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Field Notes 「ジャカルタDiary」#07 -UCIフィールドワーク~プリブミと華僑の家庭訪問調査~-
この記事は2018年に書かれたものです。ウェブサイトのリニューアルに伴い、noteに再掲載しています。
Day5_Feb.25_2018_Part.2
午後は華僑が多く住む北ジャカルタのコタ地区へ。午前のRさんの住んでいたあたりとは違い、高い壁が印象的。
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若干閉鎖的にも感じるのは、華僑のたどった歴史的背景から来るものかもしれない。
Hさんの家は、大きな玄関を持つ3階建ての一軒家。
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1階にお手伝いさん用の部屋があり、2階にはキッチンとリビングスペース。インタビューはこのキッチンが見えるリビングスペースで。プリブミのRさんの控えめな様子とは反対に、Hさんはとてもざっくばらんな印象。
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たくさんのホームメイドお菓子、本当においしかった!
家族写真が沢山飾られていたので「ステキ!」と言うと、日本旅行をした際のアルバムを引っ張り出して見せてくれた。リビングの上や、テレビの近くには大きな容器に入った大量のクッキー!驚くことに全てホームメイドだそう。感心していると「You can try!」といって次から次へとおやつを出してくれる。嬉しい反面、インタビューはなかなか始まらない…。Uさんにさりげなく促してもらいインタビュー開始。
Hさんは23歳と17歳の娘さん、51才のご主人、2人のメイドさんと暮らしているとのこと。メイドさんはお掃除専門で料理は自分で作るようだ。
Hさんのインタビューで興味深かったのは、とにかくホームメイドが多いこと!冷蔵庫には小分けにした作り置き食材が大量に保管されている。
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人を招いた時などにお土産で渡したりもするようだ。「自分で作った方がおいしいし、衛生的!」というHさん。キッチンの引き出しを拝見すると大量のゼリーのカップ。これを使いきるとなると相当の量だ。さすが「ホームメイド好き!」と豪語するだけある。
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全部使ったらすごい量になりそう
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一方で気になったのが、いわゆる生鮮食品が冷蔵庫に見当たらなかったこと(フルーツを除く)。全て保存容器に入れたり、小袋に入れたりした状態で保管されている。食材は買って帰ってきてすぐに調理をするのだろうか?それにしても、この大量の作り置き、どのくらいの周期で消費するのか?保存したことすら忘れてしまうのではないか??
Rさん同様ダイエットをしているというHさん。食事写真を見せてもらうとご飯(お米)は見当たらない。どうやらRさん同様「カルボ」を気にしているようだ。
一方で、寝起きにエッグタルト(!)を食べていたり。ダイエットのためにしているのは「油は少しにする。ブラウンライス」というが、アンチダイエットでは「ご飯、外で食べるアイスやクッキー」とのこと。ホームメイドのお菓子はどうやらアンチダイエットには含まれないらしい。
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そんなホームメイド好きのHさんのキッチンはかなり広々と大きい。
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とはいえ、所謂ビルトイン型のコンロではなかったり、調理家電や調味料は思いのほか少なかったりと日本の料理好きの方のキッチンとは異なる印象を受けた。
また、Hさんは海外に沢山の親戚がいるからか、様々なサプリメントが大量に引き出しに保管されている(海外から送ってもらうそうだ)。ざっと聞いただけでも、ビタミン、グルコサミン、カルシウム、オメガ…etc。どんどん名前が挙がる。旦那さんの咳のためにツバメの巣(1kg17万円!)もストックされていた。一方で、JAMUも風邪やコレステロールのために取り入れていたり。メディカルなものと、トラディショナルなものの使い分けも気になるところ。
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種類も量も多い!
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Hさんはダイエット仕様のものを飲むとのこと
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ダイエットしてるって言ってたのに…
とにかく、何でも大量がHさんの印象。あらゆるもののストックが大量にあった。
専業主婦のHさんだが、日中は宗教活動や趣味のお菓子作りで忙しい。買い物に関しては近場のパサールやスーパーを利用。パサールはチキンや野菜などを買いに毎日、スーパーマーケットはその他の肉で週に2回程度買い出しに行くそうだ。スーパーの印象はキレイ。パサールのチキンはその場でさばいていたりするのでフレッシュなのかもしれない。
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買い物に関して面白かったのは、清潔さを大事にしている点。日本人でいうオーガニック信仰ではないが、「ヨーロッパや日本のものはOKだが、中国・パキスタン・インドネシア産などアジア産のものは“汚い”から気をつける」とのこと。キレイに洗わないといけないという印象があるようだ。
二人の家庭訪問調査を行った結果の詳細は調査結果ページに譲るとして、ダイエットをしていると言いつつお米を抜く程度でおやつを食べるし、運動はしない。食で健康を目指そうという意識があまり感じられない(献立という概念がない?)、といった点が大きく日本とは違うと感じた。
Wrap up
家庭訪問を終えてホテルに戻り、本日のラップアップ。
Uさんとの事前打合せ、Rさん・Hさんの家庭訪問調査で感じたことや分かったことをポストイットに書き出す。
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その後、「手法」「訪問先の設定」「人の設定」などの分析軸に対しそれぞれが感じたことを書き出し、共有・ディスカッションを行った。
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今回海外での家庭訪問調査で感じたことは以下のような点。
一つ目はインドネシアの国民性なのか分からないが、「直前でのキャンセル」「事前課題がきちんとできていない」ということに悩まされた。
日本人は律義なのか、間に入っていただくリクルーティング会社が優秀なのか、直前キャンセルはほとんどないし、事前課題もしっかりあげてくれる。でも、もしかしたら日本の方がイレギュラーなのかもしれない。
海外で調査を行う際は、日本の常識・日本人基準で考えない方が良さそうだ。
二つ目は対象者の設定の仕方。
自主調査だったこともあり、どのような人に話を聞くか、明確に「こういう人が良い!」という像が作りにくかった。今回は、あくまでトライアルだったため、ざっくりインドネシアの人を見てみたいということで良かったが、クライアントありきの場合はそうはいかない。日本での調査の場合は、予め商品の想定ターゲットがあったり、事前のWeb調査でどのようなセグメントがふさわしいかあたりがつけられたりする。また、同じ日本人なので事前に情報収集することも容易だ。しかしながら、インドネシアに関しては現地に小桑さんがいたものの、今回は(敢えてだが)ほぼ白紙状態での訪問。参照するものがないため、対象者の方の発言や行動、環境の“何が一般的で何がその人固有の特徴なのか”の見極めが難しかった。また、対象者人数に関しても、その国の“前提”が未知の場合、分析には何人ぐらいが望ましいか考える必要がありそうだ。
三つ目は通訳のUさんによる事前インプット。
インタビュー前にいろいろお話を伺えたことは参考にはなったものの、Uさん個人の価値観というバイアスも当然入るので、複数の人からお話を伺い、あくまで一意見として参考にするレベルにとどめる必要があるとも感じた。
また、今回は純粋な通訳をお願いしたのだが、細かい日本語のニュアンスが伝わらなかったり、意訳されてしまったりということが発生して、コミュニケーションがスムーズとはいいがたかった。これに関しては、リサーチャー兼通訳といった役割を担える人をオーダーするなどの対応が望ましいと思った。
四つ目はインタビューの設計。
通常UCIでインタビュー調査を行うときは「スクリプト」と呼ばれるインタビューの台本のようなものを用意する。そこには、大まかな質問項目、それにかける時間の目安などが記入してあり、限られた時間内で聞き漏れがないように工夫をしている。通訳を介した際の目安時間はどれくらい見ればよいのか、それによって聞ける質問項目の数も変わってくるのでもう少し見極められるようになる必要がありそうだ。また日本人相手だと、「すぐ答えられる分かりやすい問い」から徐々に「抽象度の高い問い(価値観など)」に進むようにスクリプトを組み立てたり、キッチンなどを見せてもらうのは(そもそも抵抗があるだろうから)、ある程度関係性が深まった後半に持ってきたり、相手にストレスを与えず、関係性を築くことを念頭において設計する。しかし、そもそもその国の価値観やスタンダードが想定できない海外調査では、「問いが伝わらない=コミュニケーション自体が成立しない」ということになりかねない。その場で臨機応変に質問を変える、具体的に何かアクションするシーンを見せてもらい質問を重ねる、など設計の仕方を検討する必要がありそうだ。
最後に、今回痛感したのは、何をインタビューすべきかを知るための事前調査が重要であるということ。それがないと、見当違いの質問を重ねることになりかねない(今回の場合は、食と健康の繋がりという大テーマがあったが、日本と違いそもそも食と健康の結びつきにピンときていないようだった)。
さらに、一度のインタビュー調査では分かりきれないこと(新たに生まれる疑問)が多いため、継続的に調査を続けることも必要だ(その場では見えてこない、分析してから見えてくる疑問点が今回も多かった!)。
比嘉さんのフィールドワークとの違いも沢山発見できた。
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一つは関係性の築き方だ。
あらかじめリクルーティングした対象者に対し行うインタビュー調査では、限られた時間内で必要なことをお聴きすることが求められる。よって、短時間で関係性を開くが、一方で余計なバイアスがかからないようにこちらの自己開示は最低限にとどめたりする(下手に共感しすぎて自己開示すると、対立関係になりかねない。ex.同じ野球ファンでも対立するチームのファンだった!などなど)。初対面且つ、その場限りの関係だからこそざっくばらんに聴き出せるホンネも多い。だからこそ、仲良しにはなりすぎないように気をつける。一方で、比嘉さんは「待ち」の姿勢で、無理に相手の回路をこじ開けない。相手が話したそうなら話すし、そうでなければ無理に踏み込まない。関係性の作り方も、相手にゆだねてしまうのだ。
二つ目は質問設計の部分。
先に書いたがこちらの意図が伝わってしまうと、回答にゆがみが生じる(おべっかを言ってくれたりする)ため、質問の順番も事前にきちんと設計する。しかし、あくまでその質問はこちらの設定した範囲を超えるものではない。前日のラップアップで比嘉さんは「こちらの枠を差し出すのではなく相手にターンをゆだねる」とおっしゃっていた。確かにこちらの想定の範囲外のことを知ろう、相手の語りたいことを語ってもらおうとしたらベストな方法だ。しかしながら、インタビュー調査という限られた時間という制約でどこまでこれが実現できるか…。簡単には答えは見つからなさそうだ。
三つ目は、時間の尺度が違うということ。
ある程度の長期スパンで考えるフィールドワークだと、一度に全てを分かりきろうとしない。疑問は疑問のまま残し、別の機会に明らかになっていけばよいというスタンスだ。これは、クライアントのオーダーありきの我々としてはなかなか難しい。答えが出なかった、分からなかったとは言えないからだ。とはいえ、本当に現地の人を理解していくという点では、比嘉さんのやり方はとてもまっとうなアプローチだと思う。
そもそも「インタビュー」の概念がない国で現地を知ろうと試みた比嘉さん。人との関係性の詰め方、理解していくプロセスの違いに面白さを感じた。それと同時にいかに普段、あらゆるものを貪欲に知ろう・理解しようとしていたか、日本のマーケティング調査の型にはまっていたかも痛感させられた。
その後は、引き続きラップアップ兼夕食会。今回はこれまで移動の足として沢山見てきたゴジェック(バイクタクシーの会社)にサンドウィッチをオーダー。
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これは、サンドイッチ屋さんの宅配サービスではなく、テイクアウトがあるお店にゴジェックの人が行き、代わりに買ってきてくれるというもの。手間賃も数十円(!)のようで、本当に便利。スマホでオーダー後、「オーダー商品が売り切れてた!」とゴジェックの人から電話がかかってきたり。知り合いにお使いを頼んでいる感覚で面白い。
無事サンドウィッチが届き、夕飯を食べながら3日間の振り返り。サンドウィッチはお世辞にもあまりおいしいとは言えなかったが、初日に買ったスナックは絶品だった。
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私はお酒は飲めないけれど、炭酸飲料ですっかり心地よくなった。
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一方で、何やら親指の付け根部分が腫れていて、動かすだけで激痛が走る(どうやら胃腸のツボらしい)。連日のインドネシア料理&ハードなスケジュールで身体が悲鳴をあげているらしい。翌日はホテルのマッサージを予約できたので、リフレッシュできることを楽しみに、就寝。
大石瑶子
代表補佐/共感リサーチャー(UCI Lab.合同会社)
チーム内では「共感する人」として主に定性調査やワークショップを担当
■全米・日本NLP協会認定マスタープラクティショナー、LABプロファイルプラクティショナー、ワークショップデザイナー、リフレクションカードファシリテーター