道徳の時間の「考える」とは NO1
本シリーズでは、道徳科の授業で子どもが「考える」とはどう言うことなのかについて迫ってみたいと思います。
前号では、必ずしも子どもの身近な場面に置き換えて考えなくても、子どもの中間的モードを引き出すことができれば、子どもは自己を見つめたり、自分の生き方について考えを深めることができるということを述べました。
本号では、中間的モードを引き出す方略について述べてまいります。
*前号と合わせてお読みいただけると幸いです↓。
1 思考と結び付くための三つの方略
東京大学名誉教授である佐伯胖氏は、子どもが自分の文脈の中で意義が確かめられ、思考と結び付くためには、次の3種類の働きかけが必要であると述べています。
⑴ エピソード化
⑵ 多元的機能化
⑶ モデル化
以上です。
本シリーズでは、三つの方略について述べていきます。
2 エピソード化とは
まずは方略1として「エピソード化」に迫ってみたいと思います。
佐伯氏はエピソード化を以下のように述べています。
つまり、子どもが自然に状況や場面を自分の文脈と繋げながらイメージして「もし〜」や「自分なら〜」などの声を発しながら、「肉付け」してくことが重要であることを述べています。
この考え方は、前号で述べた司城氏の「中間的モード」の考え方とも合致するのではないでしょうか。
3 エピソードを引き出す
ではどうすれば、子どものエピソードを引き出し、思考に”肉付け”をすることができるのでしょうか。
そのためのポイントは・・・
「問い返し」です。
教師の主発問に対して、子どもの最初の発言は直感的であり、思考が働いていない状態です。
そこに、「なぜ、そう思うのか」「その理由は何か」と問い返すことで、子どものエピソードが引き出され”肉付け”がされていくのです。
例えば・・・
このように、子どもの直感的で感覚的な考えに対して、「なぜ○○と思うのか」「その理由は何か」などを丁寧に問い返していくことで、子どもの思考が働き始め、エピソード化につながるのです。
実は、このような簡単で当たり前と思われるようなことでさえ、道徳の授業では行われていないことが多々あります。
殆どの教師が、最初の子どもの発言「南部の人たちがよくないと思う」「奴隷解放を訴えている北部が正義だ」で満足してしまい、表面的な理解で授業を終えてしまっているのが現状です。
だからこそ、丁寧に「なぜ、そう思うのか」「その理由は」などを問い返し真意を引き出してこうとする意識が重要だと考えています。
次号では「多元的機能化」について迫っていきたいと思います。
*私のnoteでは、2週間に一度、「道徳科の授業づくり」について書いております。興味のある方はフォローして頂けると幸いです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?