あったか~い場所
また、スマホのアラームが鳴った。
冬の朝である。
*****
ああ、出たくない。
このあったか~いおふとんから出たくない。
決して睡眠不足ではない。むしろ十分に寝た。
それでももっと寝ていたい。なぜだろう。
それはおふとんの中があったか~いからだ。
裏を返せば、おふとんの外が寒いからだ。
*****
もしも今、このおふとんを出るとしよう。
急激な温度変化は体内の血管を収縮させる。
血管が収縮すれば血圧が上昇する。
血圧の上昇は様々な病態を引き起こす。
おそらく無意識のうちに「今、外へ出るのは危険だ」というストレッサーが働いているに違いない。
つまり、脳の指令によって、「ふとんから出たくない」と思わせて、自分を守っているのである。
生存戦略の一環として。
*****
この季節、クマは冬眠し、落葉樹は葉を落とす。
彼らは、冬の活動を停滞させる。それは、養分を得るためには、夏に行動した方が効率的だという自然の知恵である。
だとすれば、やはり、あったか~いおふとんに留まっている方が、長い目でみればパフォーマンスが上がるはずだ。
*****
冬至は過ぎたが、まだまだ昼は短く、夜は長い。
夏はサマータイムという制度がある。2時間早く出社する人がいる。
冬にウィンタータイム制があってもいいもんだ。
2時間出社を遅らせる。
その分、あったか~いおふとんでぬくぬくしていられる。
*****
のび太がドラえもんの道具の力で、ふとんのまま学校へ行った話があったような気がする。
この道具を発明した人は天才だ。
ちょー気持ちわかる。
しかし、おふとんのまま飛んでいくには、22世紀までテクノロジーの進化を待たなければならない。
*****
仕方ない。あきらめてここを出よう。それが現実だ。
都合のいいこと言ったところで何も変わりやしない。
目の前の世界は寒い。
寒いからこそのあたたかさだ。
寒がっている人がいる。
だけど、僕はその寒さを知っている。
大丈夫。
少し進めば日が昇る。
あったか~い場所はある。
*****
また、スマホのアラームが鳴った。
冬の朝である。