に行って良かったと思う。

舞台「宝飾時計」公式Twitter


今回観に行った『宝飾時計』は、キャストが何しろ豪華だった。
高畑充希さん、成田凌さん、小池栄子さん、伊藤万理華さん、池津祥子さん、後藤剛範さん、小日向星一さん、八十田勇一さんら、個性的な実力派俳優陣。私にとっては、テレビで良く観ている方々。

HORIORO STAGEより


実は、高畑充希さんの舞台を観るのは、これで2回目。
8代目ピーターパンを6年間続けられていたミュージカル『ピーターパン』を娘に観せたくて、家族で観に行ったことがある。
当時ウェンディ役は神田沙也加さんが演じられていて、二人の美声を同時に堪能できたミュージカルは、今思えば宝物だ。
同じ役をずっとやり続けている、という共通点がある主人公ゆりかを高畑充希さんが演じた舞台。それがこの『宝飾時計』だ。

■あらすじ
10歳から29歳まで、同じ舞台の同じ役を続けた奇跡の子役としてミュージカル『宝飾時計』を演じてきた主人公のゆりか(高畑充希)は30歳を迎え
た今でも女優として活躍しているが、身長が当時から伸びていない。
同級生たちが次々と結婚し子供を産んでいく中、「私は何のためにこんなことをやっているのだろう」と自分の存在の意味を見つけられずにいた。
そんな彼女の心を支えているのは、恋人でもあるマネージャーの大小路(成田凌)。彼との将来を考える年齢になっていた。
ある日ゆりかのもとに「21年前にやったミュージカルの記念公演のカーテンコールで、テーマ曲を歌ってくれないか?」という依頼が飛び込んでくる。それは彼女の原点となった舞台だった。大小路に説得され仕事を引き受けたゆりか。現場で、当時一緒にトリプルキャストとして主演を務めていた真理恵(小池栄子)と杏香(伊藤万理華)と再会する。そこで亡くなった子役の勇大(小日向星一)の話になるが・・・。
過去と現在を行き来しながらゆりかは、自分の人生を振り返る。
舞台「宝飾時計」公式Twitter


この舞台は、現在と過去に時間軸が行ったり来たりする。
大きな場面転換はないが、ステージは回転舞台になっており、時間が流れていく様子やヴァイオリンの弦の音で時間軸が変わったことが分かる。
テレビドラマや映画では俳優さんの髪型や衣装が変わり若く見えたり、風景が変わったりするけど舞台では衣装も同じ、舞台上というのも同じ。なのにちゃんと時間が現在なのか、20年前の過去なのかが分かる。
これが舞台の演出なんだ。

笑いのツボもたくさん。会場がドッと笑いに包まれる。
1幕と2幕では同じセリフ、同じ光景でもがらりと見方が変わるのが面白かった。気持ちをググっと持って行かれる演出に釘付けになった。

舞台「宝飾時計」公式Twitter


本当に好きなことを言うのが怖い。

誰かには正直に言っておかないと、一生本当のこと言えない人間になるよ?

本当に自分が好きなこと。人に言う建前のような好きなことじゃなくて、本当の本当、本心から好きなこと。私にとってそれは何だろうか。
いつの間にか大人になってこんなこと言ったら笑われるかも、今更って思われるかも、そんな風に思ってオブラートに包んで話すことが増えた気がする。

自分が幸せになりたいのか、誰かを幸せにしたいのか。

この言葉も刺さった。
不幸より幸せになる方がいい。でも自分が幸せでいるために相手を不幸にさせる場合もあるのではないか。誰かを幸せにすることが、自分の幸せになる場合だってある。

あぁ、なんか深い。


脚本、演出の根本宗子さんは「上質な演劇作品に仕上がったと思っている」とインタビューで語っている通り、上質という言葉がしっくりくる舞台を観れた気がしている。

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