面白かったけどちょっとタイムリーすぎた「コンクリート・ユートピア」
1月×日
新宿バルト9で「コンクリート・ユートピア」(オム・テファ監督)
何かよくわからないがともかく大規模な地殻変動的災害が起こり、壊滅的なダメージを受けた街の中で、奇跡的に唯一倒壊を免れたマンションが舞台。
そのマンションに住むこと自体がある種のステータスになるような高級マンションらしい。
マンションの住人たちは外から集まって来た被災者を追い出し、代表を選んで自治を始める。
最初のうちはそれが上手くいっていたのだが・・・、てな感じの話。
大人版「蠅の王」ってところか。
ただこちらの方は集団が壊れていく様、よりも「代表」に選ばれた男(イ・ビョンホン)の人物像と変化の方に重点が置かれている。
大人版「蠅の王」ってところか、と書いたけれども、「蠅の王」を読んだのはもう何十年も前なので、実はあんまり憶えていない。
たしか遭難して少年たちだけが残された無人島で、なんとか秩序の有る集団生活を送ろうとするものの・・・みたいな話だったような記憶はあるのだが。
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上映時間130分は長すぎる。
あと30分くらいは短く出来るだろう、とは思うが別に退屈はしないし、なかなか面白かった。
災害の原因はなんなのか、他の地域はどうなっているのか、というあたりをあえて切り捨てて説明しない、という描き方も効果的。
年末に、
「枯れ葉」とか
「PARFECT DAYS」とか
「ファースト・カウ」など、
見る側の受け取り方によってかなり見え方が変わるような、
いつもは使わない神経を使う必要があるような映画を続けて観て、
3本ともみな面白かったのだが、
年明けにこの「コンクリート・ユートピア」を観て、
こういう単純にストーリーを追って行けばいい映画も、これはこれで悪くないよな、という気持ちになった。
ただ、地殻変動的な災害とその被災者、ということで、イヤでも北陸の地震を想起させられてしまい、素直に楽しめなかったのはある。
さすがにちょっとタイムリーすぎた。
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「コンクリート・ユートピア」とは関係ないのだが、大きな災害が起こった後に見た映画、ということでちょっと思い出したことがある。
東日本大震災の、あれは翌日だったか二日後だったか、なにしろ大変なことが起こったわけで気持ちはザワザワしていたけれども、特にやることもないので(仕事は休みの日だった)、映画を観に行った。
クリント・イーストウッド監督の「ヒア・アフター」という映画。
この映画の冒頭が東南アジアの津波のシーンだった。
まあ別にそれがひどくショックだったという訳ではないけれど。
新宿の映画館で観たのだが、途中でけっこう大きな余震があったことを憶えている。
「ヒア・アフター」は、その津波のシーンがあるという理由で、そのあとすぐに上映打ち切りになってしまった。
イーストウッドの作品の中では評価は低い方で、酷評する人も少なくないのだが、私はとても好きな映画で、打ち切りになる前に映画館で観ることができて良かったと思っている。
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「コンクリート・ユートピア」は撮られたのが2021年ということ。
韓国映画に全然詳しくない私でも顔と名前が一致する数少ない韓国の俳優イ・ビョンホンと、「マーベルズ」にも出ていたらしいパク・ソジュンという俳優(ということはあのミュージカル惑星の王様役か)も出ている大作だし、もうちょっと早く公開されていればなあ、という気も。