【コンサラボpresents】西大伍選手インタビュー完全版 #読むラボ①(廣岡俊光)
いよいよ2022年もJリーグが開幕しました。サッカーを愛するひとりの人間として『サッカーのある週末』が今年も始まったことに本当に感謝しています。
さて、ことしの北海道コンサドーレ札幌には、実に13シーズンぶりにチームに帰ってきたという選手がいます。札幌出身の西大伍(にし・だいご)選手です。
日本代表にも選出され、鹿島ではACL(アジアチャンピオンズリーグ)制覇も経験。北海道コンサドーレ札幌のアカデミー(育成組織)が生んだ“最高傑作”とも言える西選手。
今回の単独インタビューでは、地元でありプロとしてはじめの一歩を刻んだ札幌に帰ってきた理由を軸に、西選手の思考に少しでも迫ってみたいと思い色々と聞かせていただきました。
「はじめまして」でしたが、話してみるとやっぱりめちゃくちゃ魅力的な選手。またすぐに次のインタビューを申し込みたくなっています。ぜひ最後まで読んでもらえたら嬉しいです。(取材・文:廣岡俊光)
■ おかえりなさい、西選手
ーー西選手、まずはじめに「おかえりなさい」と言わせて下さい!
西:ただいま!
ーーありがとうございます(笑)。また西選手が札幌の赤黒のユニフォームを着てプレーすることが決まってサポーターは喜んでいます。西選手の中でまた赤黒でプレーすることはどう思っていますか?
西:喜んでくれる人がいるっていうことは、すごくうれしいことです。Twitterなんかの反応もちょっと見たりしましたけど、本当にうれしいです。
ただ12年たっているので、正直あんまり実感がなくて・・・札幌ドームで試合をするまでは、そんなに湧かないかなと思ってます。
ーーまた札幌でサッカーをするという姿がイメージできない感じですか?
西:これだけいろんなチームに行くと、そういうのが薄れるというか、順位表見ても「自分どこのチームだっけ?」みたいな(笑)。
どのエンブレムを探すんだろうみたいな。まだ正直実感が湧いてないです。皆さんの前に立つことで帰ってきたなって思うんじゃないですか?
ーーホーム開幕戦では一発で「ああ、札幌に戻ってきたんだ」と思えるような雰囲気を、サポーターが作ってくれると思いますよ。
西:はい、楽しみです。
■ 決め手は「直感です」
ーー今回 “練習生” という立場を経ての入団でした。改めて札幌に練習生として参加した経緯を教えてもらっていいですか?
西:浦和を満了になってチームを探す中で、もちろん札幌にも連絡させてもらって。(会見で)三上さんが言った通り、いまの札幌のサッカーにぼくがどれだけ力になれるかを見てもらいました。
ーー連絡したタイミングは?
西:最終的に決めたのはキャンプが始まる前日でした。他に話をもらっていたチームもあって、そこでやろうかなって考えたりもしていたんですけど、やっぱりチャレンジしてみようかなと思いました。
ーー前日・・・?!他チームからもオファーがある中で、最終的に前日に札幌に決めた思いは何だったんですか?
西:なんなんですかね・・・ふと「そっちだ」と思いましたね。
ーー直感?
西:直感です。
ーー移籍会見で「34歳で練習生としての立場は刺激的だった」と。具体的にどんな思いでボールを蹴っていたんですか?
西:久しぶりの経験というか・・・ぼくらって常に評価を受けながらサッカーをやってるんですけど、チームも決まらない中で、セレクションみたいな感じでやるのは緊張感だったり、新鮮なものでしたね。
ただ自分のいままでやってきたものは無くなるものでもないし、それを信じてやることが重要かなと思いました。
ーークラブとしては西選手の技術の部分に関しては当然リスペクトした上で、ピッチ上のコンディション以外にも、オフザピッチの動きや選手とのコミュニケーションを見ていたという話を三上GMも会見でされていました。その点についてはどんな風に考えていましたか?
西:そのあたりもわりと人見知りしないですし、若い頃からいろんな人と喋れるほうなので、ぼくの中では心配なかったですけど、三上さんは分かってなかったかもしれないです(笑)。
ーー西選手が自分の経験にもとづく話を若い選手たちにしてくれたことに感謝をするような言葉も三上GMの会見ではありました。
西:特に練習生だからっていう意識はしていないですけど、練習参加させてもらうということで、若い人だけじゃなくてそのチームの人と関わるので、もしチームに入るということがなくても、なにかを与えられればと思ったので。キャンプだけで終わるくらいの感じでやってました。
ーー練習生という立場はおいて、サッカー界の先輩として若い選手たちと接して感じるものはありましたか?
西:どこのチームにいてもそうですけど、一緒にやっている選手に対しての責任がぼくらにはあると思うので。特に先輩になると、後輩のこれからのサッカー人生に対して、ほんとちょっと一言かけるだけでも変わる可能性はあるし。そういうひとつひとつのところに責任をもって接していきたいなと思います。
ーー最終的にクラブ側から一緒にやろうと伝えられたのは、どういうタイミングで誰からだったんですか?
西:三上さんですね。覚えてないです、自然な感じで。
ーーそれが自然に受け取れるくらい、西選手のなかでもこのチームでやるという気持ちに自然に入れた感じですか?
西:そうですね。練習参加をする時点で、やるつもりではいました。
ーーもちろん西選手くらいサッカー選手としての評価があれば、ほしいと手をあげるチームは必ずあったと思うんですが、そのなかで自分が選んだ札幌でプレーできることについてはどうですか?
西:うん。1年やってみてって感じだとは思うんですけど。力になれた時によかったなとおもうと思うんですよね。
■ 最後だから来たんじゃない
ーー入団会見で、コンサドーレはどんな存在?という質問に「親のような存在」と困りながら答えていた場面、印象的でした。親って絶対的に自分のことを愛してくれる存在。でも自分は反抗したり超えたいし安心する。どういう気持ちで『親』ということばをセレクトしたんですか?
西:あの質問は難しいですよね・・・(笑)。サポーターの皆さんのコメントとかを見るなかで、そんな感じなのかなと思いました。
ーー三上GMとは札幌を出たあとも「年に5-6回は連絡をとっていた」そうですね。札幌が西選手のことをずっと見ているよ、という合図を出し続けてくれたことに関してはどうですか?
西:すごくありがたいことですし。ぼくも『そのタイミング』は常に考えてきました。
ーーそのタイミング・・・リリースのなかで「これは自分のキャリアの最後をここで過ごすという意味ではなくて、成長するために札幌に来たんだ」と。もしサッカー選手に区切りをつけたいとなった時には、札幌に戻るという選択肢は持っていたんですか?
西:それがきれいかなと思っていました。「成長するために」というのは、札幌がそれに値するチームになったということで。「最後だから来る」とは思わなかったのは、ぼくなりの敬意というか、気持ちを込めてですね。
ーークラブは大きく変わりました。エレベータークラブと言われていたところから、タイトルを獲るんだという目標を掲げて、選手もサポーターもそれを信じられるクラブになった。どう感じますか?
西:素晴らしいことですし、そこを目指さないと、そういうチームじゃないとぼくはプレーしたくないとも思います。
ーークラブが成長していることを実感できたことも、札幌でサッカーをやりたいと思った理由になりましたか?
西:あぁ・・・そうなのかもしれないですね。
ーークラブの見ている場所や舞台の変化については、以前在籍していた頃との違いは感じますか?
西:そんなに覚えてないんですよね。ぼくもやっぱりそれだけ変わってきているので、いまの気持ちでその当時は見れていないから。ちょっと分からないですかね。
ーー正直にありがとうございます。西選手だってあの頃とはまったく立場が変わっているし。比較できないですよね。
西:難しいですね。
■ キャプテン宮澤のやさしさ
ーー西選手の在籍時からクラブに残っているのが宮澤裕樹選手。他チームにいる間、宮澤選手の活躍ぶりはどう見えていましたか?
西:いい選手になったと思いますし、それは周りからも聞きましたし。よくやってるなと思います。
ーーエレベータークラブ真っ只中だった時からいまに至るまで、どの監督のもとでも常に試合に出続けて、いまキャプテンとしてチームを引っ張っています。
西:あんまり変わってないですけどね(笑)
ーー変わったのは髪型ぐらいですか?
西:髪型変わりましたっけ?
ーー西選手と一緒にいたころはめちゃくちゃ長かったです。
西:そうですね。でも、それはぼくも言えないんで(笑)。
ーー宮澤選手とは練習参加している中でもコミュニケーション取ったと思いますけど、どんな話をしたりしましたか?
西:あいつはいじってくれますね。周りにぼくが溶け込みやすいように。彼なりに考えてるのかなと思います。
ーー若い選手も多い中で馴染みやすいようにと。愛のある行動ですね(笑)
西:そうですね。意外といろいろ気にして考えてるんじゃないかなと。一応キャプテンですしね。ぼくがいた頃なんてフワフワしてお菓子ばっかり食ってるやつでしたから。
ーー(笑)。大人になったということですかね?
西:そうだと思います。お菓子はまだ食ってると思います。
ーーそうやって西選手がまた赤黒でプレーできるような空気を作ってくれたということですね。
西:そうですね。優しいですね。
■ ミシャサッカーとの相性
ーーコンサドーレは規模の面でも成長しましたが、ここ数年はミシャ監督がサッカーの部分でも大きく成長させて、リーグの中でもある種特殊なサッカーで目立つ存在にもなっています。西選手はコンサドーレのサッカーはどう見ていましたか?
西:ぼくも特殊かなと思っていたんですけど、入ってみたら結構シンプルで。当たり前のことをより意識させるような練習をしていて、その中で個人が成長していけるんじゃないかなと感じています。
ーー移籍してきた経験を積んだ選手、ベテランと呼ばれるような選手でも、ミシャ監督のもとで新しいサッカーの面白さや成長に目覚めたという選手が多いんですが、実際にやってみて感じるところはありますか?
西:そうですね。考えるスピードが速くなるとか、そういうところはあるかなと思います。
ーー他チームは、札幌は特殊なことをしているというイメージを持っているんでしょうか?
西:そうですね、ある程度『かたち』が作られているものだと思っていました。
ーーかたちがあるということは、当然それに対するやり方も研究されやすいと思いますが、そのあたりの強さともろさを感じる部分はありますか?
西:それはどこのチームにもありますね。
ーーいま西選手がチームに貢献できる場所はどういうところだと考えていますか?
西:監督が目指したいところや個人に求めていることと、ぼくが得意な部分は結構似ているかなと思います。ただその中で求められることと勝つためのプレーとのバランスというか、そのへんをうまく繋いでいきたいなと思っています。
ーーミシャさんと似ている?
西:求めている意識が、もともとぼくが得意なところと似ているのかなと思います。
ーー札幌を選ぶときに、ミシャさんの存在というのは理由になりましたか?
西:(ミシャさんのやり方と自分が)合うかどうかというのは、正直分からない、むしろどうなのかなぁと思ってる部分はありましたけど、入ってやってみたら「できることがあるかな」と思いました。
■ 「運を貯める」
ーー赤黒のユニフォームは13シーズンぶりです。サポーターにどんなプレーを見せたいですか?
西:また見に来たいって思ったり、なにかを感じてもらえるようなプレーをチームとしてしたいなって思います。
ーークラブがタイトルを獲ることを信じて応援しているサポーターは、西選手がそれに向かう過程でどんなことをしてくれるんだろうと楽しみにしていると思います。期待にどう応えたいですか?
西:うーん、なんでタイトルを獲れるかは分からないので「みんなでゴミ拾いして運を貯めましょう」とかですかね(笑)。運も本当に重要だと思います。日頃の練習もそうですし、日頃のおこない、すべてがそういうところに繋がっていくんじゃないかなと思います。
ーー「運を貯める」みたいな考え方って、昔からあったんですか?
西:はい、小学生くらいから。・・・冗談です(笑)
ーーあの・・・冗談に聞こえないからやめてください(笑)
西:(笑)。だんだんと、ですかね。試合でいくら頑張ろうと思っても、練習をやっていないと出ないかなと思いますし。
ーーそういったものも大切にしながら、この1年間札幌で過ごすということですね。
西:はい。
■ サポーターのみなさんへ
ーー三上GMが会見で、複数の選手が西選手と一緒にサッカーしたいということを直接言ってきてくれて「ありがたかった」と。それを聞いてどう思われますか?
西:嬉しいですね。誰が言ったのか教えてほしいです。・・・逆に言ってない選手をあぶりだしましょうか(笑)。すごい嬉しいです。
ーーこの短い練習生としての期間に、そういう思いを持ってくれる仲間がいたというのはどうですか?
西:一緒にやってもそうですし、ぼくが今までやってきたことも見ている人も多いと思うので、そういうサッカーに対してやってきたことは間違いじゃないんだなと思いました。
ーーそれではサポーターのみなさんに、いま西選手が伝えたいことを伝えてください。
西:コンサラボをご覧の皆さん。ただいま!あと初めましての人もいるかもしれないですね。西大伍です。皆さんの前でプレーできることをとても楽しみにしています。1年、皆さんを楽しませたいなと思っているので、よろしくお願いします。
ーーありがとうございます。1年と言わずというのがぼくの本音ではありますが、今年いい1年にしましょうね。
西:よろしくお願いします。
■ おしまいに
最後までお読みいただいた皆さん、ありがとうございました。UHB『コンサラボ』は“北海道にスポーツがあるよろこび”をテーマに、毎週日曜深夜0時30分からお届けしています。
また公式Twitterでは、スタッフによる取材ネタを日々発信しています。(いいカメラが欲しい・・・)
たまにTwitterの中だけで遊んだり・・・
試合後の選手・監督インタビューは『意訳しない』ことを大切にしながら、可能なかぎり早くお伝えできるよう頑張っています(できないこともあります。その時はごめんなさい)。また相手チームの監督や選手のコメントもできるだけお届けすることにしています。試合を多面的に振り返る楽しさを感じてもらえたら幸いです。
これからもコンサラボをよろしくお願いします。