映画「哀れなるものたち」感想
2024年1月28日午後、映画「哀れなるものたち」を見た。
見たてホヤホヤの状態で、映画の感想を思ったまま書き散らす。
まず初めにこれだけは言いたい。
グロい系が苦手な方は、見るのを諦めるか、ネタバレ覚悟である程度どんな描写があるかを調べた上で見ることを強くお勧めする。
私自身グロい描写は大層苦手で、特に飛び道具よりもナイフやハサミなどの痛みが想像できるものがかなり苦手である。それにプラスして血の描写は本当にやめてほしい。一般的なドラマでもよく描かれる手術シーンなどは1番だめ。なので私がこの映画を見に行ったのは奇跡に等しい(ただ前情報を入れていなかっただけれども)。
なぜ見に行ったのか?というと、1つは「ララランド」と「クルエラ」でエマストーンの演技を見て大好きになり、そんな彼女が演じるということ。もう1つはPRのビジュアルがとても素敵だったこと。タイトルデザインも色彩も衣装も素晴らしく、これはおそらくウェスアンダーソン的にビジュアルにも力を入れていて楽しめるものだろうという期待。最後は、わずかに仕入れた前情報として「作り出された女性の物語」というところが気になったから。ここで外科医というワードを目にしていたので、少しのグロ味は覚悟はしていた(が、思ったよりひどかった)。
以下ネタバレありの感想散文。
時系列が間違っているかもしれないが、思ったことを書き出してみる。
映画の初めの方で、ゴッドが「人間と動物の違いを説明できるか?」ということを話していて、恐らく映画全体を通してこれが言いたいのかな?と感じる。
ベラ(脳みそ)がまだ幼い頃で、理性が整っていない頃に快楽に溺れていたのも、人は理性がなかったら動物的に快楽を欲するということの表れなのかなと想像した。他にも、お皿を割ったり倫理観や道徳感がないところからも動物的な感覚が伺える。
・ベラの脳みその年齢
ベラの脳みその年齢を想像すると、オーガズムの存在に気付いたのは恐らく10歳〜15歳くらい?そこから、船上でのマーサたちとのやり取りの中で「薄っぺらな人との付き合いが面白くなくなる」というようなことを言っていたのが10代後半くらい?
そう考えると、一般的な人の成長と近しい気がする。私も10代後半になり、より深い思想を知りたくなっていたような感覚を覚えている。
・船旅での会話
この船旅で出会ったマーサたちとベラとの会話がとても哲学的で面白く、途中途中「ここメモしたい!」と思ったセリフがたくさんあった。が、難しい単語と長めのセリフが多く、案の定はっきりと覚えていないのでぜひスクリプトでもう1度読みたい(映像ではもう1回みる勇気はない)。
・スラムを見せたこと
船旅の途中で黒人の方(名前を失念)がベラにギリシヤのスラムを見せるところがある。ちょっと唐突だったので、あのシーンは必要があったのか?とも考えたが、倫理観のなかったベラの成長を感じられるシーンでもあるし、この出来事がないと話が進まないので必要だったのかなと納得。
あとは、この出来事の後で黒人の方が「純粋な君が傷つくところを見たかった」と言っていて、この気持ちは意外と誰の中にもある気持ちかもと気づく。あまりにもピュアで痛みを知らない人がいるとして、その幸せな様子に嫉妬に近い感情を抱いてしまうこと。その隠したい汚い悪意を、きちんと言葉にしてベラに伝えた彼はすごいと思う。
・未発達=性的な魅力?ほっとけない?
ベラの頭がまだあまり発達していないときに旅に出て、結局あのおじさんがベラの虜になってしまったが、それはちょっと頭が弱い、でも体は成熟して美しい人が男性にとって魅力ということを言っている?(マリリンモンロー的な?)
時代的なこともあると思うが、頭の良い女性が好まれない時代もそういえばあったのだよなぁと気が遠くなる。
・結局救えるのは女性?
娼婦時代のベラは様々な男性とセックスをしたけど、結局ベラを一番気持ちよくさせられたのは(私はそう見えた)同じ娼婦である女性の仲間だったという皮肉。あの二人に恋心的なものがあるかはわからないが、私には友情のように思えた。
・ちょっとセックスのシーン無駄に多くない?
あんなにいるかな?というのがマジで素直な感想。あれだけの尺が必要だった理由が知りたい。
・令和に作られたが故のセリフ?
娼婦の館にて、ベラが勤務し出してすぐくらいに、客の男性とオーナーのおばさまの前で「女性側も選ぶ権利があってもいいのでは」ということを提案していた。結局却下されたけれど、ここまでの物語でずっと女性が搾取されまくっているので、このセリフでちょっと一呼吸を置くような印象があった。おかげで見る側はベラへの共感度をギリギリ保てるのかな?と思う。
・終始恐怖でしかない(特に後半)
中盤くらいまでを見て、シーンが切り替わってすぐに脳みそを切るシーンが出てきたりして、血や切った貼ったが苦手な私はマジで恐怖でしかなかった。いつまたあのようなシーンが来るか予想できず、終始緊張していた。後半はさらに、前半に見られたジョークなどもなく暗いサスペンスホラーのようで、あの将軍(またはベラ)がいつ何をやらかすか…ヒヤヒヤだった。
・こどもを持つことのエゴさ
勝手に死体を拾ってきて、自分の研究のために身勝手に胎児の脳みそを移植したゴッドが非難を浴びるかもしれないが、現実の世界でこどもを持つことのエゴとゴッドのエゴは同じではないか?
本人が生きたいかどうかではなく、生み出す側の意志によってのみ作られる。そのエゴが報われるのは、結局親(映画ではゴッド)に対して「生み出してくれてありがとう」と子が思うかどうかだけなのかなと思ってしまった。しかし報われるだけであって、エゴはエゴであることに変わりはないというか。そんな少し暴力的な考えが浮かんでしまった。
・衣装があまりにも良すぎる
ベラの衣装があまりにも良い。良すぎる。肩のシルエットは全てパワーショルダー並みの盛大なパフスリーブ。そして色の組み合わせが素晴らしい。水色、ペールピンク、イエローを合わせられるの凄すぎる。マスタードに近いイエローの使い方も本当に美しかった。素材感も絶妙で、身頃がベルベットのような生地に対して、袖の巨大パフスリーブは透け感のあるオーガンジーだったり。ワインレッドが綺麗なシフォン素材のガウンも最高だった。パリでの黒い学生服のような姿も禁欲的でとても美しい。書き出したらキリがないくらい本当に素晴らしかった。
冒頭が白黒で、それでもきちんと明度の差があり立体感のある画面で色を感じた。それが一気にカラーになり、あまりの美しさに卒倒しそうになった。想像していたものが現実になった喜び。本当に美しい。
以上が私のかなり荒い感想である。
セリフの言葉選び1つ1つがとても慎重に選ばれているような感じを受けたので、やはりスクリプトを読みたいなと思う。まずは原作を読んでみたい。
色々な意味で衝撃的だった。
鑑賞後は緊張で疲れ切っていた。
映像や衣装、美術が凄まじく美しく素晴らしかったが、映画としていいか悪いかよくわからない、というのが素直な感想。「女性の解放」などとも評されているようだが、正直それは感じなかった。
とにかくエマストーンに拍手。
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