見出し画像

中野晃太「Retake」(2023)110分

 1977年から続いている「ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」の2023年グランプリ作品である。今年から日本航空の国際線でPFF作品が見られるようになって、久々に鑑賞した(というか、国際線のハリウッド映画、異常に減ってないか?)。

 私は高校野球で金属バットを使うのが好きではない。若い人が道具を使ってプロ並みに見せるなんて、それこそアマチュアの良さの放棄だと考えてしまうのだ。
同じように学生さんが映像編集ソフトにハマり、テロップや映像加工に凝っているのを見ると、正直がっかりしてしまう。若い人には、もっと根本を揺るがす・違うものを作って欲しいと思ってしまうからだ。その意味でも「Retake」はアマチュアらしい大胆で荒っぽくて、しかも繊細な作品だったと思う。

 ストーリーについては触れないが、オープニングの主人公の目覚めるシーンの画角が素晴らしい。私にとってはその大胆(極端)な構図が、後半まで引っ張る伏線となった。そうなのだ。アマチュアにはこういう常識破りの演出に挑戦してほしい。と言っても、中野監督は映像教科書的には、まったく素人感はない。むしろ映像教科書を知ってるが故に、大きく外すこともできる方なのだろう。

 出演者の存在感もハンパない。当然、誰も知らない役者陣なのだが、若者のエネルギーと繊細さとずるさといい加減さが伝わってくる。映画後半には、彼ら彼女らが有名俳優のようにしっくりくるのもまた不思議。こういう新しいタレントに出会えるのも、アマチュア映画の大きな楽しみであろう。

 繰り返すが、中野監督はまったく素人ではない。しかし、この映画のストーリーはいかにも素人っぽくてみずみずしくて、この映画を見ると「オレも映画を撮ってみようかな?」と勘違いさせるパワーがある。もちろん、そんな甘いわけないのだが。。。

Retakeの主題歌MVがありました。映画のシーンも満載。

 これはぜひ若い人に見てほしい。早速、動こうと思います。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?