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一日一頁:加藤節『南原繁 近代日本と知識人』岩波新書、1997年。
「ポスト・モダンの美名のもとに理念への冷笑主義がはびこり、現実をリアリズムの名によって追認する保守的な思想傾向がつよまっている」1997年の現在と今を比べてみるとどうだろうか。より劣化していることは言うまでもない。だからこそ南原の批判的理想主義が今こそ必要である。
時間がなくても1日1頁でも読まないことには進まない。
生きる時代を異にするものとして、こうした違和感をもつにもかかわらず、私には、南源からは最後にひきつぎたいと思うものがある。それは、南原の政治哲学に脈うち、私自身もっともつよい共感をおぼえる批判的理想主義にほかならない。南原は、価値と存在、理念と現実とを区別する二元論に立って、一方で、理想から遠い現実を批判し、他方で、理念を現実化しようとした。南原のこうした批判的理想主義は、世界的に、ポスト・モダンの美名のもとに理念への冷笑主義がはびこり、現実をリアリズムの名によって追認する保守的な思想傾向がつよまっている現在、その意味と輝きとをますます増しているといってよい。
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