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一日一頁:オスタップ・スリヴィンスキー、ロバート・キャンベル訳『戦争語彙集』岩波書店、2023年。



読みたかった書籍をようやく紐解く。

ウクライナの詩人が蒐集した「戦争の脅威を体験した一人ひとりのストーリーを凝縮させた『語彙』」集。

戦争のイメージは複雑だが「一つのイメージに集約しにくいその実態に形を与え、共通の理解へと近づかせ、当事者同士が認識を分かち合う上でも、言葉は不可欠」と前書き「旅立ちの前に」で日本文学者のロバート・キャンベル氏は指摘する。

然りである。

複数の言語化を通じて、人間協和の時代は必ず訪れる。

星 ロマンナキーウ在住
 爆撃でガラスが砕け散るのを防ぐために窓にテープを貼ると、星みたいになります。わたしも、家の窓にテープを貼りました。すべての窓に、一枚につき不透明なテープを四本ずつ、マニュアル通り両隅から斜めに交差させました。
 太陽が出て、朝目覚めると、壁に影が映ります。まさしく星のように、ゆったりと這いずりながら。
 これが戦争をめぐる唯一の記憶であってくれればいいのに、と思います。

オスタップ・スリヴィンスキー、ロバート・キャンベル訳『戦争語彙集』岩波書店、2023年、33頁。

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氏家 法雄 ujike.norio
氏家法雄/独立研究者(組織神学/宗教学)。最近、地域再生の仕事にデビューしました。