腸に効く魔法的な紅茶
私が千歳烏山に住んでいたのは、大学を卒業して社会人になった春からの2年間だった。言いかえれば今から20年近くも前ということになる。駅の西口改札を出て、北に伸びる商店街を抜けた先のこぢんまりしたアパートメントの2階に、一人暮らしの頃から飼っていたチューチュー(すごいアホだけどチアフルで黄色くて、一緒にいるだけで元気がもらえるセキセイインコ)と、2つ年下の妹(小平の女子大に通っていて、3年生になるまではキャンパス内の寮にひきこもって修道女みたいな暮らしをしていた)と一緒に、2年間だけ住んでいた。
千歳烏山駅には、ベッドタウンを連ねる京王線沿線のなかでもけっこう沢山の人が住んでいる。急行も停まるし改札も東西に2つある。観光地でもオフィス街でもない、下町というほどの風情もないぺたっとした住宅街だが、朝夕に駅を使う人は多く、周辺の商店街にもそれなりの活気がある。
駅を出て家に帰る道の右手に、紅茶のお店「ケニヤン」はあった。一階にはなにか別のテナントが入っていたものやら誰かの家だったのやら、今となってはもはや思い出せないないのだが、二階に続く狭い階段を登ってウッディな扉を開けると、明るすぎない電球に照らされて、昭和的な内装---ダークな木目の床、漆喰の白い壁、チェックのテーブルクロスのかかった丸いテーブルなんかが迎えてくれる。神保町界隈にある老舗喫茶の重厚さとも違うし、どこでも見かける効用追求型チェーンの卒のなさとも違う、いわゆる、昔ながらのリラックスした風情の喫茶店である。
まぁまぁ広い店内に馴染んだ古い木製の家具たちは、掃除が行き届いていても常に居心地の良い埃っぽさを醸していた。いつ行っても満席ということはないが、それなりに何組か、地元のおばちゃんたちがおしゃべりしてたり、おじいさんがのんびり新聞読んでたり、学生のカップルがお茶しているような、そういう感じ。
私は、その「ケニヤン」が好きだった。
どれくらい好きかというと、妹が大学を卒業すると同時に別の街に引越してからというもの、千歳烏山には片手の指に収まる回数しか、つまりなにかの手続きで必要に迫られた時くらいにしか訪れていないけれど、そのついでには必ずケニヤンに行ったくらい。ある年のクリスマスにはそこで予約して特別メニューを食べたくらい。そして、叶うものなら、今住んでる街に出店してくれたらいいのにって思うくらい。うん、その懐かしの雰囲気がこの時代に映えないことはわかっているけれど。
なぜって「ケニヤン」の紅茶やパスタやスイーツには、オシャレっぽい全国チェーンにはない、独立系ならではの個性とあったかい味わいがあったのだ。
なぜ、そんな古い記憶を今頃引っ張り出してきたかというとだね、ここからが本題なので読んでほしいとこなんだけどね、
基本的に毎朝快腸の私が、正月以降のイレギュラーな食生活で出たり出なかったりの日が続き、ついに3日ダウンロードなしの日が続くに至って、突然思い出したのだ!
4日目には出たので、便秘性の方には「そんな甘い状況は序の口だ!」と怒られるかもしれないが、毎日出ている身からすると、食べてる量は変わらないのに数日ぶりでも毎日でも出る量のほうはあんまり変わらない感じがするのは、出なかった日の分ってどうなってるわけ?まさか再吸収?肉になったの?!と、気持ち悪いし凄く恐ろしい。
そういえば私、ケニヤンでお気に入りの「森のきのこのクリームソース」と「アイミティー」、つまりはロイヤルアイスミルクティーなんだけど、それを飲食した後には家に帰るまでの短い道中に必ず腸が緩む感じがして、帰宅後にちょうどよく通じたんだよねえ!
それが「必ず」であり「ちょうどよく」というのが魔法的なところであった。お腹が痛くなったりタイミングがコントロールができなくなったりする下剤なんかは飲みたくないけど、今、体内に居座ってる老廃物には速やかに出てってほしい。ああ、ケニヤンの紅茶がここにあれば!!!
そんなわけで、あの紅茶なんていう種類だったのかな、ホームページとかあるかな、と検索したら、なんと、オンラインショップでまさにその求めていたオリジナルブレンドが買えるようになっているのを見つけた。やった!
そして茶葉を取り寄せたのが約一週間前。アイスティーは手間だから、ホットで飲む「チャイミティー」のほうを買って数日前から飲み始めたところ、20年の時を経ても、ケニヤンの紅茶は私の腸の蠕動のスイッチとして、期待を裏切らずに作用してくれることが証明された。
朝食と一緒に濃いめに抽れて、ストレート、あるいはミルクを加えて一杯飲むだけで、やはり、絶対・ちょうどよくお腹が緩んで、一時間後にはすっきりダウンロード。魔法的効果。
我が家では、日本茶もコーヒーも生姜茶も黒豆茶もタンポポコーヒーも、メジャーどころのハーブティーも、お茶というお茶をいろいろ飲むので、紅茶だってもちろん何種類も飲んできた。けれど、ケニヤンのブレンド以外のお茶ではこうなることはないのである。私の体質とのなにか特殊な相性なのか、それとも他の人にとっても利尿作用ならぬ利●作用あるんだろうか?誰にも聞いたことなかったけれど、こうなると、気になってしかたない。
茶葉が手に入ったんだから、こんど来客に供してみようかな。味だって、しっかりしててほんとに美味しいんだよ。程よい渋みに自然な香り。余計な香料やフレーバーの入っていない、本物の紅茶だと思う。ケニヤンという店名からの期待を裏切り、生産地はスリランカだったけど。
オンラインショップを見つけるのと同時に知ったのは、我がなつかしの千歳烏山店は2018年に閉店になってしまっていたということ。でも渋谷の公園通りを一本入ったところの姉妹店(本店?)は、場所が場所なだけに客層と雰囲気がまるで違うけれど、つまりだいたい若者で満席でガチャガチャしててしかも喫煙可なので私にとってはあまり居心地良くないんだけど、メニューも味も昔ながらの千歳烏山店と同じでご健在。
店舗数が減ってるところを見ると経営がうまくいってると言えるのか微妙だけれど、どうか「ケニヤン」が末永く続きますように。この魔法のブレンドを、これから先もずっと買えますように。
というわけで、純粋に美味しい紅茶としてみんなにオススメしたい、ケニヤンの紅茶。
私の個体事情かもしれないからあまり期待しないでほしいものの、オプションとして自分も利●効果あったよというひとがいたら、こっそり教えて欲しい。本音を言うなら、紅茶研究家か腸学者にこの現象を解説してもらいたいくらい。
■免責事項: 私は「ワイン」と「ポーク」を同時摂取すると、それがどんな高級店のものであっても一杯だけであってもリバース・スイッチが入る、すなわち絶対に悪酔いするというという特殊体質の持ち主でもあります。だから、ワイン&ポークがへっちゃらな人が多いのと同じくらい、ケニヤンの紅茶でもダウンロードがはじまらない人のほうが多いかもしれません。本記事はステマなどではありませんが、お買い求めになる場合は、あくまで美味しい紅茶として以上の効果が得られたら「あたり」くらいのおおらかな気持ちで何卒よろしくお願い申し上げます。