「その日暮らし」を楽しめばいい
一年ほど前に書いた記事がずっと読まれている。
アクセス解析を見ても、なぜかその記事はいつもトップ10くらいには入っている。
それが「いつ死んでもいいと思って生きるのが幸せなのかもしれない」だ。
https://note.com/uenohiromi03/n/nad0d9732f150?sub_rt=share_sb
先日もこの記事にコメントをいただき、少しドキッとした。
何か悪く取られてしまう内容だったのかもしれない、と思ったからだ。
結果的にはこの記事の意味がしっかりわかっていただけたようで、ホッとした。
この記事で一番伝えたかったのは、「この瞬間を大事にする」ということだった。
言い方を変えれば、「その日暮らし」を楽しむことだ。
残念ながら「その日暮らし」という言葉には、昔からあまりいい意味がない。
計画性がない
将来のことを考えて生きていない
堅実でない
行き当たりばったり
刹那的
そんな意味を感じるからだろう。
しかし、本当にそうなのだろうか?
ここまで書いて、「ありとキリギリス」の話を思い出した。
以前の私ならば、絶対に「あり」の生き方を100%肯定していた。
将来のことを考え、今準備をする。
目標に向かってコツコツと努力する。
そんな生き方が良い生き方だと言われていたし、思わされていた。
もちろん、どうしても叶えたい目標のために努力することには、大賛成だが、まずその目標が本当に自分が叶えたいものなのか、を確認せずに「思い込んでいる場合」がある。
誰かが勧めた目標や、
目標の先にあるものに目が眩んで、それを自らの目標だと勘違いをしてしまうケースがある。
私が少し前まで経営していた、エアラインスクールにもそんな人たちがちらほらいた。
客室乗務員になりたいという人たちが集まってくるが、なぜ客室乗務員になりたいのか、を聞いていくと「もしかするとお母さんの夢を叶えてあげたいと思っているだけじゃないだろうか」と思うことがしばしばあった。
また、「客室乗務員というステータスが欲しいだけで、その仕事に魅力を感じているわけではないのだ」と思うことは、どんどん増えていった。
つまり「憧れ」と「現実」の違いを理解しないまま、自らの目標にしてしまっていた。
ただ、残念ながら憧れ止まりの人は、面接で見事に見抜かれ、落とされていく。
そのことに永遠に気づかず、夢を追いかけ続ける人たちも多いが、やがて疲弊し、夢をあきらめていく。それはそれで、気づきになるのであればいいのだが、それまでに費やした多くの時間や労力は、目の前を通り過ぎた楽しいことや本来の進んだ方がいい道を見逃していたかもしれない。
要は、あまり先のことを考えすぎて、今この瞬間に味わえる幸せを逃さないことが必要だと思うのだ。
あまり先のことを考えても仕方がない、と思うようになったのは、あのバンデミックだ。
計画を立てていても、決してその通りにはならない、という現実を突きつけられたからだ。
それならば、今日、そして今この瞬間が楽しい、充実していると思えているかどうかが、実はとても大事なのだ、ということに、ようやく気がついた。
「今ここ」という言葉は知っていても、心から納得はしていなかったらしい。
そういう意味では、あのパンデミックは私を含め多くの人に大事なことを気づかせてくれたのかもしれない。
同時に心配性も消えた。
昔から「石橋を叩いて渡る」性格だったのに、最近では心配になると、「いや、そんな先のこと考えてもしょうがない。なんとかなるよ。私、運がいいんだから」
と言っている自分がいる。
すると、不安はスーッと消えていく。
そう、その通りなのだ。
そんな先のことを考えても、もしかしたらその時私は生きていないかもしれないし、そんな心配は起こらないかもしれない。
だったら、起きるかどうかわからないことに心を痛めるより、今この目の前にある空、夕焼け、海など自然の美しさに見惚れていた方がいい。その瞬間は間違いなく、幸せなのだから。
今この瞬間の幸せを味わい続ければ、1ヶ月経った時、「幸せな1ヶ月だった」を思えるだろう。
結局人は、生きていることを許されているのは今日だけなのだ。
明日生きている保証はどこにもないのだから。
朝目が覚めたら、「ああ、今日も一日生きていいんだ」と思う。体と頭がちゃんと元気で、目覚めることができた。だから今日一日楽しむぞ、と思って、嫌なことは極力やらないようにする。
嫌な家事は、家電でカバーできるかもしれない。
嫌な仕事は、誰か他の人にお願いできるかもしれない。
その代わりに、自分がやりたいこと、得意なことを引き受ければいい。
そうすれば、みんな自分ができることで補い合い、みんなが幸せになれる気がする。
将来のことを心配せず、計画しすぎず、今を楽しむ。
自分がやりたいこと、できることを持ち合って協力する。
そんな社会になっていけばいいなあ。
これを「素敵なその日暮らし」と私は呼びたい。
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