『存在のすべてを/塩田武士』を読んで
平成3年の二児同時誘拐事件、小学6年生の子は数時間後に見つけ出されますが、4歳の子は犯人を取り逃し誘拐されたままになってしまいます。
それから3年後、誘拐された子が6歳に成長して無傷で祖父母の元に戻ってきたけれども、空白の3年間は謎のまま、事件は未解決のまま忘れ去られます。
ここまでは誘拐事件ものだと思って読んでました。塩田武士さん、ごめんなさい。
その30年後の令和3年、旧知の刑事の死をきっかけに新聞記者の角田が事件を追い始め真相が徐々に明らかに。
すごいものを読みました。これは間違いなく塩田武士さんの最高傑作です。
卑劣な誘拐事件から始まり、警察の捜査方法、ネグレクト、ストーカー、写実絵画、美術界の闇、恋愛、子育ての愛情とたくさんの要素が詰まっていました。
生きるのって大変。腹立たしいことも、面倒くさいこともいっぱい。
めげずにちゃんと愛を持って生きようって心に誓いましたとも。
特に、最後は愛情に溢れていてムネアツ!
亮くん、良かったね〜!里穂ちゃん、良かったね〜!
オビにもあった通り、至高の愛の物語でした。
読み終わると「存在のすべてを」というタイトルが何重にも意味が込められていることがわかって、とてもしっくりときました。