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映画『ロスバンド / Los Bando』
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クリスティアン・ロー『ロスバンド』(2018、ノルウェー・スウェーデン、 94分)
こちらはカラッと軽快に楽しめて、万人にオススメできる青春映画。
改めてチラシを読むと、この監督さんは「子ども向け映画の名手」だそう。
確かに、納得。
私としては、単純に爽快感だけを得るには歳を取りすぎてしまった。けれど、例えば学生さんが友だち同士で観に行くのも楽しそう。
音楽への真っ直ぐな情熱
仲良し二人はロック・バンドを組み、大会出場を目指している。
ギターは上手いが、歌が絶望的な友人は、そのことを自覚していない。
そこでドラムの子がこっそりパソコンで修正し、応募するところが現代的でそつがない。
ベース募集の張り紙に反応して来たのはチェロを抱えた一人だけ。しかもまだ9歳。
ところが腕前は天才的と言っていい。
あと必要なのは、会場までの車を出してくれる運転手。
近所のレーサー見習いが、なぜか手のひらを返したように引き受けてくれることになった。
こうして始まる4人の珍道中。
ドタバタ・コメディ調で、勢いよく観せていく。
すれ違うそれぞれの思い
主役たちは一番上でも17歳と言っていたので、若いを通り越して幼く見える。
純粋そうだけれども、内側には彼ら・彼女らなりのわだかまりを抱えている。
両親の不仲、一方的すぎる恋ごころ、同級生たちからの冷たい仕打ち、父親に押しつけられた家業。
決して深刻には描かないが、ある意味では周りの大人たち以上に物事をよく理解していて、成熟していると思わせる。
本当のことは言わない優しさを持っていたり、孤独と上手に付き合っていたり。
道中で憧れの人に会わせようと画策するのも、友情からだ。
全てが噛み合うとき
そんな少年少女に対して大人の役者たちも、振り切った怪演で盛り上げる。
式に間に合わないと焦る花嫁、自制の効かない兄貴。
退職日をのんびり祝いたい老警官は、かつてない面倒に巻き込まれる。
その目つきが真剣になるほど、こちらは思わず笑ってしまう。
最後にバンドの音楽は人々に届くのか?
ぜひ4人の奮闘を見てあげてほしい。できれば劇場で。