脳卒中の神経学的重症度を評価するスケールNational Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)について詳しく解説
みなさんこんにちは!
リハビリナレッジです。今回のテーマは【脳卒中の神経学的重症度を評価するスケールNational Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)について詳しく解説】していきます。
脳卒中は、脳の血流が突然遮断されることで発生し、その結果として脳細胞が損傷を受け、さまざまな神経学的な障害が生じます。脳卒中患者の状態を評価し、適切な治療方針を決定するためには、その重症度を正確に評価することが非常に重要です。そこで活用されるのが、National Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)です。
NIHSSとは?
NIHSSは、脳卒中の神経学的重症度を評価するための標準化されたスケールで、米国国立衛生研究所(NIH)が開発しました。このスケールは、脳卒中患者の状態を迅速かつ正確に評価し、初期治療の効果を予測するために広く使用されています。スケールの合計スコアは、脳卒中の重症度を数値化したものであり、急性期の治療選択や長期的な予後の判断に役立ちます。
NIHSSの構成
NIHSSは、合計11項目から構成されており、それぞれの項目は患者の神経学的な機能を評価するために設けられています。各項目は0点から3点または4点のスコアで評価され、合計スコアは0点から42点の範囲で表されます。スコアが高いほど、脳卒中による神経学的障害が重度であることを示します。
主な評価項目は以下の通りです:
意識水準:患者の意識の明瞭さを評価します。
意識レベルの質問:患者に日付や年齢などの基本的な質問をし、答えられるかを確認します。
意識レベルの命令:患者に簡単な命令(例えば、目を閉じる、手を握るなど)を出し、その指示に従えるかを評価します。
視野:視野の欠損や異常を評価します。
顔面麻痺:顔の片側の麻痺や動きの異常をチェックします。
上肢運動:両腕の運動機能を確認します。腕を前方に挙げたときに保持できるか、下がってしまうかを評価します。
下肢運動:両脚の運動機能を確認します。足を持ち上げたときに保持できるか、下がってしまうかを評価します。
小脳機能(運動失調):四肢の動作の協調性を評価します。
感覚:感覚の異常や麻痺をチェックします。
言語:患者の言語能力を評価します。言葉を正しく発音できるか、言語理解ができるかを確認します。
構音障害:言葉を発する際の発音や声の明瞭さを評価します。
スコアの解釈
0-4点:軽度の脳卒中
5-15点:中等度の脳卒中
16-20点:中等度から重度の脳卒中
21点以上:重度の脳卒中
スコアが低ければ軽度の障害を示し、スコアが高いほど、神経学的障害が重いことを意味します。このスケールを用いることで、医療スタッフは患者の状態を迅速に把握し、適切な治療を選択する手助けとなります。
なぜNIHSSが重要なのか?
NIHSSは、脳卒中患者の初期診断や治療計画において非常に重要な役割を果たします。特に、血栓溶解療法(tPA療法)の適応を判断する際には、このスケールが使用されます。tPA療法は、脳卒中発症から3~4.5時間以内に行われることが望ましい治療法であり、その適応を正確に見極めるためにNIHSSスコアが活用されます。
また、NIHSSは治療の効果を評価するためにも使用され、入院中や退院後のフォローアップにも役立ちます。定期的にスコアを測定することで、患者の神経学的状態の変化を把握し、治療方針の修正やリハビリテーション計画の策定に反映させることが可能です。
NIHSS評価の注意点
・評価者のトレーニング:NIHSSの評価にはトレーニングが不可欠です。同じ項目でも評価者により点数がばらつくことがあるため、標準化された手順で評価することが求められます。
・評価のタイミング:脳卒中の急性期には神経学的症状が変動しやすいため、評価のタイミングを一定にすることが大切です。急性期では、入院直後や治療前後に繰り返し評価することで、状態変化を見逃さないようにします。
・患者の状態に応じた配慮:高齢者や言語障害がある患者では、指示に従うことが難しい場合があるため、過小評価を防ぐために配慮が必要です。また、視野や空間認識の問題は、過剰に点数を引き上げてしまう可能性があるため注意します。
・他の要因との区別:例えば、既往の視覚障害や運動障害など、脳卒中と無関係の要因でスコアが高くなることがあります。これらの背景を把握し、慎重に判断することが重要です。
最後に
NIHSSは、医療現場で非常に実践的で役立つツールです。学生や若手作業療法士がこのスケールを理解し、正確に評価できるようになることは、患者の治療効果を最大化するために重要です。初めて学ぶ際には、各項目をしっかりと理解し、実際の臨床場面での適用方法を学ぶことが大切です。また、先輩や指導者にフィードバックをもらいながら、実際の症例に対してNIHSSを活用してみることも良い経験となると思います。
脳卒中リハビリテーションにおいて、患者の神経学的な状態を的確に評価するスキルは、リハビリの質を高める鍵となります。NIHSSをしっかりと学び、自信を持って活用できるように、これからも学び続けてください。
NIHSSの評価用紙