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一日一頁:「インタビュー 原発「来た道」戻らぬように 前原子力規制委員・石渡明さん」『朝日新聞』2024年10月19日(土)付。

原子力規制委員会の委員として、活断層の審査をめぐって原発の再稼働を認めない結論をまとめ、60年超運転に道を開く法改正に異を唱えた地質学者の言葉に耳を傾けると、原発に賛成ないしは反対する立場以前に、留意しなければならない問題が浮かび上がってくる。

「原子力の世界に入って感じたことは?」との問いに地質学者は次のように答えた。曰く

私はずっと、地質学など理学の分野をやってきた人間です。一方、原子炉を作って運用する人たちは大部分が工学系で、規制委もそうです。工学系は理学系と考え方が全然違うんですよ。何というか、人間が万能のように考え、きちんと設計して施工すれば、きちんとしたものができる、と。その外側のことはあまり考えないですね

「インタビュー 原発「来た道」戻らぬように 前原子力規制委員・石渡明さん」『朝日新聞』2024年10月19日(土)付。

つまり、問題は、すべて「人間観」に帰着すること。近代主義といってよいが「人間は万能」という考えが全能として突出してしまうと、現在文明が行き詰まったように、人間そのものを破壊してしまうということ。確かに、科学技術を生み出した人間は万能のように見えるが、決してそうでなく「あやまりやすい生きものであるということ」だ。

「人間の限界」、あるいは「人間の有限性」を常に忘れないように心がけ、そこから制度設計していくほかない。

氏家法雄/独立研究者(組織神学/宗教学)。最近、地域再生の仕事にデビューしました。