
九このみかんと、小指だけでメロディオンを持てる男
家に帰ると、長女が宿題の音読をしていた。
読んでいたのは、がまくんとかえるくんシリーズの「おてがみ」。私も子どもの頃にも教科書に載っていて音読をした記憶がある。
音読するページは122ページから125ページと決まっていて、がまくんがかえるくんに、自分はお手紙をもらったことがないと悲しそうに話し、それを聞いたかえるくんが「しなくちゃいけないことがある」と大急ぎで家に帰るところで終わる。
そんな続きが気になる中途半端なところで終わる音読を、長女は合計3回した。
音読が終わると、今度はノートを取り出して漢字の練習を始めた。これも学校の宿題。今日は間違えたところを直さないといけないと言い、いつもより時間をかけて書いている。
途中、長女がげらげらと笑いだして、「ねえ見てよママ、きゅうこのみかんって書くところを『きょうこのみかん』って書いちゃった」と私に見せてくる。
「九」の横に自分で「きょう」とふりがなを振っていて、たしかに「きょうこのみかん」になっている。私が「きょうこちゃんのみかんになっちゃうね」と言うと、長女は「きょうこちゃんじゃないよぉ」とげらげら笑いながら消しゴムで消し「きゅう」と書き直す。長女は笑いのツボが浅い。
たった10マスのノートに「九このみかん。」と書くから、漢字の練習というよりほとんどひらがなの練習という感じがする。

私が小学生だった頃は、もっとシンプルに漢字だけで練習していた気がする。九なら「九」だけをひたすら一行書くというような。しかも「。」でマスを埋めるのはナシだった気がする。時代が変わったんだろうか。
夜ご飯にホッケを出したら、次女が「この皮がおいしいんだよねぇ」とツウっぽくつぶやく。子どもたちが右手だけを使って魚を食べようとするから「左手は?」と聞いたら、長女が「お留守番してる」と答えた。
左手でちゃんとお皿をおさえて食べなさい、という意味だったのに、子どもたちの間で「左手はいつもお留守番ばかりだよね」「右手ばかり疲れるよね」と盛り上がり、「たまには左手だけで食べよう」と、左手でお箸を持って魚を食べ始めた。
ホッケは骨もないし、子どもでも自分で食べやすい。私はホッケの皮は当然のごとく食べるものだと思っていたのだけど、夫はホッケの皮を好んでは食べない。エビの尻尾と同じ感じ?
ベッドで本を読んでいたら、お風呂からあがった次女が「筋肉マッチョ!」と言いながらやってきた。両手に子ども用の水筒を持っている。ダンベルのごとくそれをかかげて、筋肉マッチョ。
「同じ幼稚園の◯◯くんはね、メロディオンを小指で持てるんだよ」と次女は言い、ちいさな小指をくいっと挙げて見せてくる。この小指でメロディオンを……? すごいね、と私が言うと「次女ちゃんはお母さん指だけでメロディオンを持てる」とアピールされた。
指だけでメロディオンを持てるのは、筋肉マッチョでかっこいいらしい。