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一日一頁:栗原康『アナキズム 一丸となってバラバラに生きろ』岩波新書、2018年。

体制のあり方を問うても何も変わらない。そのひとのあり方が問われている。いつまで主人と奴隷の関係を続けるのか。その生き方が問われている。

時間がなくても1日1頁でも読まないことには進まない。

 よーし、そろそろまとめにしよう。ランダウアーはよく「ユートピア」ってことばをつかっていてね。これさ、理想郷っていう意味じゃないんだ。「トポス」ってのが、「いまここにあるもの」、「現にあるもの」のことだとしたら、ユートピアは「いまここにないもの」、「どこにもありえないもの」のことである。いってみりゃ、トポスってのは現にある秩序のことだ。だいない、主人と奴隷の関係でできていて、その役割もきまっていて、それでこいつは役にたつとか、たたないとかいわれている。
 でさ、ひとの思考ってたいがいなもんで、この秩序だけでものを考えてしまいがちなんだ。
 古代奴隷制から封建制にかわりました、資本制にかわりました、ああ、人類はずいぶん発展してきましたねみたいな。けっきょく、ふるい秩序からあたらしい秩序へ、トポスからトポスへという枠でものを考えている。でもさ、これじゃなにもかわっちゃいないんだ。だって、ずっと主人と奴隷の関係できちまっているんだからね。だから、ランダウアーは口をすっぱくして、こういっている。ユートピア、だいじ。それはつねに秩序からはみだしていこうとするもののことだ。トポスからトポスへのあいだにあるもの、途上にあるもののことだ。主人と奴隷の関係からピョンととびだして、大地にむかって出発しようとするもののことだ。ひとが民来になろうとすることだ。

栗原康『アナキズム 一丸となってバラバラに生きろ』岩波新書、2018年、252-253頁。

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氏家 法雄 ujike.norio
氏家法雄/独立研究者(組織神学/宗教学)。最近、地域再生の仕事にデビューしました。