フリーランス新法 完全解説シリーズ【第1回】基礎知識と実務対応

こんにちは。本日から3回にわたり、2024年11月1日に施行されたフリーランス保護法について、実務に即した形で解説していきます。

なぜ今、この法律が必要なのか

フリーランスの方々との取引において、以下のような問題が多発しています。

  • 「急いでいるから」という理由での一方的な納期短縮

  • 「予算が足りない」との理由での報酬の一方的減額

  • 「みんなこの条件で働いている」という形での買いたたき

  • 深夜・休日の度重なる連絡や作業指示

このような問題に対応するため、フリーランスの方々の権利を守る法律が施行されました。

自社は対象?確認ポイント

対象となる発注者(特定業務委託事業者)

  • 従業員を雇用している個人事業主

  • 法人(従業員の有無を問わず)

対象となる受注者(特定受託事業者)

  • 従業員を使用していない個人事業主

  • 従業員を使用していない法人

取引期間による義務の違い

1ヶ月以上の業務委託の場合の義務

  • 契約条件の書面による明示

    • 業務内容

    • 成果物の内容

    • 報酬額・支払期日

    • 契約期間

禁止行為

  • 受領拒否の禁止

  • 報酬の減額禁止

  • 返品の禁止

  • 買いたたきの禁止

  • 購入・利用強制の禁止

  • 不当な経済上の利益提供要請の禁止

  • 不当な給付内容の変更・やり直しの禁止

6ヶ月以上の場合の追加義務

  • 育児・介護等と業務の両立への配慮

  • ハラスメント防止措置

  • 契約解除時の事前通知(原則1ヶ月前)

今すぐ対応すべき3つのこと

  1. 契約書の整備

    • 法定記載事項の確認

    • 既存の契約書の見直し

    • 新規契約用のフォーマット作成

    • 電子契約の場合の要件確認

  2. 支払管理の見直し

    • 60日以内支払いルールの確立

    • 支払管理表の作成

    • 請求書処理フローの整備

    • 支払遅延防止のアラート設定

  3. 禁止行為の社内周知

    • 管理職への説明会実施

    • チェックリストの作成

    • 相談窓口の設置

    • 記録保管ルールの策定

実務上の注意点

1. 契約書作成時の留意点

  • あいまいな表現を避ける

  • 業務範囲を明確に記載

  • 報酬額の算定方法を具体的に

  • 支払条件を明確に

2. 日常業務での留意点

  • 口頭指示を避け、メールで連絡

  • 業務指示は必ず記録を残す

  • 契約変更時は必ず書面化

  • 進捗管理は定期的に実施

法令違反のリスク

違反した場合、以下のようなリスクがあります:

  • 行政指導

  • 企業名の公表

  • 取引先からの信用低下

  • 是正勧告

  • 課徴金対象となる可能性(将来的に)

まとめ

11月1日以降の新規契約から適用開始となります。既存の契約も更新時には新法対応が必要です。次回は「実務担当者向けチェックリスト」として、具体的な対応手順をご紹介します。契約書サンプルも掲載予定ですので、お楽しみに。

下記、上本町社会保険労務士事務所のホームページでも
働き方改革「新章」:フリーランス保護法で実現する柔軟な人材活用戦略
について解説しています。

※本記事の内容は、2024年11月1日時点の情報に基づいています。

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