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イギリスの街中の英語、アナウンスの英語 あれこれ


1  queue(人・車の列、列に並ぶ)は、オンラインゲームの用語

今回の英国旅行で、見かけた街中の看板や、聞こえてきた英語の表現について、徒然なるままに書いてみます。

見出し写真の“queue”  /kjúː/ という単語は「列、列に並ぶ」という意味ですが、ほとんど英国でしか使われない単語ですね。

queueというスペルで、「キュー」と発音するが、不思議ですね。だから、queueのqより後ろのスペルueueの部分は、意味がないんだ、という人がいます。アルファベットqの1文字で、キューと読めるからです。

この単語の存在を知ったのは、1983年に初めて英国旅行をしたときでした。毎日の宿は予約せずに観光案内所で、B&Bの紹介をしてもらって、そこに泊まるという旅でした。

おそらく、湖水地方のウィンダミアで、B&Bの紹介をしてもらうための列に並んでいた時のことです。私は列の最後尾にいたのですが、いきなり、女性の旅行者に
    “Is this the end of the queue?”
と聞かれたのです。その時、私はqueueという単語は知らなかったのですが、endが聞こえたので、とりあえず“Yes”と答えたのですが、「キュー」ってなに? これがqueueとの出会いでした。

上のサインにCCTV、下には、Queue hereのサイン
左側に、CCTVのカメラがあります

それがきっかけで、英国では普通に見かける単語だということがわかりました。名詞と動詞の用法がありますね。

また、ある時は、
     ”Are you in the queue?”
と聞かれたことがありました。私の位置が、列に並んでいるのかあいまいなところに立っていたからだと思います。

実は、興味深いことに、このqueueという英単語が、オンラインゲーム世界で普通に使われているそうです。例えば、「今、インキューです」というのは、相手と対戦するのを待っている状態( in queue )だという意味です。

アメリカ英語で列のことは、lineを使うのですが、イギリス英語のqueueが、オンラインゲームで使われているのは、面白いですね。


2  CCTV  ( = close-cirquit television )  (閉回路テレビ、監視カメラシステム)

CCTV「監視カメラ作動中」という英語を、よく街中で見かけました。カメラのピクトグラムがあるので、余計に目につきました。監視カメラのピクトグラムはいろいろあるようです。微妙に違います。

湖水地方 ウィンダミア駅舎で

アメリカ英語では、CCTVよりも、security cameraの方が一般的なようです。CCTVは監視カメラのシステムの意味合いの方が強いのでしょう。surveillance cameraともいうようですが、英国はCCTVがもっとも普及しています。

監視カメラという、比較的新しい物についても、英米で異なる英語に分かれてしまうのは、興味深いですね。

ちなみに、CCTVには、「中国中央電視台」(中国の国営公共放送局)という意味もあるので、混同することはないのかと心配になります。

でも、監視カメラと中国の国営放送が同じ単語ということは、監視カメラの意味でCCTVという語を使っていても、潜在意識にはこの中国の放送局のイメージが、サブリミナル効果のように作用しているような気がして、不思議な感じですね。

彼の国では、顔認証システムが発達していて、街中のCCTVで、映っている人の身元が、瞬時にわかるようです。身元が認証されない人は、不正入国者ということになります。

3  テロや非常時に備えて “See it, Say it, Sorted.”   (見たら、連絡して、解決へ)

この“See it, say it, sorted.”というフレーズは、耳にタコ状態のように、英国の列車・地下鉄やバスの中で、聞こえてきました。韻を踏んでいる、テロ対策のキャッチコピーです。

とにかく、列車や地下鉄では、非常時に関する表示が目立ちました。

緊急時のドアの開け方について
SOSボタンと緊急電話
赤色の説明文には、
「車内の非常口と非常装備の位置を、十分に把握してください」

「〜をよく把握しておいてください」というのを“Please familiarise yourself with 〜“という表現を使っているのが、イギリス英語ですね。アメリカ英語なら、Please get familiar with 〜、 Make sure you know where ---. などと表現するかもしれません。


テロに対する警戒からか、何度も聞いた“Say it, see it, sorted.”

このアングルがちょっと不気味です
カバンの取手の反対側に視点があります 
不審なカバンに爆弾が入っているかも、という絵ですね

とにかくアナウンスの最後に流れてくるのが、“Say it, see it, sorted.”でした。このキャッチコピーの趣旨を説明する次のような英語も流れていました。正確ではありませんが、私の記憶では、

“If you see something that doesn’t look right, speak to the staff or call XXX”
(もし不審物を見かけたら、係員にお知らせください、あるいはXXXに連絡を)

このキャッチコピーは、私が理解するに次のような意味だと思います。

See it    =   If you see something suspicious,  ( 何か不審なものを見かけたら )
Say it    =   Please speak to a staff member    ( 係員に知らせてください )
Sorted  =   It will be sorted out.     It will be sorted by the authority.   ( スタッフや関係当局が対処いたします )

sortは、「分類する」という意味ですが、sort outあるいは、sortだけでも、「問題などを処理する、解決する」という意味があります。

Sort itとも聞こえるので、「不審物を見かけたら、連絡して、(あなたが)対処しなさい」と解釈されるのですが、これでは不自然ですね。見つけた人が責任持って対処する、なんてあり得ません。でも、ネイティブ・スピーカーにも“Sort it” と聞こえるらしいです。

テロというと、日本では米国の同時多発テロが思い浮かびますが、英国でも断続的に、死者が複数出る大きなテロが起きています。ですから、少しでも市民に協力を求めて、テロの芽を摘み取りたい、という当局の意向が働いているのだろうと思います。

この“See it, 〜“のキャッチコピーは、2016年以降、列車、地下鉄、バスなどの公共交通機関で頻繁に繰り返されてきたので、記憶には残りますが、あまり評判はよくないようです。

日本玩具博物館HPより

日本でも、太平洋戦争中には、戦意高揚のために、あるいは、敵のスパイ行為を阻止するための標語がたくさんありました。子ども向けの防諜カルタの標語に、「あ」のカルタには、「あやしいと、にらんだ人は、けいさつに」というのがありました。

戦時中の標語と、イギリスのテロ防止のキャッチコピーは、基本的には不安の気持ちからきているのでしょう。一般市民に、テロやスパイ行為に対する警戒感を高めてもらい、重大な事故や事件に発展しないように、協力を求めるということです。

テロ対策や犯罪防止のために、街中をCCTVだらけにして、一般市民に協力を求める、という社会は、痛し痒しなのでしょうが、現代社会は、イギリスの小説家ジョージ・オーウェルの代表作『1984』のはるか先を走ってしまっていますね。

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