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パリで手に入れられる作家ものの世界

海外ではCRAFTはARTよりも下位概念として扱われていて、日本の工芸が海を渡る際、CRAFTという呼び方をしたことで、芸術作品よりも低い扱いになってしまったそうです。先日の、和樂webラジオ「日本文化スナック」で知りました。

フランスに住んでいると、確かにARTをつくるArtiste(アーティスト)は色々優遇されているのを感じます。美術館の入館料や、場所によっては駐車場代なども、アーティストにはお得な価格設定があります。一等地の屋根裏部屋は、学生かアーティストが住めるという話は以前しましたが。

対してCRAFTをつくるArtisant(アルチザン=職人)は、尊敬されているけれど、ちょっと違う扱い。
フランスでは、どこの学部を卒業したか、卒業証書が示す専門分野がとても重視されています。パン屋さんも職人で、ちゃんとパン屋さんの卒業証書が必要です。アーティストと職人は、教育の段階から分けられているのです。

同僚のフランス人に、アーティストとアルチザンの関係性について聞いてみました。自らの考えを持って制作する人がアーティスト、アーティストの考えを具現化する人がアルチザンだそうです。
なので、CRAFTという手仕事の部分だけを全面に出した海外への広報活動は、やはりARTより低くみられてしまったのでしょう。もし、アートディレクションした人の名前でアートとして輸出されていたら、また違っていたかもしれません。

芸術工芸という概念がフランスにはあるのですが、自分の思想にそって、自らの手で工芸品を作る人達はアーティスト作家という扱いです。パリのグラン・パレでで定期的に開催されるアートの見本市「Revelation」は新発見や開眼という意味があり、副題に「Métiers d’art & Création」とあります。「芸術工芸と創作物」といったところでしょうか。日本語では工芸品見本市と訳されています。

数年前のこの展示会で、佐賀の伝統工芸の作家さんたちがフランス人のデザイナーとコラボした作品を発表をしていて、ブースは大盛況。見出し画像はその時の展示の様子です。グラン・パレの鉄格子の構造体と、佐賀の肥前名尾和紙の柔らかなレイヤーが生み出すコントラストが、非常に美しかったです。佐賀県って、パリで行われている見本市とか、展示会でよくブースを出展している印象があります。日本でみるより、強い存在感。

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ピースクラフツSAGAより

そのアートの見本市「Revelation」を主催しているAteliers d'Art de Franceの、コンセプトストア「Empreintes」が素敵です。パリ中心地にあり、パリ最古の市場、Marché des Enfants Rougeの向かいにあります。

フランスのアーティスト作家の支援を目的とし、工芸品を展示販売をしています。地方で細々と制作活動をしている作家さんの作品も、ここでは一堂にみることができます。フランスのエスプリが効いた個性的、かつ、お土産品として手が届くお値段の作品に出会えます。展示内容は定期的に変わるので、気に入ったものがあったら、出会いは一期一会。
ちなみに「Empreintes」は、指紋という意味。大量生産で、似たような製品が溢れる世の中、手の跡が残っているような独自のものが、フランスでも見直されてきています。

最近の工業製品、特にブランドイメージを押し上げてくれるような高級品は、なるべく工芸的要素を入れて、付加価値にしようとしている流れがあります。どこも似たような工法を使って、画一化してしまった製品に、独自性を出そうとしているのでしょう。
就職活動のとき、「最近のデザイン学科の学生はみんなイラストレーターやフォトショップを使って、キレイだけど個性が見えない作品集を作ってくるから、なるべく手書きのスケッチとかを入れて、手垢をみせた方が良い」といわれたことを思い出しました。

また和樂webラジオで出てきた、「工芸化した工業」という言葉、工業製品のデザインに携わるものとして、とても興味をそそられました。
型を使って量産される焼き物は、技術革新が起こった当時は工業製品とされていたけれど、今では工芸品の領域にいるというものです。
そういえば、京都の西陣織の生産元に見学に行ったとき、私がうっすら感じたことでした。工芸品なのに、機械織なのだという驚き。なんとなく手で織ってるイメージがありましたが。調べると、フランスのリヨンのジャカード技術が元になっているんですね。こういうものも「工芸化した工業」と呼ぶのかなー?と。

あと、高木編集長のインダストリアルデザインとプロダクトデザインの違いの解釈も、非常に納得。

インダストリアルデザイン:
産業構造の変化によってつくるものをかえるもの
プロダクトデザイン:
作るものは同じで物自体のデザインの熟成を進めるもの

私にとって、この辺りの定義は曖昧だったので、スッキリしました。
色々発見あり、考えさせられる和樂webラジオ、オススメです!

図解!3分でわかる!工芸って何だ?問題」が、とってもわかりやすくまとまっているので、より深く知りたい方は!

※追記:日本の伝統工芸に関しての記事も書いてみたので、ぜひ!


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ウエマツチヱ | フランス生活研究中
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