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あんときのデジカメ 21世紀の讃岐の暗剣白梅香 with OLYMPUS CAMEDIA C-3030ZOOM

(はじめに)立ち止まって考えることができなければ歩きながら考えるほかありません。僕にとってのその契機となるのは池波正太郎先生の『鬼平犯科帳』になりますが、気がつけば季節は「暗剣白梅香」ですね。髪あぶらへの想像を巡らせつつ、目の前の白梅を20世紀のコンデジで撮影してみました。

長谷川平蔵の、その後の活躍はさておいて……。



 以後、平蔵は、およそ十年の長期にわたって盗賊追捕(ついぶ)の役目を遂行しつづける。
 盗賊たちは、
 「鬼の平蔵」
 とか、
 「鬼平」
 とか、彼をよんで、恐れること非常なものがあったといわれる。

(出典)池波正太郎「唖の十蔵」、池波正太郎『鬼平犯科帳』第一巻、2000年、48頁。


 新しい年にかわってから、ほんとうはゆっくりと、今年はどう過ごすのか整理して出発したいところでしたが、年末年始から仕事が忙しく、職場のゴタゴタが重なったりしまして、自分らしくないのですが、仕事ばかりしているウジケです。

 仕事の仕組みの作り直しもしなければならず、それに忙殺されながらも、現在の直面する仕事に対してもそれをこなしていかなければならないのですが、大切なことは忙しさに「流されてしまってはいけない」ということに尽きるのではないかと僕は考えています。

 だからこそ、自分自身が「今年はどう過ごすのか整理して出発」する必要があると考えているのですが、気がつけばもう3月です。なかなかゆっくりと考える時間を確保することができないのは事実ですが、しかしそれをそのまま放置してよいわけでもないことももう一つの僞ざる事実です。

 そして、こういうことはこれまでの人生においてもよくあることなのですが、立ち止まって考えることができないのであれば、歩きながら仕切り直すほかありません。そして、その契機となるのは、僕にとっては池波正太郎先生の傑作連作時代小説『鬼平犯科帳』(文春文庫)になります。

 年のはじめから読み直しながら、ゆっくりですが、自分自身の将来のことや仕事のことを仕切り直しています。

敵討ちも武士のならいならば、返り討ちも武士のならいでござる

 「お前さんの、その髪へつけているあぶらは何というものだね」
 「ま……やはり匂いが、あの強(きつ)すぎますようで」
 「いや別に……だが、ちょいとふしぎな、良い匂いがするものだから……」
 「これは近頃、池の端・仲町の浪花(なにわ)やで売り出しました白梅香(はくばいこう)という髪あぶらなのでございます。私は年甲斐もなく新しもの好きでございまして……」
 「なるほど……甘酸っぱい花の香りのような……ちょいとお内儀、色っぽい匂いだぞ」
 「まあ、ご冗談を--ほ、ほほほ……」

(出典)池波正太郎「暗剣白梅香」、池波正太郎『鬼平犯科帳』第一巻、文春文庫、2000年、217頁。

 『鬼平犯科帳』の1巻を味わうようにゆっくり読み直していると、ちょうど白梅の季節になりました。鬼平と白梅をコラボレーションするならば、1巻6話の「暗剣白梅香」を想起せざるを得ませんよね。これが「池波狂」とサガでしょうかね。

 タイミングよく遭遇したのですが、江戸の闇組織に火付盗賊改方長官・長谷川平蔵の暗殺を依頼されたのは、親の仇を討つ身の浪人・金子半四郎です。詳しくはぜひお読みいただきたいのですが、暗殺者を見出す契機になるのが「ちょいとふしぎな、良い匂いがする」「甘酸っぱい花の香り」の白梅香になります。

 その匂いがヒントとなって金子半四郎という剣客が浮かび上がり、壮絶なラストへと導かれていきます。

 暗殺者・金子半四郎は死臭を消すために髪あぶらの「白梅香」を香水のようにつかっていたということです。ちょっと気になったので、調べてみると、たしかに江戸時代は、髪あぶらが発展し、それを香水のように使っていたようです。そして面白いのは、その製法でしょうか。「蝋に松脂その他をまぜ、香料を加え胡麻油で煉った」という記述があります。

 しかし、梅の香りなんていったいどのように醸し出しのでしょうかねえ。今後の課題にしておきます。


おなじような高級コンデジの復活を望むのは僕だけではないですよね


  さて、人生と仕事の仕切り直しを試みつつ、白梅との出会いで香りの文化を振り返りながら、現実世界の実在物としての「白梅」を今回は、オリンパスのCAMEDIA C-3030ZOOMでスケッチしてみました。

 発売は2000年3月のこと。ちょうど今から20年前の「20世紀」のデジタルカメラということになります。私見になりますが、このデジカメ黎明期において、コンパクトデジタルカメラあるいはちょっとしたハイエンドデジタルカメラを牽引し、銀塩カメラからデジタルカメラへのアップデートを促すことに貢献したのは、オリンパスではないかという印象を強く抱いています。

 当時、ひとつはCAMEDIAがほしいなあと思うことが強くありましたが、価格的な問題もあり……当時の実売が12万円程度です! 並品のライカM3を購入できる価格です……、同時代的には切り結ぶことができなかったデジタルカメラになりますが、昨年末、安く出ていたものを運良く手に入れましたので、本機で讃岐の「暗剣白梅香」を撮影してみました。

 では、簡単にスペックを紹介します。撮像素子は、総画素数334万画素1/1.8インチCCD(補色フィルタ)で、当時の入門機が100万画素あたりをうろうろしていた時代ですから高精細なCCDというほかありません。もちろん、それが価格に反映されているのですが、そして、それよりも注目したいのがレンズです。35mmフィルムカメラ換算で32mm-96mmの3倍ズームレンズですが、全域でf2.8の明るい大口径レンズを搭載していることです。これは現在のコンデジでもなかなか巡り合うことのできない贅沢なレンズですよね。そして広角端の32mmなんていうのも「ものすごく頑張っている」というほかありません。

 実際の使用感ですが、20年以上前のデジカメですから、そのスローみ~さや液晶の小ささなど問題は実在します。しかし、手にとって撮影してみるとそれなりによく写るというのがインプレッションというところでしょうか。

 ただ、やはり、液晶の小ささのために、本当にピントがあっているのか確認が難しく、加えて、保存メディアがスマートメディアということもあり、容量を気にしながら撮影してしまう、つまり連写を控えてしまうことが隔靴掻痒というところでしょうか。

 しかし、こんなカメラが20年以上前に発売されていたことには驚きです。

 ぜひ、おなじような高級コンデジの復活を望むのは僕だけではないですよね

 以下、作例です。夕方、あるいは、曇天という最良とはほど遠いコンディションですが、よく写っています。


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今回の撮影行で立ち寄ったのは「こんぴらうどん工場併設店」(香川県仲多度郡琴平町680)。工場で作ったうどんをそのまま食べることができるちょっとジモト的なうどんやさんです。メニューはしょうゆうどんとかけうどんとぶっかけうどんのみというシンプルさですが、シンプルすぎるゆえに、「うどん」「そのもの」を味わいたいときに立ち寄ってしまう不思議なお店です。

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ということで撮影データ。プログラム撮影、ISO100、ホワイトバランスオート、露出補正なし。画像は2048×1536で保存。撮影は2020年2月29日~3月3日。撮影場所は香川県善通寺市、丸亀市。

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氏家法雄/独立研究者(組織神学/宗教学)。最近、地域再生の仕事にデビューしました。