だれも知らない闘い(ショートショート)
※このストーリーはフィクションです。実在の人物、団体とは一切関係あり
ません。また、犯罪を助長する意図はなく、道を踏み外さないための一助
としたく執筆いたしました。
※ご注意:最後は希望でしめますが、かなり重ための内容となっておりま
す。もし苦手な方でしたら、ブラウザバックを😌
それでは、はじまります・・・
コツ…コツ…コツ…
ガチャッ……ギィィ……パタン……
コツ…コツ…コツ…
……ドカッ!
わたし「…っはぁぁ~……」
灯りをつけないまま、真っ暗な部屋に入り、椅子に腰を落とす。
腹の底から淀んだ空気を吐き出してすぐ、声が聞こえた。
■■■ 「戻ったな。…どうだった?」
わたし「………できなかった…」
手に持ったナイフがすり抜けるように床に落ちて、ゴトリと音をたてた。
■■■ 「……なぜ?あれほど憎んでいたのに…。あいつは報復されて当然だ。
それだけのことを、お前にしてきたじゃないか…!」
わたし「………子どもがいた。」
■■■ 「は…?」
わたし「窓から見えたんだ…。子どもを抱いていた…。」
■■■ 「…………」
わたし「どうして……あんな奴に家族なんて…。あんな奴が親だなんて、
きっとあの子は幸せになれない!そうに違いないッ……!
……なぜ奪うばかりの奴に、あんな幸せがあるんだ……。
おかしいだろ……。」
■■■ 「許せないな…!」
「なおのこと許せない。今度はあいつが奪われる番だ。
お前が受けた苦しみを分からせてやらなければ…!」
わたし「でも報復したら…あの子が……」
■■■ 「しょせん他人じゃないか」
わたし「それじゃあいつと同じだ!それだけは嫌だ!同じになるのだけは!
あんな…あんな奴なんかと…ッ!!」
■■■ 「難儀だな…。奴がいなくなった方が、その子にとってもいいんじゃ
ないか?お前が言った通り、きっとロクな親にはならないはずだ。
たとえ今は、愛しそうに抱いていても…!」
わたし「でも、あの子は笑ってた……」
■■■ 「その子がまともに育つとも限らない。あいつの子だぞ。
親と同じように、人を傷つける大人になるんじゃないのか?」
わたし「そんなこと……わからないだろ…。」
■■■ 「煮え切らないやつだな…!そんなものだったのか!?
お前の怒りは!お前が受けた苦痛は!!」
わたし「……ちがう……」
■■■ 「そうだろう!!なら何を迷う!?もう一度奴のところに行って、
今度こそお前の痛みを教えてやれ!!」
わたし「でもそれだけじゃ済まない…!あの子の傷に…」
■■■ 「なればいい!!心に傷を負わせてしまえばいい!!
奴に関わる者がどうなろうと、
わたしの怒りは晴らさなければならない!!」
■■■ 「さぁ、やれ!!」
わたし「…ぃ、いや…」
■■■ 「やれ!!!」
わたし「ぃ、いやだ!」
■■■ 「やれ!!!!」
わたし「いやだ!!」
■■■ 「やれぇ!!!!」
わたし「いやだぁぁぁぁ!!!」
ガシャ---ン!!!
わたし「はぁ、はぁ、はぁ……」
…………
「チチチチチチ・・・」
鳥の鳴き声が聞こえる
ふと窓の方に顔を向けると
部屋に光が射し込んでいた
わたし「……朝日が、のぼったのか…」
窓へ向かおうとしたとき、足もとでザリッと音がする。なにか踏んだようだ。
…鏡の破片。
さっきまで向かい合っていた姿見が割れている。派手に割ってしまったようだ。それを見て、拳の痛みにようやく気づく。
もういちど足元に目をやると、
無数の鏡のかけらが、陽の光を受けて輝いていた。