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一日一頁:磯野真穂『他者と生きる リスク・病い・死をめぐる人類学』集英社新書、2022年。
読み始めた。
英語のaccidentには事故や災難といった意味のほか、偶然や思いがけぬできごとという意味がある。病や死という偶発性をどう捉えるのか。人類学者の知見が「今日」を新しく拓く。
時間がなくても1日1頁でも読まないことには進まない。
健康でいるためにこんな風に食べましょう、こんな風に運動をしましょう、こんな風に人と関わりましょう、この技術を使えばまだまだ長生きできます、というように。
その何がいけないのか、と問いたくもなるだろう。しかしこの倫理が止まることなく走り出すと、それはやがて私たち全てに課せられた人としての宿命、「人は病気になるし、人は死ぬ」ことと衝突するのである。
このような問題意識を持った上で私は、医学の価値と人間として生きることの価値とを慎重に切り分けながら、集団内に起こる現象を数量的に明らかにする統計データを素地とした予防のための医学が、個々人に内面化される過程とその類末(第一部)、それでもなお危機に陥った人々を救おうとする言葉のありようとその根底にある「人」についての思想を描いてみたい(第二部)。そして終章では、「この私」が他者と生きるという実感はどのように生成されるのかという問いを、時間をめぐる試論とともに投げかけたい。
リスク管理社会とわかりやすい救済の言葉に違和感を覚える人々に本書が届き、本書がその違和感を明瞭にする助けになるとするのなら望外の喜びである。
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