【全11作品】ー今期はこれが面白かった!ー2020年春アニメ決算
2020年7月2日。家から出る機会がめっきり減り、あっという間に6月の末日。2020年も半分が過ぎました。
2020年4月クールのアニメも、6/30の『かぐやさまは告らせたい?』最終回配信を終え、今季アニメはすべて見終わりましたので、私が今期最終回まで見たアニメ全11作品をご紹介させていただきたいと思います!
詳細なレビューをしたい、おすすめしたい作品もあるのですが、本記事ではまずは、私が今期最終回まで見た自信をもって楽しめたといえる素晴らしい作品たちを、簡単なレビューとともに振り返っていきます。ちなみに、作品順は50音順なので、特にランキングというわけではありません。
『アルテ』
16世紀のフィレンツェを舞台に、当時はまだ珍しい女流画家を目指して、貴族の家から飛び出し下町の徒弟職人として修業を志す少女アルテを主人公にしたお仕事アニメ。
アルテの底抜けの快活さと、一生懸命さ、そして16世紀イタリアでの女性差別をどう乗り越えていくか、朝ドラ的な面白さのある作品。テーマが少し堅めなことと、FOD独占ということもあってか、知名度はイマイチな気がするが、視聴されている方の評価は堅調という印象。
最初は、かなり新社会人向けな社会人としての心得的な部分が、描かれていて就活生にお勧めできるアニメだなという印象だったが、後半のヴェネツィア編では、ひとまず仕事が一通りできるようになったうえで、「女」であり「貴族」である「自分」のできること、そしてやりたいこと、その先にある進むべき道はなんだろうというアイデンティティの問題に発展する。
16世紀フィレンツェの画家職人という一見現代とはかなり離れたテーマに見える本作だが、逆に『SHIROBAKO』などの業界モノにありがちな「業界あるある」が抑えめなだけに、多くの社会人に共通する「働くってなんだろう?」という本質的な問いに答えられているように感じる。特に就活生や社会人などにお勧めしたいアニメだった。
『イエスタデイをうたって』
リアルドラマよりの芝居が効いたハイコンテクストな作品。
大学卒業後プーをやってる主人公の魚住陸生が、大学時代片思いをしていた森目榀子と最接近する。また、彼のバイト先であるコンビニによく来るカラスを連れた謎の少女中野晴に迫られる。さらに、榀子の幼馴染の弟である早川浪は榀子に思いを寄せていて...というように、いくつかの恋愛が折り重なってドラマが生まれる。
実は、後述する『攻殻機動隊 SAC_2045』でキャラクターデザインをやられるなど現在注目中の人気ロシア人イラストレーター イリヤ・クブシノブさんが原画として参加している。
会話ベースで進んでいくのかと思いきや、「他人を家に入れる」という意味や、「一歩下がる」など言葉以外の部分に現れる感情の機微や関係性の発展が幾度も出てきて、なかなかハイコンテクストでおしゃれな演出をする作品。
「愛とはなんぞや?」がテーマらしいが、恋愛をしたことがない私には、理解に窮する場面がいくつかあり、特に最終回に関しては正直まったく意味が分からなかった。恋愛上級者向け作品。
『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』
なろう原作から非常に話題のいわゆる「悪役令嬢モノ」
乙女ゲームに全く触れたことがないため、見るまではちゃんと楽しめるのか不安だったが、いざ見始めてみるとそんな不安はいさ知らず、内田真礼節全開でゲラゲラ笑って楽しめるコメディー作品。
バカとはさみはなんとやらというが、カタリナのおバカ加減と脳筋思考で悪役令嬢のはずがどんどん周りのキャラを落としていって...
今期ナンバー1難聴系主人公の座は満場一致でカタリナクラエスのものだろう。
幼少期パートが盛大なフリとして機能して、学園パートでオチをつけるという構図だったために、ゲームのシナリオ編が終わり独自ルートへと突き進んだカタリナ一行が第二期でどんなストーリーを展開していくのか気になる。
途中、ギャグ一辺倒で少しワンパターンすぎるかなと思ったときもあったが、後半9話以降は周りから見たカタリナのありがたさのようなものが描かれ感動ものだった。特に第11話には、感極まってぼろぼろと涙を流した。
第11話に関しては語りたいことがやまほどあるが、かなり重要なネタバレも含まれることと、紙幅の都合上ここでは割愛し、改めて記事にしたい。
『かぐや様は告らせたい?』
さっそく2020年最優秀賞が出たのではないだろうか。
20年代アニメの至極ここにあり。
第1話からフルスロットルで突っ走り、そのまま最終回まで突き抜けた。
純粋なクオリティの高さでタコ殴りにされた気分だ。一期OPから続投された鈴木雅之による主題歌『DADDY DADDY DO!』は、楽曲単体で見ても今期最高峰だし、何よりOP映像が最強。見ているだけで目頭が熱くなるようなクオリティだ。
1話あたり3話から4話程度のミニストーリーが入っている形で、ところどころ前後が繋がっているものもあるが、基本5分程度の身近い尺で起承転結が繰り出される構成となっており、テンポがかなり速い。若年層に支持される作品らしい構成となっている。
短尺のはずなのに、笑わせるところは笑わせてきて、ドキドキさせるところはきちんとドキドキさせてきて、泣かせるところは泣かせてくる。すべてを通してクオリティが高く、一期に比べスタッフ陣もかなり興が乗っているのか、パロディも入れてくるし、演出も画面構成も声優も全力で遊びにかかってくる。
まだ見ていない人は、ぜひとりあえずOP映像を見てほしい。
これでビビッと来たならば、一期も見たうえで今作を見てほしい。絶対に後悔はしないことをここに保証する。
ちなみに、どうして本作はシャフトっぽい演出をかなり意図的に組み込んでるんだろうか。化物語パロも話題になったが、それ以外でもかなり”シャフトっぽい”と感じる部分がある。製作が物語シリーズなどでも有名なANIPLEXだからだろうか。詳しい人がいればぜひ教えてほしい。
『攻殻機動隊SAC_2045』
NETFLIXで観たのが、もう数か月前になるのだが、3日間くらいに分けて観た。面白いと同時に、これが100%の絵空事と思えないことが怖い。そういった印象を受けた。
本作はいわずと知れた、世界中で熱狂的に支持される『攻殻機動隊』シリーズの新作だ。正直、名前だけは知っているが実際に見たことや読んだことはないという人も多いのではないだろうか。
私自身、実は押井守監督の劇場版『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』と、ハリウッド実写版『Ghost in the Shell』の2作品しか視聴したことがなく、SACシリーズはこれが初めてだった。
もちろん過去作品を知っていた方が楽しめる部分は多いのだろう。しかし、だからといって知らなければ楽しめない作品化といえばそうではない。私は、本作が初めて見る『攻殻機動隊』シリーズだとしても十分楽しめる内容だったと思う。
SF描写としての2045年の描き方、世界観設定が妙にリアルで、サスティナブルウォーなんていうのもあり得ない話ではなさそうだし、日本の首相がアメリカ系日本人だというのもあながち無理筋ではない。特に怖かったのが、貧民街の売店のおばちゃんが常にハエを払うような仕草をしていたのが、後に電脳(AR・MRのようなもの)を格安で購入したため、Ad版で広告を払っていたという描写だ。実際にARが商用化され一般に流通するようになれば、富裕層がその技術で豊かな暮らしを享受するとともに、貧困層は人権すらままならないような時代が来るのだろうか。
このような描写は、映画『TIME』などでも上手く描かれており、私個人非常に好きな作品のためおすすめする。
『イエスタデイをうたって』でも少し触れたが、本作のキャラクターデザインを行っているのは新進気鋭のロシア人イラストレーターであるイリヤ・クブシノブさんだ。彼は、『バースデー・ワンダー・ランド』などでもキャラデザを担当している。
『邪神ちゃんドロップ’』
「クラウドファンディング3000万円。千歳市ふるさと納税1.8億円。あの話題作が帰ってきた。」
2019年1月20日、イベント「すごいサバト2019」にてBD/DVD第1巻と第2巻の売り上げ枚数2000枚を突破し、2期の制作が決定された『邪神ちゃんドロップキック』。2期では1期のハチャメチャ加減がより一層パワーアップして帰ってきた。
ちこちゃんパロディなどだいぶ攻めたパロディから、邪神ちゃんのクズエピソードは数知れず。新キャラもいろいろ出てきて、こちらもゲラゲラ笑って見える振り切れたコメディー。泣けるシーンなどは全くないが、大笑いして涙が出るシーンならあるかもしれない。
最終回(第11話)なんて、まさかの新規作画0で全シーンバンク声のみ撮り下ろしという前代未聞の総集編(?)。もはや、前衛的なアートアニメーションの域に達しているのではないかという振り切れぶりだった。
作品が振り切れてれば、そのファンも振り切れてる。本作を特徴づけるのは、本作を熱狂的に支持するファンたち邪教徒たちである。「すごいサバト2019」にて、2期決定と同時に開始された公式ファンクラブ「邪教都倶楽部」は現在なんと総数1000人以上?!
かくいう私も、先日の「666オンラインサバト」を機にいよいよ我慢ができなくなって「邪教徒倶楽部」に入会し晴れて邪教徒の仲間入りを果たしたわけだが、グループチャットはまだまだ盛り上がっており、宣伝Pの柳瀬さんも頻繁に登場し、場を盛り上げている。
たくさんの人に愛されている作品であり、今後も愛され続ける限りはアニメも3期、4期、5期と続いていってほしいと思う。
『新サクラ大戦 The Animation』
「太正桜に浪漫の嵐」でおなじみの本作。
もともとは、1996年にセガサターン用ソフトとしてSEGAより販売されたドラマチックアドベンチャーゲーム。その後、アニメ、ドラマCD、小説、舞台、ライブなど様々なメディアミックス展開をし、話題を博した。
アニメは元々OVAから始まり、2000年には初のテレビシリーズを迎え、その後約20年の時を経て新作ゲーム『新サクラ大戦』と、アニメ『新サクラ大戦 The Animation』が作られることとなった。
と、ざっくりとした作品の経緯を書いてはみたが、実は私自身『サクラ大戦』シリーズは、ゲキテイを聞いたことがある程度でほぼ無知だった。
とりあえず、Ponycanyon公式Youtubeより公開されている『5分でわかる!サクラ大戦の世界!』で予習をしてから見始めたが、最初はよくわからないところもあるものの、問題なく楽しめた。
確かに、細かい人間関係や設定の部分では前作までを観てないとつかめない部分もあるように思う。しかし、本作のセントラルクエスチョンは「クラーラを新生莫斯科華撃団から守ること」セントラルミステリーは「クラーラとカミンスキーをめぐる謎」テーマは「家族愛」と、かなりわかりやすいストーリーになっている。そのため、ストーリーの本筋を理解するうえで、事前知識が必要かというとそういうわけではない。
主題歌の『<新章>檄!帝国歌劇団』はゲキテイをアップデートした素晴らしい楽曲、主人公天宮さくらのCVを担当する佐倉綾音の演技は安定しているし、ストーリーは王道中の王道を丁寧に描いている。そこに、太正時代・帝都のレトロスチームパンクなカッコいい世界観。決まり文句は「太正桜に浪漫の嵐」。これで面白くないわけがない。私も、『サクラ大戦』シリーズ初視聴作品が本作『新サクラ大戦The Animation』だが、ぜひ皆さんもテイゲキの活躍を見てみてはいかがだろうか。
『波よ聞いてくれ』
「鼓田ミナレの波よ聞いてくれっへーーい!!」
冒頭、クマと格闘するラジオMC鼓田ミナレの理解できないシーンからスタートする本作。北海道札幌市藻岩山のラジオ局MRSを舞台に、ラジオを題材とした異色のアニメ『波よ聞いてくれ』
鼓田ミナレの独特の言い回しに聞いていてなんだかおもしろくなるような感覚を抱いていたが、冒頭3話くらいは「ん?これはどう楽しむアニメだ?」と若干戸惑ったが、それもそのはず。ラジオ番組を30分ずっと流すなら、それはラジオ番組をやればいい話で、この題材をどうやってアニメに調理するのかというのは非常に難しい問題のように思う。
そこで、3話くらいまでで「ほう。なるほど。この作品は、鼓田ミナレのトーク自体をエピソードトーク的に楽しもうって見方もできるな。」と気付き、その後もミナレのドタバタ劇や若干オカルトに振った訳の分からない話を勢いで楽しみつつ、これは評価の難しいアニメだなと感じていた。
その後も割と、なんだかんだでミナレのトークやエピソードを楽しみつつ、なんとなーく漫然と最終回まで見てきた。最終回も意外といつも通りに平常運転をしていて、「果たしてこれはどこに着地するのだろう?というか着地するものでもないのか?」などと考えていたら、終盤のアレである。
かなり話題になったので、見逃した人も内容は知ってしまったかもしれないが、一応伏せておきたい。とにかくあの終盤のシーンを見て、このアニメの評価が一気に上がった。「なるほど。ここに落としてくるのか。」と。
そして、まだそんなに日が立ってないのにあの出来事を真正面から描けたのは「アニメだから」だ。「なぜラジオだったのか」という問いにもあの最終回は見事に答えている。最終回で、突然息をのむシーンをぶっこまれて、一気に画面に引き付けられた。あの体感をしてほしいため、ここではあえてネタバレを避けるため抽象的な表現になってしまったが、最終回素晴らしかった。
『八男って、それはないでしょう!』
ザ・なろう系アニメ。
でもやっぱり、こういったテンプレアニメも憎めない。そう、何を隠そう私は『いせスマ』も『異世界チート魔術師』も『超余裕』も好き好んでみるほどにはなろう系が好きなのだ。
お約束の設定にお約束のストーリー、あり得ない設定に突っ込みを入れながら、なんだかんだ楽しみながら最終回まで見てしまう。一番気を抜いて観れるかつ「これが面白いのなんか悔しいw」と思わせてくれる。そんなアニメだ。
ちなみに、私が本作で一番突っ込みたいポイントは、文字と印刷技術の位置づけだ。なぜかこの異世界、使われている文字がカタカナっぽい。それは百歩譲るとして、この世界の印刷技術はどの程度の水準なのかがよく分からない。一応、王都では絵文字による看板が使われていることや、主人公ベルの父親が文字が読めない(のになぜか大量の本を持っている)ことから、識字率はそこまで高くないことがうかがえる。また、たぶん時代設定的に印刷技術もないのではないだろうか。そのくせして、なぜか旅行雑誌的なものが登場したりと、イマイチよく分からない。貴族が旅行雑誌読むのかね。そもそも旅行文化あるのか。
とまあ、それはそうとして、キャラは可愛い。ルイーゼが一番かわいいなと思ってたのだが、途中ベルの正妻として結婚をしたエリーゼが非常に可愛い。見た目もそうなのだが、口下手で寡黙だけど確かにベルを慕っているという王道ながら、意外と少ない正妻ポジションを取っており、あまりベル本人には好き好きアピールをしていないのに、実は大好きみたいなところに萌えを感じる。
典型的ななろう系なのかなと思いきや、終盤にかけて若干メタ的な成長があるというか、ベルが自分が異世界転生したのを受け入れたと思ってたのに、まだ地に足がついていないということを自覚し、最後は異世界の”貴族”としての自分のアイデンティティを受け入れるというちょっと内省的なシーンが入る。個人的にここはポイントが高く、ただのなろう系じゃないぞと期待させてくれる展開だった。
ちなみに、『三ツ星カラーズ』で宣伝PをやられてたフロンティアワークスのMさんが本作でも宣伝Pを担当している。企画原作がフロンティアワークスらしく、かなり大きくクレジットされていた。
『BNA』
TRIGGER節炸裂。かなり話題となったオリジナルアニメーションだ。
見ていない人は少ないかもしれない。
個人的に、最初はテレビ放送と同じタイミングで1話1話追っていこうと思っていたのだが、ちょうどTLにあの「野球回」の切り抜きがながれてきて、「これはいち早く見なければ!」と見始めたら、気付いたら最終回まで一気見していた。
映像的な面白さもさることながら、タイトル「BNA」の意味、「獣人」とはどういった存在なのか、「アニマシティ」とは何なのか。謎が謎を呼び、ぐいぐいと次の話、次の話へと引っ張られていく非常にエンターテイメント性の高い作品になっている。
テーマとしては「異文化理解」や日本ではあまり触れられない「移民」「外国人差別」などのモチーフが用いられており、かなり社会派な作品なのだが、かといって”硬派”というイメージは全くなく、社会派のアニメをここまでのエンターテイメントの昇華できるのは、やはりさすがTRIGGER、さすが吉成曜監督、さすが中島かずき脚本だ。
途中、主人公みちるの勝手に思い込んで怒って暴れまわるという行動パターンに少しイラっとする部分もあったが、これは対照的なキャラクターとして描かれるみちるの幼馴染ナズナとの対話によってかなりギリギリのところで気持ちを抑えストーリーに集中できる造りになっていた。
後半とくに最終回にかけては「獣人」の存在について、かなり謎が明かされていき、人類史レベルでの世界観設定を明らかにするとかなり大風呂敷を広げていただけに、たったの12話で終わってしまうのはもったいないという気がした。また、OPED両曲ともかなり耳に残るいい曲で、特にOP始まりの「Hey are you ready to go?~さぁ 行こう Brand New World!」のイントロはついつい口ずさんでしまうキャッチーさがあり非常に好きだ。
かなりの話題作だっただけに、今後の展開もまだまだありそうな予感がし、今から楽しみだ。
『本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜』
個人的な今期の大本命は本作『本好きの下剋上』だ。
本作は、1月クールから続き2クール全26話とかなりボリュームのある作品になっている。
私は、ちょうどアニメ化が発表される数か月前に、TOブックスから刊行されている同題の原作小説『本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜』を読み進めており、今アニメ化はまさに待望だった。正直、まったく本作に対する事前知識がない状況で第一期を見た方の中には、本作が異世界モノならではのファンタジー的なトンデモ設定が非常に控えめで、地味に映ったかもしれない。しかし、第二部を描いた2クール目では神殿の描写や魔術の描写などが増え、そういった意味でも見ごたえのある第2クールだったように思う。
原作既読者からすると、後々の壮絶な展開を知っているがゆえに、マインと家族の何気ないやり取りや、神殿の孤児院の子供たちとのやり取り、神殿側仕えの皆とのやり取りの一つ一つが、懐かしく感じられちょっとしたことで涙があふれてしまう悲願の映像化となっているわけだが、完全に一緒というわけでないにしろここまで原作を丁寧にアニメ化してくれたケースもそう多くないのではないだろうか。
本作の魅力は、そのリアルで嘘偽りのない具体的な世界観描写と、その世界を実際に地に足をつけ踏み固めていくマインの成長だ。そして、この”地に足をつけ踏み固めていく”という部分が非常に重要となっている。マインは転生者で本が異常に好きな本須麗乃が転生した姿だ。その異常なほどの本への愛情と、卓越した知識量、体の虚弱さ、保有する魔力量の多さなどから、平民ながら貴族にも目を付けられ様々なトラブルに巻き込まれてしまう。
そういった中、マインは周りの人に助けられ支えられながら自分の夢をかなえようとしていく中で、本を作ること以外にも守らなければならないものがたくさん生まれる。この守らなければいけないもの、大切なものというピュアな感情が本作を本作たらしめている重要な要素だ。
そして、その”大切なもの”がマインにとって本当に大切なものなのだと視聴者に分からせるために、非常に細やかな心情描写であったり、日常芝居であったりが丁寧に組み込まれている。そういった繊細な物語を紡ぎだせるのは、原作者の香月美夜先生の感性の賜物だと思うのだが、これがアニメでもとても丁寧に描かれている。
本作の泣きポイントについてもかなり語りたい部分はあるのだが、これも紙幅の都合上このあたりで割愛させていただき、また別の機会にじっくりと語りたいと思う。
本作は、なろう版はすでに完結しているものの、TOブックス刊行原作小説は現在創巻数20巻を超えてなお発売中だ。アニメで表現されたのは、主に第1部と第2部までで、その後第5部まで今の時点では想像だにしないことの連続が起き、ステージが上がっていく。しかし、いくらステージが上がっても根底にあるマインという人格は変わらず、ここに心苦しい葛藤がある。その心苦しさを、アニメを見ることでつい思い返し、泣いてしまう。アニメで楽しんだ方にはぜひ続きを小説で読んでいただきたい。そして、本作がアニメで最後まで描かれることをこれからも切に願う。
おわりに
後半にかけてかなり1作品当たりの文字数が増えてしまい、それでもまだ語り足りないことがある2020年春アニメですが、あまりとんでもない文量を書き連ねても仕方がないので、今回はこんなところで終わりにしたいと思います。
私のアニメの視聴スタイルとしては、まずは『つづきみ』などで1クールのうちにやる新作タイトル全てのPVを見て、作品を調べます。その次に、見たいと思った作品、だいたい毎クール20~30本くらいをまずは見始め、そうすると時間の都合やほか様々な要因で、「どうしても最後まで見たい!」という作品以外はだんだんとフェードアウトしていってしまいます。こうした段階を得て、最終的に残る作品が最後まで見た作品ということになります。
なので、私が最終回まで見たという作品は少なくとも私の中ではすべて太鼓判を押して他人に薦められる心の底から好きな作品のみになっています。
今回は、そんな私が2020年春クールで大好きなアニメ11作品を僭越ながら紹介させていただきました。
ちなみに、今回紹介した作品はすべてSVODサービスにおいて配信がされている作品のみになっています。『アルテ』など、特定配信サービスのみでの独占配信などもありますが、冷静に考えてみれば例えば、FODでも月額888円程度で3ヵ月、つまり約2700円程度で全話が見れてしまうわけです。これは、BDなどほかの手段に比べれば驚くほど安く、『アルテ』1作品のためだけにFODを契約したとしても十分お買い得ということになります。(事実私がそうでした。冬クールの『推し武道』『映像研』独占の流れで『アルテ』も見た感じです)
夏アニメはそこまで独占タイトルが多くないような印象を受けますが、SVODは時間に縛られず録画のし忘れということもなく手軽にアニメを見れるので、とりあえず契約しておくのがおすすめです。
以上。最後はなぜかFODの宣伝のようになりましたが、今回の記事はこんなところで終わりにしたいと思います。最後まで読んでくださったあなたも、ざっとここまでスクロールしてくださったあなたも、ここまで到達していただきありがとうございます。ぜひ、いいねやツイッター等々へのシェア、よろしければサポートなどいただければ大変喜びます。
ここまで1万字弱となりましたが、お付き合いいただきありがとうございました。
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