【お望月さんの】2021年映画ベスト100
こんにちは! 編集ユニット「お望月さん」です。
我々が2021年にみた映画作品、約240本からベスト10を選出。
それぞれホメホメしていく恒例の企画です。
今年も豊作だったのでベスト100まで掲載していきます。
毎年メインMCを務めていたお望月さんFは都合によりお休みのため、お望月さんAが司会進行を務めます。
常時更新しているFilmarksアカウントはこちらです。(フォローしてね)
過去のベスト作品はこちらです。
2020年 1位『メランコリック』
2019年 1位『スパイダーバース』
2018年 1位『キラーメイズ』
さらにベスト映画とは別にスコア順のトップ100を発表します。見どころコメントもつけるので、ぜひ見てほしいな。
2021年ベスト10
まず今年の最新作のベスト10を発表していきたいと思う。最新というのは、日本公開や配信されたときに可能な限り早く触れた作品が該当する。おおよそ2018年以降に制作されたものだと思ってくれてよい。題名のリンクはFilmarksの鑑賞直後レビューになっているので鑑賞時の感想も参照してもらえると嬉しい。
1位 『モータルコンバット』(2021)
2021年に最も涙した映画が『モータルコンバット』だ。感動とも悲しみともつかない失禁した感情が頬を伝っていた。数十年間積み重ねたキャラクター・アンサンブルのなんと芳醇なことか。ビ・ハンとハンゾウの尊い闘争よ。クン・ラオとリュウ・カンの絆の炎よ。春巻きへの怒りよ。申し分なく2021年の幕内最高優勝です。Test Your Might。
2位 『ノマドランド』(2020)
滅びに向かいながら懸命にあがく人類を描かせたならば、クロエ・ジャオという映画作家に並ぶものはいないかもしれない。夫も職も住居も失ったファーンが、米国中をノマドしながら懸命に働く姿には胸を打たれる。そして、彼女は自ら安住の地を蹴り、風に溶けていくことを選ぶことで物語は寓話となり永遠に続くことになった。さよならは言わない。
3位 『エターナルズ』(2021)
滅びに向かいながら懸命にあがく超人類を描かせたならば、クロエ・ジャオという映画作家に並ぶものはいないかもしれない。人類を導いていた超人類が自ら育てた人類を破滅させるために生まれてきたことを知る、というのが物語の骨子である。10名ものキャラクターが、それぞれ別の結論にたどり着くという凄まじい脚本整理力がある上に、全マーベル史でも屈指のアクションシーンが連続するという、世界観的にもMCUでも一段上のステージの作品である。クロエ・ジャオ、幽遊白書を撮れ。
4位 『ヒトラーを殺し、その後ビッグフットを殺した男』(2018)
かつて世界を救うためにヒトラーを殺し続けた男が全米を核と病原菌の恐怖に陥れるビッグフットの狩猟に挑む、という如何にもB級ムービーの設定ながら、静謐な映像と輻輳される過去によってシリアスで重厚な人間ドラマが描かれる。壊れた世界に暮らす老人が修復のために再び銃を構える。そして構えた時にはコトが済んでいる。ジャンプカットによる編集は潔く、題名通り「殺した後」の生活を重点的に描いている。傑作。
5位 『砕け散るところを見せてあげる』(2021)
竹宮ゆゆこ原作の実写映画化作品。学園最底辺の少女とヒーロー志願のセンパイの間に結ばれる強固な絆と断絶を描く純ヒーロー映画である。堤真一の放つ強烈な異物感、英雄症候群に憑りつかれた男の末路、宇宙的に受け継がれる意思。単独の作品としても十分に強烈な異物感のある怪作であるが別の視点を加えることで面白味が格段に増してくる。
2021年はまさに竹宮ゆゆこの一年であった!!
アニメ『とらドラ!』を鑑賞してむせび泣いたことから始まり、原作小説『とらドラ!』での竜児が部屋の掃除をすることで自我と向き合う姿にむせび泣き、PSP版『とらドラ!ポータブル』によって発生した可能性にむせび泣いた。そして、ゆゆこのデビュー作である『私たちの田村君』を読了したことによって、私は『砕け散るところを見せてあげる』という映画作品について、これまでより一段深い解釈に到達したのだ!!
これまで私が触れてきたのゆゆこ作品はすべて、英雄症候群およびメサイアコンプレックスを描いてきた。ライトノベルである『田村君』では描き切れなかった救世主願望の行きつく果てと、その先に生まれる希望を『砕け散る』で描き切ったのだ!!ゆゆこ、なんと恐ろしく悲しい物語の紡ぎ手なのでしょう!ついに勇気を出して、あの先を描き、ヒーローの……おいっ……こらっ放せ、まだ話は終わってないぞ! アッ……
6位 『ドッグマン』(2018)
気弱なペットサロン主マルチェロが、友人シモーネの暴力による支配から逃れるために足掻く姿を描く。どうにもならない葛藤とままならさが重厚感たっぷりに描かれており、やがて決定的な分岐点を越えた二人と一匹の長い夜に繋がっていく。非常に高品質な作品である。
7位 『ヤクザと家族 The Family』(2021)
一人のやくざ者の20年間のやくざ生活を描いたクロニクルである。ドキュメンタリータッチで描かれる地方都市の悲喜こもごもや、家族を持てずファミリーに取り込まれていく青年のやるせなさが胸に響く。あの『新聞記者』の藤木監督作品であるということで不安があったが、監督の本来の手腕がフルに活かされたことで充実した群像劇となった。
8位 『ディアスキン 鹿革の殺人鬼』(2019)
自慢の鹿革ジャケットを手に入れた珍おじさんが、全世界に対してジャケット着用禁止を求めていくという、如何にもZ級のあらすじ。だがしかし、本作品は2021年のベストエンディング作品である。77分というランタイムに詰め込まれた「偏執」と「編集」の数々。そう、この作品は「迷惑おじさんホラー」であると同時に「映画を撮る映画」ジャンルの作品なのだ。(よく見るとジャケットに撮影している人が映っているのがわかるだろう?)拍手喝采となったラストシークエンスを見逃すな。
9位 『必殺!恐竜神父』(2018)
最初に書くべきことは、主人公は神父ではなく牧師であるということだろう。次に、あなたにはっきりと言うが、作中に「アーメンダブツ!」というセリフは一切出てこない。最後に伝えたいのは、本作はユーモアに満ちたパニックコメディの良作であるということだ。
如何にもZ級のあらすじとZ級のビジュアルの紛れもないZ級映画ではあるのだけれど、本作はアイデアに満ちた作品である。娼婦と牧師のハイタッチ、死を賭して牧師に襲い掛かる忍者軍団の悲哀、明かされる真実とガンジーが助走をつけて殴るゴア描写、でかい文字を画面に張り付けて押し通す場面説明、恐竜神父の名台詞「W……WHAT」。大好きだ。
10位 『バクラウ 地図から消された村』(2019)
南米の静かな田舎町は、実は逃亡奴隷村であり、迂闊にもそこに攻め込んだ奴隷狩りは容赦なく死ぬ。という明確なログラインが存在する作品である。「見事なまでに狂ってる」というキャッチフレーズは、実は村側ではなく時代錯誤の奴隷狩りに向けたものであり、視点は裏返り「狂っておるのは、狂っておるのは、貴様らのほうではないか!(カァーッ:例のSE)」という定番時代劇のような鮮やかな結末を迎えることになる。地球では歴史を知らないものから死んでいく。Practice Everyday。
以上10作品をお望月さんの2021年のベスト映画として認定します。
おめでとうございます。
2021年スコア順ベスト100
今年鑑賞した映画を年代不問でスコア順にベスト100にした。見どころをメモしておくのでピンと来たら鑑賞してみてほしい。評価点数は絶対評価ではなく体調や星辰や食い合わせにも左右される。高得点になるほど個人的な嗜好が強く出ているので中くらいが食べごろではないだろうか。
1位~10位
5.0|モータルコンバット(2021)【群像エンターテイメントの頂点】★
5.0|ゴジラ(1954)【「聖書」のひとつ】
4.9|エターナルズ(2021)【滅亡の多様性】★
4.8|ノマドランド(2020)【いつかどこがですれ違った人々の話】★
4.7|転校生(1982)【最も完成された「映画」のひとつ】
4.6|ホラー・エクスプレス/ゾンビ特急地獄行(1972)【地球史のすべて】
4.5|ドッグマン(2018)【友情は死んでも犬は死なない】★
4.5|ヒトラーを殺し、その後ビッグフットを殺した男(2018)【殺した、その後】★
4.5|スウィング・キッズ(2018)【「交流」の純粋な結晶】
4.5|エクストリーム・ジョブ(2018)【エンタメ満漢全席】
11位~20位
4.5|騙し絵の牙(2021)【またしても何も知らない大泉洋さん】★
4.5|ヤクザと家族 The Family(2021)【砂糖より甘いヤクザファンタジー】★
4.5|羅生門(1950)【おまえが目撃者だ】
4.5|ゴジラvsコング(2021)【回転寿司のバナナチョコサンデー】
4.5|トレマーズ(1990)【娯楽映画の教科書】
4.5|ニューヨーク 冬物語(2014)【熱力学的奇跡】
4.5|酔拳2(1994)【人類の可動域の限界】
4.5|音楽(2019)【音の楽しむに貴賤なし】★
4.4|ミッチェル家とマシンの反乱(2020)【Netflixオリジナルの良心】
4.4|僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング(2019)【最終回】
21位~30位
4.4|ロブスター(2015)【どの立場からもはみ出る男】
4.4|宇宙からのメッセージ MESSAGE from SPACE(1978)【スターウォーズの耳コピ】
4.4|必殺! 恐竜神父(2018)【高レベルなコメディセンス】★
4.4|ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結(2021)【序盤に処理されたヤツらなんだったの】★
4.4|草原の実験(2014)【最後まで見届けて】
4.3|男たちの挽歌 II(1987)【絶好調時のすたみな太郎】
4.3|ゴジラVSビオランテ(1989)【スパイマンがやたら目立つ】
4.3|人魚伝説(1984)【想定の五百倍くらい人が死ぬ】
4.3|オクトパスの神秘: 海の賢者は語る(2020)【純愛】
4.3|ディアスキン 鹿革の殺人鬼(2019)【みんな大好き換気扇ブレード】★
31位~40位
4.3|バクラウ 地図から消された村(2019)【舐めてた村人が全員カポエラー】★
4.3|楢山節考(1983)【生と死、性と死】
4.3|佐々木、イン、マイマイン(2020)【ラストで帳尻が合い、ややはみ出る】
4.2|地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン(1972)【少年スパイにはロマンがある】
4.2|ザ・ピーナッツバター・ファルコン(2019)【夢はかなう、やや過剰に】
4.2|復讐するは我にあり(1979)【最低最悪のピカレスク】
4.2|ザ・コール(2020)【最低最悪の時差スリラー】
4.2|ホワイト・ストーム(2019)【地下鉄でカーチェイスするな】
4.2|GODZILLA ゴジラ(2014)【美ゴジラ】
4.2|パブリック 図書館の奇跡(2018)【ギネス級の全裸中年男性】
41位~50位
4.2|罪の声(2020)【宇野さん】
4.2|BLUE/ブルー(2021)【ステップは止めない】
4.2|THE GUILTY/ギルティ(2018)【リモートワークの功罪を考えてみよう】
4.2|機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ(2021)【青春テロリズム】
4.2|サイダーのように言葉が湧き上がる(2020)【モールにも歴史あり】
4.1|ホテル・ムンバイ(2018)【プロフェッショナル】
4.1|前田建設ファンタジー営業部(2020)【空想の現実化を笑うな】
4.1|新しき世界(2013)【新しき世界(があった)】
4.1|下女(1960)【最低最悪の更に斜め下】
4.1|透明人間(2019)【透明人間はどの画面にもいる】
51位~60位
4.1|AWAKE(2019)【AI将棋版餓狼伝】
4.1|兵隊やくざ(1965)【男と男の新しき世界】
4.1|ブルータル・ジャスティス(2018)【銀行強盗チラ見せ玉抜きシーンが怖すぎる】
4.1|刑事グロム vs 粛正の疫病ドクター(2021)【ロシア映画なのにちゃんとしてる】
4.1|返校 言葉が消えた日(2019)【語り継げ、忘れるな】★
4.1|ザ・ハント(2020)【いますぐインターネットをやめろ】
4.1|約束のネバーランド(2020)【ワンオペ育児の擬人化】
4.0|エスケープ・フロム・L.A.(1996)【退廃都市は楽しいね!】
4.0|蟹の惑星(2019)【蟹に託した青春】
4.0|ムーンライズ・キングダム(2012)【シンメトリー】
61位~70位
4.0|殺人狂時代(1967)【狂人だらけ】
4.0|Mr.ノーバディ(2021)【狂人だけ】
4.0|マジカル・ガール(2014)【たすけて】
4.0|ラーヤと龍の王国(2020)【マジロ】
4.0|フロッグ(2019)【気持ちの良い空撮】
4.0|スポンティニアス(2020)【「E.T.ごっこ」大好き】
4.0|ファイナル・プラン(2020)【老盗賊引退ジャンル】
3.9|パピヨン(1973)【脱獄ジャンルからファンタジーにちょっとはみ出る】
3.9|ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん(2015)【姫様が地に足をつける話】
3.9|小説の神様 君としか描けない物語(2020)【非恋愛型男女バディ】
71位~80位
3.9|恐怖のセンセイ(2019)【最終奥義!!】
3.9|ジュピターズ・ムーン(2017)【天使はいた、しかも難民だった】
3.9|mid90s ミッドナインティーズ(2018)【事故映像だらけ】
3.9|バットマン オリジナル・ムービー(1966)【バットマンと世間の近さ】
3.9|羊飼いと風船(2019)【バルーンを見上げる視線】
3.9|ブラッド&ボーン 真拳闘魂(2009)【拳闘の妖精】
3.9|DRAGON ドラゴン(2015)【竜は美しい】
3.9|メイキング・オブ・モータウン(2019)【自動車工場と音楽って同じだったのか】
3.8|スパロークリーク 野良犬たちの長い夜(2018)【たのしい民兵組織入門】
3.8|アイアン・フィスト(2012)【拳と拳を打ち鳴らせ】
81位~90位
3.8|徳川セックス禁止令 色情大名(1972)【「自由」に対する耐久試験】
3.8|空の青さを知る人よ(2019)【演歌のバックバンドは良い仕事】
3.8|ソニック・ザ・ムービー(2020)【楽しい異文化ロードムービー】
3.8|アンダーウォーター(2020)【穴が開いたら超即死】
3.8|レクイエム 最後の銃弾(2013)【サプライズヘルコプター理論】
3.8|ゴジラ対メカゴジラ(1974)【シーサーの歌が長すぎる】
3.8|シルバー・スケート(2020)【氷上に燃える男男感情】
3.8|THE WAVE ザ・ウェイブ(2015)【ジョークルホープスの実写化】
3.7|ボーダー 二つの世界(2018)【アカデミーサイアク食事賞】★
3.7|ガス燈(1944)【新婚生活の壊し方】
91位~100位
3.7|水戸黄門Z(2016)【水戸黄門はラップでも無敵】
3.7|ゴジラ2000 ミレニアム(1999)【新世紀にもなってタコ星人】
3.7|水戸黄門漫遊記 怪力類人猿(1956)【水戸黄門はゴリラよりも強い】
3.7|プラットフォーム(2019)【デスゲーム協会優良認定作品】
3.6|燃えよデブゴン/TOKYO MISSION(2020)【デブゴンにTOKYOは狭すぎる】
3.6|CLIMAX クライマックス(2018)【熱狂と発狂の間】
3.6|レディ・オア・ノット(2019)【ガキ殴りオブザイヤー】
3.6|鬼手(2019)【「死」!!】
3.5|仁義(1970)【色気のある強盗シーン】
3.5|狂った野獣(1976)【暴走バスがやりたい放題】
※3.5点は同得点作品が21作品あるので省略
ベスト100を振り返ってみて
映画100本に一言コメントを入れていると、一言でおもしろさを説明できない、コメントに難儀する作品にたびたび遭遇する。おそらくそういった作品は、コンセプトがソフトな、内面的な動きを描いた作品に該当するのだと思う。 例えば『ピーナッツバターファルコン』は、とにかく内容が説明がしにくい作品だ。
こういった作品は、鑑賞者側にもリテラシーを要求するのでオススメしにくい。点数においてもベスト10に入れた『砕け散るところを見せてあげる』は、ベスト100にすら入っていないのだけど、それはそれとして観るべきところがあるし、実際に見てみると予想外の角度から深く突き刺さるような作品も多く存在する。
今年の作品だと『ノマドランド』『ロブスター』『ピーナッツバターファルコン』『罪の声』『ムーンライズキングダム』あたりが該当するのではないか。実際に鑑賞をしてみて、グッと来るものがったらうれしいです。
未来へ
来年は更生して年に85本くらいしか映画を見ない生活に戻ります。山奥で娘と二人、木を切り倒しながら週末に面白い映画だけを見て穏やかに暮らすんだ。俺はもう映画コマンドーはやめた。過去を葬り今日を流れる葬流者だ。いまさらそんな話を持ち掛けられてももう遅い。俺は降りたんだ。おまえらが戦争を始めようが俺は一切関知しない。暴力を求めるなら、好きにするがいい。だから、俺たちをあまりいじめるな。
あと、映画に限らず色々な感想をmin.tに遺しているので、よかったら確認して観てほしい。その時の流行りとかでつぶやいているせいで何を言ってるかわからないことがある。
いじょうです。
来年もよろしくね。