なにかに行き詰ったりすると、持っている本やレコードやCDを思い切って全部捨てたり売ったりしてしまう癖がある。
それで半年くらい経つと手放したのを後悔して、どうしても手元に置いておきたいものは、また買いなおしたりする。
ブコウスキーの「死をポケットに入れて」も何回か買いなおしている1冊。
最初に持っていたのは単行本だった。
今、手元にあるのはたしか2冊目の文庫本だ。
ブコウスキーの小説は2冊だけ読んだことがあって、初期の短編集「町で一番の美女」と遺作となった長編「パルプ」。
どちらも面白かったけど、他の小説を追っかけて読むまではしなかったので、あまり良い読者とは言えない。
「死をポケットに入れて」は死後に発表された日記風のエッセイ集。
73歳で死んだブコウスキーが最晩年に書いたこの本を最初に買った時、ぼくはまだ三十代だった。
こんな文章にしびれた。
それから20年近くが経ち、作者の年齢にこちらが近づいていくにつれて(とは言ってもまだまだ若造だが)、より味わいが深くなってきたように思う。
別にこの本でブコウスキーは競馬の話ばかりをしているわけではないのだが、ちょいちょい競馬が出てくるので、競馬場に居ると時々この本のことを思い出す。
競馬をことさらドラマティックなものとして捉えないところと、競馬をする自分を醒めた目で見ているところが気に入っている。