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「海のはじまり」という船に乗った感想
忙しくて書けてなかったけど「海のはじまり」は最高のドラマだったので、感想を残しておく。
「はじまり」と「おわり」のない海。そこには決断の余地がない。知らぬまにはじまっている。終わることはなくどこまでも続く。
わたしが初回放送をみて書いた感想にこうあった。まさに、そういうドラマだったなとしみじみと思う。
選ぶことを大切にする水希。
なかなか選ぶことができない夏。
無理をして選んでしまう弥生。
選ばれなかった津野。
それぞれがそれぞれの人生で何かを選び、何かを失う。
選ぶことの大切さを描きながらも、「海のはじまり」では選ぶことと、その物語がはじまることはすぐには結びつかない。
選ぶ前から物語は波のように押し寄せていて、選んだあとからも押し寄せてくる。
今までわたしは何かを決断することは、分岐点で道を選ぶことのように思っていたけれど、「海のはじまり」をみて違うのだと気づかされた。
それは、海の上で船の舵を切るようなものだった。
舵を切ったから、真っ直ぐに目的地につくわけではない。船は運命に翻弄されながら進んでいく。
航海という人生は舵を切る前からはじまっている。
親であること。子であること。恋人であること。他人であること。
そこにいたこと。
いなくなったこと。
境界線はなくて、はじまりとおわりはなくて、そんな海に翻弄され、漂いながら、それぞれが舵を握りしめている。
「海のはじまり」ではもっとも舵を操るのが不得意な夏が主人公だった。それでも物語が進むにつれて、夏はまわりの人に協力してもらうことを学んでいく。
船はひとりでは動かせない。舵を握るのは本人であっても、助けてくれる人たちがいなければ遭難してしまう。
誰もが自分の船の舵を握る操舵手でありつつ、誰かの船にとってのかけがけのない乗組員でもあるのだった。
自分に正直な水希のように、誰にも誠実に向き合う夏のように、思いやりあふれる弥生のように、こっそりケーキを買ってくる津野のように、わたしも生きていきたい。
素晴らしいドラマに感謝。