探究者のための学校づくり前夜 #5
私は元々、子どもに関わる仕事をするなんて考えたこともなかったし、教育事業の立ち上げをやるにしても、子どもたちと直接関わるのはもっとそれに向いた人に任せようと思っていました。しかし実際にカリキュラムづくりを進めれば進めるほど、自分が知らないものについては考えることができないと痛感していたのです。
「本当にこのまま子どもに関わるような仕事を始めていいのだろうか?」と思い悩んでいたときに、Facebookに流れたラーンネットのナビゲータ募集の告知が目に留まります。
正直なところ、私はまだこの時点でも、なんとか頭の中だけで子どもたちを理解し、現場に立つことなしに教育に関われないかと考えていました。それだけ、私自身が子どもと関わることが想像できなかったのです。
ですので、ラーンネットのナビゲータ選考の2日間を「本場で"子どもを知る"チャンス!」と、視察程度のつもりで神戸を訪れます。はじめはお客さん気分で遠巻きに子どもたちを観察していましたが、なぜか雪合戦に参加し、それが思いの外楽しく、そのままのテンションで体験授業も行い、子どもという未知との遭遇にうまく言い表せない手応えを感じて帰路に着いたのでした。
東京に戻り、またカリキュラムづくりに戻ろうとしていると、炭谷から採用したいとの連絡が来ます。おそらくタイミングが良かったのと、これは何年か経ってラーンネットの同僚から聞いたことですが、「子どもたちと遊べる」ということも好意的に受け取られたようでした。
この時、立ち上げたばかりの事業を離れるのはさすがに筋が通らないと頭では考えながらも、半ば心の中ではラーンネット行きを決断していました。
それは、ラーンネットで過ごしたわずか2日間が予想外に楽しかったこと。そして、もし現場に立つとするならば、本場に身を置くのと、見様見真似で"それっぽいもの"をやるのとでは雲泥の差があると確信していたからです。そして、本場でダメなら問答無用で適性なしと諦めがつき、その方が私と関わることになる子どもたちにとって良いだろうと考えたのでした(逆ならば、それはそれで良い)。
ここから、ラーンネット・グローバルスクールでの5年に渡る子どもたちとの悲喜交交、ラーンネット・エッジ設立に伴う怒涛の日々へと続くのですが、それについてはまた別の機会に書きたいと思います。お付き合いいただきありがとうございました。(おしまい)