夜を包む恋のメロディ
寝ぼけ眼の僕の枕元で誰かが歌っていた。いや、がなり立てていた。誰だっけなこの声は。前に聞いたことがある声で、聴いたことがある歌な気がする。いつ聴いたんだっけ。
遠い昔、そうだ。寝る前に聴いて眠れなくて頭の中を回っていたメロディだ。いつまでも響き続けていた。なんでそのことを忘れていたんだろう。
中学の時、好きなあの子がいて、スポーツ万能で高身長の同級生と付き合って、その後に好きになったあの子もまたそいつと付き合って、はっきり言って僕は自分にも世の中にも絶望していた。次々と童貞でなくなっていく友人たち。勉強と部活に明け暮れる日々。それはそれで悪くなかったけど、どこか世界に絶望していた。毎日右手が恋人、時々左手。
そんなとき、学校で誰かが隠し持っていたCDラジカセから爆音で流れてきた。世界は終わっていない。銀河鉄道の夜もあった。夜王子も月の姫も同じように悩んでいたのかもしれない。童貞には若すぎる。抱きしめてたい。
そんな青春時代があってもいいんだって、思った。そこから何でもよくなった。どうであっても世界は変わらない。でも別にいいやって。僕が僕であるの変わらない。かっこつけてもかっこつかない。馬鹿で真面目でいいじゃん。
そうやってしばらくして童貞も捨てて、適当に遊ぶようにもなった。そうして朝目覚めると、少し昔の気持ちに戻りたいなーって。変わることもあったのかな。
少し寝ぼけてたかもしれない。もう寝よう。明日も早いから。