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物足りなさはあるけれど“嫌じゃない”映画「時々、私は考える」

映画が始まって、たいして大きくはなさそうな町の情景がいくつかの固定ショットで映し出されるのを見て、あ、この映画悪くなさそうだな、と思う。

人付き合いが苦手なフランという若い女性が主人公。
演じるのはデイジー・リドリー。
まだ無名だった時代にいきなりスターウォーズEp7~9の主役に抜擢された人。
そういう人ってなかなかその後の仕事がむつかしいイメージがあるが、このフランという役はかなり良いんじゃないだろうか。
この映画にはプロデューサーとしても関わっているとのこと。

フランの心象風景みたいな幻想的な映像が時折はさみ込まれる。
こういうのは独りよがりな表現になりがちでシラケることも多いのだが、この映画の場合は映画のテイストに合っていて悪くなかった。
まあ趣味の問題といえばそれまでだが。

人付き合いが苦手で、勤めている会社でもあまり周りと馴染めていないフランだが、新しく入って来た男性社員とのかかわりで少しずつ変わっていく、という話なのだが、それほど劇的な変化があるわけでもなく、変わるのかな、というあたりで終わってしまうのでもしかしたら変わらないのかもしれない、くらいのところでとどめているのが良かった。
人はそんなに変わらないものだしな。

原題は「Sometimes I Think About Dying」
「時々、私は考える」の後に「死ぬことについて」が続く。
ただ希死念慮とは違う感じ。
単純に「死んでいる自分」あるいは「自分の死」を頭の中に思い浮かべるような。

誰かがちょっと場違いなことを言ってしまって、あるいはやってしまって、まわりが「ええ・・・」って感じですごく変な雰囲気になってしまう、っていうシーンが見たくない。
すごく身につまされるから。色々思い出してしまって。
この映画は題材からしてそういうシーンがありそうだな、と思ってびくびくしていたのだけれども、幸いなことにそういうシーンは無かった。よかった。
もちろん主人公の性格が性格なので、やや気まずい感じのシーンや、ちょっと「あれ」っていうシーンはあるのだが、そこまではっきりと「うわあ・・・」となるシーンはなかったように思う。

フランの会社の人たちがフランのことを割と普通に受け止めている感じは悪くなかった。
映画のタイプ、というか感触は全く違うのだけど、なんとなく「夜明けのすべて」を思わせるところも。

同名の短編映画が先に有って、それの長編映画化とのこと。
確かに短編あるいは中篇でもいいかも、というところはある。
そこらへん、ちょっと長編映画として物足りないような感じもあるのだけれども・・・。

「これは傑作だ!」
とは思わないのだが、
「なんか嫌じゃない映画だったな」
という読後感(本じゃないから読後感じゃないんだけど)があった。

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