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道徳科における「発問構成」

 本シリーズでは、道徳科の授業において欠かせない「発問構成」のポイントについて、具体的に掘り下げていきます。どれほど優れたねらいを設定しても、発問を誤ると授業の流れが崩れ、学びが深まりません。そうならないために、まずは発問の基礎・基本を押さえ、効果的な問いのあり方を一緒に考えていきましょう。


「発問」の意図

なぜ、発問が必要なのでしょうか。
教えたいことがあるならば、子どもに直接指導する方が、はるかに効率的に思えます。
それにもかかわらず、あえて「発問」という一見遠回りな方法を用い、子ども自身に考えさせ、発言させるのはなぜでしょうか。
この問いについて、吉本(1986)は次のように述べています。

授業は、教科内容の本質を認識する過程の質的発展を作り出すプロセスでなくてはならない。
このプロセスは、子供が自ら驚きや喜びを持って探究し、発見するものでなければんらない。
そのきっかけを作り出すのが「発問」である。

吉本均(1986)授業を作る教授学キーワード 明治図書

つまり、教師が「教えること」と子どもが「学ぶこと」の間には、一見すると矛盾が生じます。
しかし、教師が「教えたい」内容を、子どもが主体的に「学びたい」と思えるものへと変え、発展させていくという、このズレをつなぐ役割を果たすのが「発問」なのです。


道徳の基本的な4種類の発問

いよいよ、道徳科の発問について考えていきましょう。
道徳科の授業では、教材資料を活用しながら道徳的価値の本質に迫ることが求められます。
登場人物の行動や心情を読み解くことで、普段は見過ごしがちな「当たり前」とされることに改めて目を向け、「なぜ、それが善いのか」を深く問い直すことが大切です。
そのためには、教材の特徴をしっかりと捉え、それに適した発問を意識することが重要です。
道徳科の教材は、大きく4つのパターンに分類できます。
それぞれの特性に応じた発問を行うことで、子供が自らの価値観を見つめ直し、よりよい生き方を学ぶことができるのです。
主に以下の4つのパターンに分類することができます。

1.行動の根底を問う発問
2.モノや言葉の背景にある意図を問う発問
3.失敗の原因を問う発問
4.人生の選択を問う発問

それぞれの発問について詳しく掘り下げていきます。どのように問いかけるかによって、子どもの思考の深まり方が大きく変わります。一つひとつの発問の特徴や効果を丁寧に見ていきましょう。

1.行動の根底を問う発問

多くの教材資料には、登場人物が成長し、変容していく姿が描かれています。
たとえば、最初は思うようにいかなかった主人公Aさんが、ある出来事をきっかけに気づきを得て、大きく成長するストーリーです。
このような教材を活用する際には、「なぜ主人公はその行動を選んだのか?」という根底にある理由を問いかけることが、教材の価値をより深く理解する鍵となります。
特に、主人公が成長や変容を遂げる「転機」に焦点を当てる発問は、授業のねらいを的確に捉える上で欠かせないものとなるでしょう。
つまり、中心発問で以下のような発問をすることが基本となります。

行動の根底を問う発問例

*この発問は、ほとんどの教材で活用することができます。


2.モノや言葉の背景にある意図を問う発問

教材の中には、贈り物や手紙、言葉などの背景に、深い思いや意図が込められていることがあります。
こうした教材を扱う際には、単なるモノや言葉として捉えるのではなく、「その背景にどのような思いが隠されているのか?」などを問いかけることが大切です。
送り手の願いや気持ちに寄り添いながら考えることで、道徳的価値への理解が一層深まります。
その過程を通じて、価値の本質に迫り、より豊かな学びへとつなげていくことができるのです。このような教材において、中心となる発問の例として、以下のような問いが考えられます。

モノや言葉の背景にある意図を問う発問

*主な教材:くりのみ、泣いた赤鬼、友の肖像画、最後の贈り物、銀のしょく台など


取り上げるテーマについての情報量が多くなってしまったため、今週はここまでとし、残りの2種類については次週に詳しくお伝えしたいと思います。続きを楽しみにしていてください。

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