視座のステップアップ
序章
今回はこちらの本の感想を綴っていく。
この本は本屋で偶然見つけたものである。本来は違う本を買いに出向いたのだが、生憎そのお求めの本がなかったので違う本でも買おうかと思っていたところに出くわした。タイトルからして惹かれた。というのも私は長らくエレクトーンを弾いている身で、始めて今年で15年経つ。だから少し音楽のことは素人よりはわかっている。だが最近少し音楽で息止まっている感じがして、もう少し勉強が必要だなと思っていた。そんな思いもあってすぐ手に取って買ってしまった。
本章
初発の感想
本書は岩波新書から出ている。そして初版が1971年ということでこれは文体が難しく内容も難しいのかと少し思っていた。だが音楽の知識はそれなりにあるので挑むにはむしろ丁度いい塩梅だと思って挑んだ。案の定難しかった。でもまた案の定、知っていることが半分くらいだったので、以前の岩波新書よりは読みやすかった印象だ。ただ知らないこともそれなりにあったのでびっくりした。それが面白かったと同時に少しショックでもあった。
静寂
本書の1番最初の内容は“音楽の素材”の話だった。目次を見ると項目が二つ。“静寂”と“音”。「静寂!?音はわかるけどやなぁ、静寂!?」疑問に思った。読み進めていくとこれが面白い。ということで一度内容を一部要約したものをご覧あれ。
どうだろうか?この時点ですでに私は度肝を抜かれた。(なんならこれが1番の面白い内容でもあった。)伝わらなかったらすまない。詳しくは本書ォ読んで見てくれ。
これは考えたことのなかった視点だった。確かにうるさい環境で音楽を奏でてもただうるさいだけで心地よくない。
あと音が静寂に帰っていくというのを最近経験したことがある。2月の上旬に横浜アリーナでヒーロー達による年に一度の音楽の祭典があり、それに行ってきたのだが、この内容を読んだあとに行ったおかげか、音が静寂に帰っていく感覚を身をもって体験できた気がする。そういう意味でも面白かった。
和声
ここからは和声についてのお話をしていきたい。和声の話も面白かった。というのも私は音楽の中でもコード大好きマンで、曲を弾く時もコードを意識して弾くことが多い。
まず“コード(cord)”に相当する日本語がないかということを数年前から微かに思っていた。この和声の章を読んだときコード=和声であると繋がったときは気持ちよかった。
次に和声の原則的なところの話をしたい。成り立ちを綴る。
上記のこの三和音というのはいわば“ドミソ”のことである。(一般的にCコードと呼ばれてるやつ。)
「こういう原理だったのかぁ」という驚きがあった。さらに弦の長さを1/7,1/8と増やしていくとまたあることに気がつく。1/7の音は俗にいう7の音(Seventh)だった。次に出てくる音が(オクターブによる重複を除いて)1/9,次いで1/11,1/13と出てくる。この音はそれぞれ根音(ルート)との音程関係が2度,4度,6度であった(長短は一旦無視。)私は思った。「テンションノートの9,11,13はこっから来てたのかぁ!」
テンションノートとは語れば長くなるが、和音をおしゃれにする要素と今回は覚えておくくらいでいいだろう。このテンションノートの音は上記の通り根音から2度,4度,6度上がった音をわざわざ7足した数で表記するのにテンションノートに出会った当初は抱いていた。だが解決した。この原理を知っていれば腑に落ちた。
さらにコード進行のおいしさ的なのにも少し気付けたかもしれない。基本的に主和音という基準となる和音があり、そこから5度上がった和音を属音といういうのだが、この属音は主和音に向かっていく性質があり、主和音の調性においては不安定的な要素を持つ。そして主和音へいくと安定に戻る。ある意味で(本当に広い意味で)コード進行はこれの繰り返しだ。(詳しくは本書をご確認ください。)
一度不安定から安定に戻ったとき人間は快感を感じる。不安定の状態のときは人間はやはり気持ちとしては落ち着かないが、そこから安定に行ったときはもちろん落ち着く。これが音楽もっといえばJ-POPは特に繰り返されるのだ。「それはもうコード大好きマンになりますわ」そんなことを思った。
和声の話は本当に色々なことがつながって面白かった。もっと内容はあるが、今回はこの辺で留めておきたい。
終章
読んでよかったと思う。実際途中第2章当たりで少し躓いたが、なんとか粘ってよかった。個人的にはヨーロッパの偉人の名前を覚えるのが苦手で、そういったカタカナが来ると少しビビるのだが、この本は割とそれが多かった。知ってる人ならまだしも知らない人が来るともう...
まぁそんなことはさておき、音楽をやっていて音楽の基礎を知りたい、理解を深めたいという方にはおすすめである。ぜひ読んでみてほしい。初心者の方は余程の読解力がなければ難しい内容かもしれない。