「AFKアリーナ」が売れている理由をマーケティング観点で読み解く
最近リリースされた話題のアプリゲーム「AFKアリーナ」について、「なんであんなに売れているの?」という質問が多かったので、マーケティング観点から売れている理由を書いてみたいと思います。
この手の仕事は私の得意分野だし大好きな仕事です!
AFKアリーナ
https://afk-jp.lilithgames.com/
上海のパブリッシャー「LILITH GAMES」によるスマートフォン向け放置型育成ファンタジーRPG。全世界で4500万DLされている大ヒット作で、日本は世界サービス版の1年後れでの配信を行っている。
「LILITH GAMES」いきなり飛び出で
ジャジャジャジャーン、でもないだろう
ぺこぱ風に。
そもそも制作会社やパブリッシャーなんて気にするユーザーさんはほぼ皆無だから気にはしないと思いますが、この「LILITH GAMES」(上海莉莉絲網絡科技)は、2013年に設立されたソフトハウスで、もともとは中国に拠点を置くパブリッシャーです。
実は日本展開はすでにタイトルを2本展開して「AFKアリーナ」は3本目。1本目は2018年の「アート・オブ・コンクエスト」。2本目は2019年にサービスされた「Rise of Kingdoms」。こちらのタイトルは広告含めて見たことがある方も多いのではないかと思います。
実績は超お墨付き!
これから急激に伸びるの注目会社
中国開発と言えば、日本では「Tencent」「NetEase」「Yostar」「miHoYo」が有名ですが、アメリカの調査会社Sensor Towerが公表した「2020年3月グローバルAppstore・GooglePlay売上高ランキング(中国企業のみ)」では1位がTencent、2位がNetEase、そして3位にLILITH GAMESとかなり勢いがある会社です。
中国の大躍進はこちらの記事もご参照ください。
すでに日本ユーザー向けのチューニングでの成功もしているので、今後ますますタイトルを投入してくる可能性は高くなりそうです。
ちなみに「AFKアリーナ」は邦題ですでに1年前にグローバル展開済みで大成功。他にもグローバルで展開して大成功しているタイトルが数多い点でも実績と実力はお墨付きです。
ほぼ毎年賞をもらっているほどに安定感あるヒット作が多い。
AFKアリーナの
プロモーション&マーケティングの流れ
では「AFKアリーナ」のプロモーション展開などを軽くみていきたいと思いますが、正直パブリシティ面や面白いマーケティングについては、大したことは一切していなくて、マネーを積んだパワープレイが最大の特徴です。
しかしそれだけではなくて、今回はプラスアルファを仕込んでいたことが早期立ち上げでもより目立った結果につながっているとみています(後述します)。
・2020/04/20 日本でのタイトル発表
・2020/04/28 SNSでのRTキャンペーン開始
・2020/05/18 事前登録開始
・2020/05/22 事前登録数5万人突破
・2020/05/22 同タイミングでプレイ記事展開開始
・2020/05/29 事前登録者数15万人突破
・2020/06/19 サービス日時発表
・2020/06/30 サービスイン
・2020/06/30 SNKコラボ、ナコルル発表
・2020/07/07 売上ランキングで8位とトップ10入り 無料ランキングでも首位をキープ
AFKアリーナがマーケで売れた理由
AFKアリーナが日本国内で急激に売れた理由を書くと、大きく分けて3点です。
売れた理由1:コンテンツ内容の充実と実績
何はともあれこの要素は取り込んだお客様を逃さない、いわゆるとりこぼしをしない土台がしっかりとあったことです。この確信があるのとないのでは当たり前ですが、マーケティングにどれだけ力を入れるのかが変わります。
すでにグローバルで1年間チューニングをしたものなので、そう簡単にしっぱいしようがありません。そうすると当然ですが、プレイデータが充実していたことも超絶強い好材料だということです。
つまり、プレイしてもらえればユーザーの継続率、顧客単価、LTV(ライフタイムバリュー)がある程度推測できるため、どこまでお金を突っ込んでもいいのかの目安がわかるので、強気で広告費用をぶっこめるということです。
世界でも実績があるので、売れると思ってアクセルをフルスロットできるのはマーケット担当はこれ以上のバックボーンはありませんからね。売れるかわからないものをマーケティングすることとは打ち出す自信も違ってきます。
簡単にまとめるとこれがしっかりとできていたことが最大の強み。
βテストすらも行わず、発表から2ヶ月レベルでのサービスインができているのもそのなによりの証拠です。
✅グローバルレベルでコンテンツチェッククオリティが
既に完成済みであったこと
✅コンテンツボリューム、課金設計もよし
✅プレイヤーデータの蓄積があったこと
売れた理由2:
日本での広告運用ナレッジが溜まってたこと
先ほど触れたタイトル「Rise of Kingdoms」も同社は2019年の年末にリリースしています。そして「Rise of Kingdoms」で、日本国内での反応のいい広告等をしっかりリサーチしていたことが、「AFKアリーナ」に時にしっかり生きています。
ちなみに、「Rise of Kingdoms」も月5〜6億ベースでしっかり売れています。その分マーケティング費用も億単位だからえぐい。
『Rise of Kingdoms』のTwitterをみてみるとフォロワー数は8万人程度で、AFKアリーナとほぼ同等。TV CMの投下量、広告展開量もAFKアリーナとほぼ同等。
このCM、みたこと多いんじゃないですかね?
「AFKアリーナ」の広告展開
「AFKアリーナ」は今このTVCMを馬鹿なほど打っています。
はっきりいってこの会社のTVCMはゲームユーザー向けに広告をしていないことがもう1つポイントですね。
今回は広告の内容までは触れませんが、TV CMをみても正直なんのことか訳がわからないわけですが、これは意図してやっていると推測します。それは前回のTVCMでもそうですが、海外タイトルのマス展開は意図してゲームユーザーをメインユーザーにしていないことが多いです。
これが日本のパブリッシャと異なるところだと思います。
その証拠がWeb広告での媒体選定、獲得戦略が順調に言っているということであり、非ゲームユーザーの獲得と定着がしっかりと進んでいるからです。
公式SNSが盛り上がっていないにもかかわらず、前作でも5〜6億のセールスが出せているのも広告展開がうまくいっている理由の1つです。一言でいうと大資本を投下しているけど商売が上手いです。
◆無料ダウンロードランキングで1位をキープし続けている
過去の記事でも書きましたが、無料ダウンロードランキング1位をキープし続ける広告投下量とオーガニック検索で新規獲得を集中的に最大化しています。しかも継続している点も大きい要素です。
3:日本向けにマーケティング展開が合致した
最後にこの要素です。いくつか分けて書いてみます。
a:そもそものゲームのデザインが日本ライクであること
「AFKアリーナ」は見た目が完全に日本ゲーマーライクです。その時点で獲得アドバンテージは同社の他タイトルよりも高いです。
b:広告の打ち出し方、パっと見をより日本ライクに寄せてきた
当然広告も日本ライクの好む広告に仕上げています。
c:プレイ動画広告、プレイイメージがわかるWeb広告の
最適化を早いタイミングで行っている
d:ゲームメディア展開に力を入れていたこと
e:人気IPとのコラボを先出し発表していたこと
特にセールスにも大きなインパクトを与えたのは「人気IPとのコラボを先出し発表」はゲームユーザーに突き刺したことです。
この情報提供をサービス開始前から告知できていたことはかなりでかく、しっかりとコラボリリースした日にトップセールス8位までがっつりあがりました。
◆カルチャライズもしっかり外さない
「AFKアリーナ」はローカライズをするときの鉄板メニューを全て抑えており、さらにカルチャライズ要素を狙って仕込んでいる点も秀逸です。
私も中国、台湾、韓国のサービスを日本で40タイトル以上ローカライズしましたし、逆輸入もやりましたが、現地で刺さるコラボを仕込んでおくことはとっかかりのインストール数と課金率に大きな影響を与えます。上記の要素ははずせないアクションなのでめちゃくちゃオススメです。
4:タイミング
最後はおまけですけどタイミングです。
ゲームって最大の準備をしてリリースしてもタイミングによって伸び代がまったくことなります。幸いにして同社のタイトルがリリースしたタイミングでは大きなTVCM、新作の大作ゲームのリリースとはあまり被らなかったことも成功の大きな要因です。
また、在宅にいる期間が多かったことからもダウンロード数が大きく伸びたこと、目に留まる機会が多かったことなども大きな要因だと思います。
まとめ
ゲームについてはほぼ触れませんでしたが、「AFKアリーナ」が売れた要因についてマーケティング観点で書いてみました。
もちろんゲームが成功する要素が多いことはいうまでもないですが、マーケティング的にも非常に優れたことをやっていたことが多く目立ちました。
通常、1〜2ヶ月で発表からリリースするのは爆死案件です。何かの都合で「リリースせざるを得なくなった未完成のゲームが、βテストすらせずにリリースされられるゲーム」はほぼ爆死しています。
しかし海外でしっかりと実績を積んだゲームが直球で発表〜事前登録〜サービスインまでいく事例が最近の日本でもとても多いですね。
最近の事例では一部だけど、海外での成功事例を日本にもってきて成功しているケースが多くなってきていますが、どれも似たような背景を持っています。
荒野行動
PUBG
ラングリッサー
KOF 98
リネージュII
Last Empire – War
マフィア・シティ-極道風雲
ガーデンスケイプ (Gardenscapes)
しかしこれらは大資本で成功事例があるものを運用しているという点で真似や簡単に再現できるものではありませんし、必ずしも成功するとも限らないです。
そういう点も踏まえ、我々日本の制作メーカー、またはマーケッターは、広告運用に関しては小さくテストを繰り返してから着実に収益を上げていくのはもちろんですが、ゲームの開発側と連携して、準備、キャンペーン、イベントなどを無駄なく展開していくことが、資源の最適化にも繋がる唯一の手段だと思われます。