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「彼は頭が悪いから」

東大女子が「どこの大学?」と聞かれてごまかすという話は盛ってる。「東大」の答えに引く男は昔からいたが、それは「失礼なやつ」というネタにこそなれ、基本的に「彼は頭が悪いから」で済ませていた。

むしろ、性質の悪い男(同じ東大生も含む)をふるいおとす踏み絵だったので、誰かに聞かれて「かわいい」と言われたいがゆえに所属をごまかしたことなんてない東大女子のほうが、実際は多いと思う。騒がれるとめんどくさいというのはあったかもしれない。

だいたい「かわいい」なんて皆に言われる必要は全くない。大事に思うたった一人の男が「かわいい」と言ってくれればそれで間に合う。

東大の女性比率の低さは社会のアンコンシャス・バイアスを映していて、更なる歪みの発端にもなっている。確かにそれは事実だけれど、

希少種である東大女子は、ある種のハイエラルキーにおいて、実は、東大男子より上位にある。

まず(在学中は)実力以上にモテる

例えば1996年の当時、恒例の新入生による学園祭でクラスごとに何かの出店をするにあたって、その催しを盛り上げるために?「女子大の任意のクラスと組んでインカレ開催にしていい」という前提があった。そして、だいたいは男子学生が人脈を辿って「この女子大と組みたい」と、クラスの女子に伺いを立て、そこで承認されたらOKという、凄い暗黙のルールがあった。

うちのクラスは55人中、女6人で「わたしたちも女のコの友達を増やしたいからぜひ」というノリだったが、断られて単独開催となったクラスもよそにはあったと記憶している。(そこで断るっていうのも、思えば、凄い!)

それは確かに歪だが、女子が虐げられる世界ではない。ボーダーを超えた先のこのコペルニクス的転回は、案外知られていない。

だから、上野千鶴子さんの今年(2019年)の東大入学式祝辞ね。

そのキーメッセージを、私は、男女を問わず、東大生に限らず、あまねく「頑張る力」を天より与えられたすべての人に向けたものとして受け取った。

あなたたちのがんばりを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれないひとびとを貶めるためにではなく、そういうひとびとを助けるために使ってください。そして強がらず、自分の弱さを認め、支え合って生きてください。

なぜって、わたし自身は女性ながら、若い当時、唯我独尊で傍若無人で刹那的に生きていて、実にお恥ずかしながら、誠に遅ればせながら、その種のメタ認知を得たのは30代後半になってからのことだったから。この場を借りて、当時馬鹿にしていた男子たちを弁護したい。

「東大男子=高学歴をハナにかけて女性をリスペクト出来ない」ではない。偏差値的に頭がいいという自覚は確かにあるだろう、受験戦争でそれを証明したばかりだから。

でも「女性と接するにあたって、本質的に真面目で誠実な割合」の実態調査をしたら(どうやったらできるかしらんけど)、東大男子の中のその比率は、世間一般のその比率より高いのではないか。

ろくでもないのも、確かにいる。東大に入るために無理して大事な部分が壊れていたり、受験勉強の勝ちが人生全部の勝ちであると勘違いしてしまったり、はたまたサイコパスのような奴は、常に、一定割合、存在する。

彼らが犯す酷い事件や残念な暴走は、普通の大学生の話以上にマスコミの格好の餌食になる。けれど。

わたしが知る同級生の男子たちの多くは、ナイスな人達だった。多くは、良識的な家庭で素直に育ってきたお坊ちゃん。(だいたい若いころはそう言われるのを嫌がるが、年を重ねてそのリターンを受け取るにつれて、ありのままの自分を受け入れるようになる。)

ほんとに気づくの遅かったっす、友達は別として、男は頭が悪いからとまとめて粗雑に扱ってごめん。同じ人間なのに。なぜわたしは、我と彼との違いを認め、異質ながらも共に繊細な心をもつ人間同士として、リスペクトをもって、彼らに処することができなかったのか?

メタ認知を得るのは、早い方がいい。遅ればせに気づくと、積年やらかしてきたことが蘇り「痛たっ!」ってなるからね。わたしみたいに。

だから、やっぱり東大の男女比率はもっと正常になったほうがいい。それが事実なら「かわいい」なんて役に立たない呪縛から多くの女性が解放されるように、この国がアップデートされるといい。

上野さんの祝辞動画はこちら

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