アーティストにパラレルキャリアが必要な5つの理由と2つの注意点
こんにちは。アーティスト専門家のガリバー宇田川です。
この記事では自己紹介を兼ねて、僕の信条をお伝えしておこうと思います。
自己紹介
僕は、メジャー経験のある現役シンガーで、日本アーティスト協会の代表理事をつとめています。
アーティストの社会的地位向上とキャリア形成の支援がミッションです。
ほかに、イベントプランナー、各種プロジェクトのプロデューサー、一般企業の採用を支援する採用コンサルタントもやっています。
アーティストを応援したり、支援したいと思ってくれている人は多いと思うのですが、そもそもアーティストという生き物がどんな生態なのかを知って頂かないと、せっかくの応援が無駄になってしまうこともあります。
自分の活動を振り返っても反省が多いんですよね。
なので、アーティストとアーティストを愛するすべての方に向けて、啓蒙活動をしています。
YouTubeでは、学校では教えてもらえないアーティストの世界の話をしています。
初となる著書(電子書籍)は、Amazon新書・ジャンル別ランキングで1位を獲得させていただきました。
僕自身の経歴は、ここ数年でようやく認知されてきたパラレルワーカーやフリーランスの歴が長いです。
初めてお仕事するクライアント様と打合せするときに使っている資料の最初のページがこれです。
今でこそ副業が認められていますが、当時、僕がこういった経歴で活動をしていることは、アーティスト仲間からも社会人の方からも快く思われていませんでした。
それでも、この事例を10年以上やってきて、現在の僕があります。
重要なのは、スキルアップ、資金繰り、ステップアップの循環を回す活動計画でした。
その中でオーディションは欠かせないもので、素人として出演したものや、ライブバトルなどいろいろありましたが、中でもテレビに出られるものを選んで、定期的に応募していました。
これは22~3歳の頃でデビュー前。
クラブで歌う日々から、肺気胸をやったことをきっかけに、昼の世界を目指し始めた頃ですね。
予選で中川晃教さんの曲を歌ったところ、m.c.A・Tさんとパッパラー河合さんにその場で追試を受け、なぜか「ガッツだぜ」をチョイスして合格。
数か月かけて、パッパラー河合さん作曲、作詞は共作の曲で最終プレゼンに臨んだものの、突破できず…の模様です。
ちなみに「ガリバー」というのは、この番組がきっかけの芸名で、東野さんが、
「顔が日本人離れしてるのにガチガチの漢字だな」
と仰ったのに対し、とアンタッチャブルのお二人が、
「じゃあ、宇田川→宇田リバー→ダリバー・・・ガリバーは?」
ってなってガリバー宇田川になったというアレですね。
で、もうひとつの動画は、メジャー契約が終わって、ソロになって初めて作った勝負曲で挑んだライブバトル最終戦。優勝させていただきました。
アマチュア→メジャーデビュー→フリーとして活動。
僕の音楽キャリアがそうやって進んでいく中、生計を支えていたのは常に「もう一つの仕事」でした。
逆に言うと、並行してもプロになることはできるし、社会人としてもちゃんとやっていけるということ。
そうやって10年以上パラレルキャリアで生きている身としては、この記事にもあるように、アーティストがパラレルキャリアで生き続けることがアーティストシーンの底上げにつながると確信しています。
では、なぜ僕がパラレルキャリアを推奨しているのか?
どんなキャリアが理想なのか?
「二足のわらじ?仕事ナメんなよ!」と、言われ続けてきましたが、僕は元気です。
ここから先は、アーティストにも一般の方にも参考になるんじゃないかと思い、芸事をパラレルキャリアでやっていく方法やメリットについて語ってみようと思います。
パラレルキャリアのアーティストは昔からいる
僕もリアルタイムでは知らなかったですし、若い方はご存じないかと思いますが、小椋佳とアイアン・メイデンのボーカリスト、ブルース。
この2人の共通点は、70〜80年代のカリスマアーティストでありながら、今で言うパラレルキャリアでも成功している点。
小椋佳は、1971年に歌手デビューした時も銀行マンで、銀行を辞めたのは1993年。
その間、布施明「シクラメンの香り」、美空ひばり「愛燦燦」などの名曲を生み出しました。
ブルースは、バンド活動と並行してパイロット、航空会社やビール会社の経営を手がけ、活動休止中もクリケットのイングランド代表選手、小説家、脚本家など、他の職業でも一流の実績を残しています。
たしかに、これほどまでの成果を誰もが出すことは難しいと思います。
でも、これを「才能」の一言で片付けるより、初めからパラレルキャリアを選択して、どちらも一流を目指す努力をする道があってもいいと思っています。
ちなみに、武井壮さんのこちらの記事でもいいことが書いてあります。
武井:芸能界とかスポーツだけじゃなくて、世の中には山ほど仕事があります。どんなサービスもどんな商品も全部仕事になるわけですから。日本は特に。人が必要としているものを事前に用意して提供できる人になってしまえば、それがすべてお仕事になるわけです。なのに、そういう原則をまったく学ばずにスポーツだけをやっているという現状は、僕はすごく嘆かわしいことだと思います。
(https://real-sports.jp/page/articles/260242431734186843より一部抜粋)
理由① アーティストのキャリアパス
自分の仕事の将来設計や指針のことを、キャリアパスなんて言いますよね。
25、30、35と年齢が進むにつれて、音楽の仕事が減ったり、役割が変わっていきます。
社会人なら出世、転職、特定の事業での独立などイメージがつきますよね。
ただ、アーティストには明確なキャリアパスが無いんです…。
良くも悪くも自由だし、肩書きなんかも自己申告制みたいなものだから、自分で作るしかない。
そこで、アーティストの場合はまずサービスの対象を考えます。
BtoCという言葉を聞いたことはありますか?
Business to Consumerの略で、サービス提供側(business)がお客さん(Consumer)を対象に行うビジネス形態のことです。
ファンに直接アーティストが届けるサービスをBtoCとします。
この場合、アーティストはお客さんから利益を直接得ます。
これはお馴染みの流れですよね。
一方で、BtoBtoCという考え方があります。
「アーティスト→クライアント→クライアントのお客さん」と考えることができ、アーティストにとって、クライアントは第1のお客さん、クライアントのお客さんはその先にいる第2のお客さん。
この利益はクライアントからもらうことになります。
スポンサーをイメージしてもらうと分かりやすいですね。
アーティスト→化粧品会社→化粧品ユーザー。
化粧品ユーザーはアーティストの直接のファンじゃなくて、あくまでも化粧品のファン。
だから、アーティストはまず化粧品会社の要望に応えるのがミッション。
結果的に、化粧品ユーザーの満足度が高くなれば、気に入ってもらえるかもしれない!万歳!なわけです。
つまり、BtoCの時期から、BtoBtoCの時期へ移り変わり、やがてまたBtoCになるかもしれない。
こういうサービスの対象を意識した活動設計が必要になるんですね。
ここまでは、プレイヤーとして進んでいける道です。
次に、役割を考えてみます。
ここは部活を思い出しましょう。
なにもいきなりスゴイ人だと証明する必要はなくて、先輩として後輩にしてあげられることはありますよね。
時には勉強も見てあげたりするじゃないですか。
36歳の僕が19歳のアーティストに伝えられることは沢山あります。
心はアーティストとしてライバルだけど、先輩が先輩としての役割を果たさなければ、アーティスト層全体が活性化しない。
すると、自分も「イケてない業界にいる人のうちの一人」になってしまう。
結局、層の課題を解決して、層の評価を上げることが自分の価値を上げることになります。
だから、恐れずに、講師やプロデュースなど、先輩として自分の役割を見つけたり、それを一般の人にサービスとして提供する形を作れば、その後のキャリアになっていくかもしれません。
理由② 当たり前のレベルが上がる
歯医者さんは歯を治すのが当然の仕事。
決して、
「歯を治す応援してください」
「めっちゃ治すの上手いんすよ」
なんて言わない。
これ、アーティストは結構やっちゃってる。
「唯一無二の世界観なんすよ!」
「抜群のスキルを持ってるんすよ!」
は差別化ではなくて、最低レベルの自己紹介。
「今日はじめて披露するので、間違えるかもしれませんが」
ってアーティストが言うのは、
「今日から始める治療なんで、どこかエグっちゃうかもしれませんが」
って歯医者さんが言ってるのと同じ。
「見た目で判断しないでほしい」も
「機械めっちゃ錆びてるけどウデは確かです」
と同じ。怖いですよね。
自分の本業はできて当たり前。
その当たり前のレベルも、日進月歩でドンドン上がってるから、鍛錬は欠かさずやりつつ、差別化ポイントを作らなきゃ生き残れない。
ネタ出しや企画作りに近いですね。
一般の企業では100本ノックとか全然普通で、100本出して1本当たる企画があればいい方。
僕も新規事業企画とか散々やったことがアーティスト活動でのブランディングに生きています。
企画出しのスピード・数・質は、企業での経験が無ければ身につかなかったですね。
僕は前にも書いたけど、クライアント(お客さんではなく主催者)に自分の提供する価値をしっかり説明します。
音楽は良くて当たり前だから、実際にどんなメリットや価値があるのかを理解してもらう努力はします。
本当に価値があると感じてもらえたら、予定外の報酬や別のお仕事をくれるもの。ノーギャラ万歳です。
まずアーティストは音楽はプロレベルで当たり前。
そのうえで付加価値や生き抜き方を考えるのが大事です。
理由③ 社会人としての肩書武装
アーティストは食えるようになるまで音楽以外の仕事も一生懸命頑張ります。
有名な会社の一員であることが社会的な評価が高いのなら、それを名乗る権利を持ちながら、音楽でもプロでい続ける道があってもいいと思います。
ただし、音楽以外の仕事も、それ一本でやってる人に負けてちゃダメなので、倍頑張るのが当たり前のつもりで活動していく覚悟も必要ですよね。
企業でしか学べないことも沢山あります。
企業が手がける事業は、お金のかかり方が違います。
それはつまり、お金をかけた分、売上を伸ばすための活動をしているということ。
社員はその規模なりの責任を負うし、自分の上司がもっと責任を負う姿を知っていますよね。
そういう一般的な感覚を身をもって知っておくことは、アーティストとして独立して生きていく糧になります。
理由④ セカンドキャリアに強くなる
最終的にほかの職業に転職するとなったときも、転職先の利益に直結する実績がない限り、プロのアーティストのキャリアは人物像の評価にしかならない。
僕の場合、パラレルキャリアでの転職の際、アーティストの経歴が生きたことは一度もありません。
生きたとしたら、このへんのスキルです。
・大規模なイベントを手がけた経験
・法人間の調整役となりキャスティングなどを手がけた経験
・仕事を獲得してきたブランディングと営業力
でも、ほとんどが「キミおもしろいね!」っていう印象程度のエッセンス。
つまり、アーティストとしてのスキルが評価されるのは業界内までで、ほかの業界で生きていくには、その道のスキル・経験・肩書が必要になります。
これを独自に身につけるのは大変だから、一般企業に属したり、委託を受けたりして、実績を蓄えます。
逆に言うと、そういうことをしっかりやることで、アーティストの実績をどう生かそうか考えてもらえるのだと思います。
理由⑤ 蓄積できるスキルが身につく
音楽で名を上げるにも、自分のスキルを上げたり、作品を作る労力やお金がめちゃくちゃかかります。
だけど、誰もあなたの生活を保証してくれない。
事務所やレーベルや養成所に所属すると、今までよりも活動が活発になることが多いです。
なぜなら、会社側もアーティストの活動の回転を上げて収益を増やす必要があるからです。
この時にアーティストが陥るのは、忙しいのにお金が無いという状況。
フェスに出演しているバンドだって、すぐに一本では食えない。
ちょっとテレビに出たりメジャーデビューしても、大金持ちになれるわけじゃありません。
しかも、トップレベルをキープしなければ数年で忘れられてしまう世界。
頑張りを評価されてお金をもらえる世界でもない。
だけど、引っ張りだこになるからスケジュールは空けなきゃいけない。
そうなった時に、都合のいい仕事はそうそう無い。
長く続けるための体力(収入やモチベーション)はどっちみち必須。
ならば、どうせ同じ時間をほかの仕事に費やすんだし、いざという時のために重宝される社会人スキルを得られる仕事をしたり、優遇される肩書を手に入れておくといいです。
なぜなら、そういう存在になっておくと、時間単価が上がるから、同じ収入を得るために割く時間も少なく済むということです。
僕の場合は、アパレル時代は社割が衣装代の節約になったし、次のブランドでやるときにはポジションを上げて給料も上げられました。
シフトを週5から週4に減らして音楽活動にあてられました。
でも、管理者になると休みが取れなくなったから、未経験ウェルカムの事務職へ転向。
するとパワポやエクセルの実務も身につき、平日の18時以降と土日は100%音楽にあてられるようになったし、有給も使えるから音楽活動もペースアップ。
結果的にパラレルキャリアの生き方をすることが、メンタル面だけでなく、音楽活動にも好影響でした。
注意① 夜の仕事とVIPルームには近づくな
賛否両論あるのは承知の上で書きます。
大前提で僕は性産業もその従事者もリスペクトしてます。あくまでもアーティストの社会的地位向上を目指す観点で語りますね。
夜の仕事にも、飲み屋から性的なサービスまでいろいろあると思うんですが、僕は基本的にアーティストにはそういった仕事はオススメしません。
理由は、「ニオイがつく」という言い方をしていますが、その世界にいることで得た人脈や地位は、その後の人生に何らかの影響が及ぶからです。
安心・安全をとるクライアント側は、組織や肩書きがしっかりしている人を選びます。
最近は闇営業問題もあり、コンプラにも厳しくなりつつあるので、代理店や興行会社も、フリーのアーティストの起用は警戒しています。
アーティストはどこまで行っても比べられ、比較検討されるものだという前提で、その理由も自覚しておくことが大事なんですね。
働いていた店の経営者やお客さんが、裏社会の人だったら?
確認や処理には人件費もかかる。
それほどフォローしなければいけないリスクを持つ人を、超大手はわからないけど、中堅の会社はまず起用しません。
同じ理由で、クラブや高級店のVIPルームにも、近寄らないのが吉です。
アーティストとしての仕事の控室とかならいいですけど、仕事でもないのに高価なVIPルームに通してもらうウラには、何らかの利害関係があります。
そういうところには、たまーーーに反社会勢力の方も、普通の行儀の良いお兄さんとしてよくいたりします。後からわかるやつですね。
「そういう場になったら逃げます」
「ヤバそうなのはわかるんで」
なんていうのは、まだガチな場面に遭遇していないラッキーな人の言うことで、実際は逃げられる雰囲気でもないし、自分の関係者が1人でもいたら、その人にも迷惑がかかるから、現実的には回避できないんですよね。
自分がプロとして仕事をしていく上で、リスクは少ない方がいいです。
ちなみに、ラグジュアリーな生活をしたいわけではなくても、アーティストとしてしっかり活動していれば、プライベートでそういう場所に行かなくても、仕事でそういう待遇をしていただけます。
VIPルームやスイートルームを控室や宿泊場所として用意してもらえることだってあるんです。
夢がありますよね。
注意② エセマネジメントは無視しろ
ここまで読んでくれてたら分かると思うんだけど、ちゃんとハードワークしていれば、自分や周りの人とで、ほとんどの活動ができます。
ただし、内輪ノリは危険。
ちょっと業界をかじった程度の人、とくに10年以上前の業界のことしか知らない人の言うことなんかに乗っかっても意味がない。
今を生きるアーティストに必要なのは、今とこれからの最新のノウハウです。
なので、手っ取り早いのは、はじめは異業種の人ととにかく出会えるように、交流会とかセミナーとかに参加するのがいいです。
2,000円とかで毎日のようにあちこちで開催されてるんで、社会科見学的なノリで行ってみるのもいいと思います。
実は、僕はそういう場への参加も、人脈作りとかコネとか人付き合いとかも、めちゃくちゃ苦手なんです。もともとビジネス書も苦手。
だけど、同年代のアーティストの中では、どっちも貪欲に取り入れてきた方だと思っています。
なぜなら、交流会やセミナーや本は、そういう自分を強制的に動かしてくれるから。
結局、数をこなしていけば本質が見えるようになります。
その道の人からしたら当たり前のことでも、自分が知らなかったら神みたいに感じちゃうかもしれない。
それで騙されるのも嫌だし、確信が無いことに情熱を注ぎ続けるほど余裕もない。
なので、とにかく苦手なものを摂取しまくりました。
さらに、知ったものをすぐ血肉にするためのトレーニングとして、本やセミナーなどで吸収したものを、自己紹介や話のネタにしてドンドン話すようにしました。
SNSはその場にうってつけですし、色んな人と会う機会を作って、仕事の話をするようにしました。
これもアーティストとしての活動のための仕事だと捉えていました。
ちなみに、僕はアパレル時代から素材や製法なんかに詳しい方だったんですが、それは、自分の無知のせいで、無意識にお客さんに嘘を伝えちゃうのが怖かったからなんですね。
なので、今でも、自分が経験したことが無かったり、確証がないことは気を付けて発信するようにはしています。
今はネットで調べれば何でも情報が出てくるし、足と頭と時間を使ってちゃんと調べて、行動すれば、ある程度の結果はついてきます。
僕はずっと無所属ですが、この10年以上、ちゃんとハードワークして実績を積んできた自負があります。
自分のことを全部やれとは言わないけど、中途半端な人に引っかかるような甘えや、心の隙には気をつけて。
さいごに
思わず長文になってしまった。
しかしこうしてみると、パラレルキャリアって頑張らなきゃいけないことが多い生き方だと思います。
でも、好きなことをやって生きる人生って、物件探しみたいなもので、何かを優先するために何かを譲歩したとしても、苦じゃないと思うんですよね。
また次の物件を探して、より良い生活にしていけばいいし。
そういう生き方を無責任に推奨はできないので、わかる範囲でのアドバイスと、実際のサポートもしています。
SNSやレッスンでお会いしましょう!
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