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一日一頁:島村恭則『みんなの民俗学 ヴァナキュラーってなんだ?』平凡社新書、2020年。

読み終わった。

社会的には啓蒙的公共空間の個人としてあらねばならぬと自覚しているが、それでもそのことが弱い立場の人間を苦しめてしまうのも事実。そこを踏まえた上で、すなわち傾向的知識人としてではなく、人間を苦しめるものと対峙しなければならない。

時間がなくても1日1頁でも読まないことには進まない。

 「市民的公共圏」の特徴は、「市民」による理性的・論理的なコミュニケーションが展開されるところにある。この意味で、「市民的公共圏」は、近代ヨーロッパの啓蒙主義を体現した空間(=「啓蒙主義的公共圏」)であるといえる。
 一方、モーニングでの人びとの言動には、啓蒙主義的合理性では割り切れない要素が少なからず含まれている。会話をするのに、理性的・論理的であることは求められない。やって来る客が、「社会的・経済的・精神的に自立した個人」としてのヨーロッパ的「市民」である必要もない。モーニングの場も、「他者同士が出会い、コミュニケーションをする場」には違いないので「公共圏」ということはできる。ただし、そこは、同じ公共圏でも、「市民的公共圏」とは異なる「対啓蒙主義的な公共圏」、つまり「ヴァナキュラーな公共圏」なのである。

島村恭則『みんなの民俗学 ヴァナキュラーってなんだ?』平凡社新書、2020年、162-163頁。

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氏家 法雄 ujike.norio
氏家法雄/独立研究者(組織神学/宗教学)。最近、地域再生の仕事にデビューしました。