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一日一頁:中畑正志『アリストテレスの哲学』岩波新書、2023年。④

縷々読み進めている。

いよいよ、『形而上学』とは何かという最大の難問に這入りこんだ。形而上学とは古臭いスタティックな作業仮設にすぎないのか? 「否」というほかあるまい。つねに前へ進んでいく知的格闘こそ形而上学なのだ。

時間がなくても1日1頁でも読まないことには進まない。

 アリストテレスは、知性を行使した考究するという活動(テオーリアー)に、ある神的な性格を見ている。それは人間においても神的な性格をもつものの活動であり、そしてそれが完全な幸福である。
 しかしこのような人間における神的なものとしての知性は、この現実の世界とかかわり、そこにおいて世界の多様で可知的な事象と秩序を知り、理解する活動として発現する。その活動は、より具体的に、人間と社会のあり方についての考察であり、シラミの生態から星々の運行に至る諸現象の観察や研究であり、そして、さまざまな「ある」の中核にあるウーシアーとは何であるか、という問いとの知的格闘である。すなわち、アリストテレスにとって哲学そのものと言ってもよい。かりに、その探究が不動の第一動者のような神的なものへと想到するとしても、それは以上のような現実の世界とのかかわりを通じてはじめて観取されることなのだ。

中畑正志『アリストテレスの哲学』岩波新書、2023年、219頁。

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氏家 法雄 ujike.norio
氏家法雄/独立研究者(組織神学/宗教学)。最近、地域再生の仕事にデビューしました。