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学校ICTの日常化を阻む元凶は「授業支援システム」ではないか?② ”ベンダロックインのそばにも授業支援システムあり”

前回に引き続き『学校ICTの日常化を阻む元凶は「授業支援システム」ではないか?』の連載として、2記事目を書きます。

前回の記事はこちらです。続けて読むとより分かるようにしていますので、併せて読んでいただけると嬉しいです。

また、今回も色々とお叱りがくるかもなので、改めて魔法の言葉を書いておきます。

この記事はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

よし、これで何があっても安心だ(本当か?)。では書き始めます。

学校のICT導入は安すぎるのか?高すぎるのか?

これまで書いたnoteのなかで、アクセス数がぶっちぎりに多かったのが「1台27万はぼったくりなのか?」です。

3/8時点で42,370 PV。他の記事より1桁多いアクセス数です。
元の以下の週刊誌記事が世間の関心が高かった、ということなのだと思います。

関心が高まった裏には「やっぱり公共調達は業者のボロ儲けが横行しているだろう」という心理があるのだと思います。
渋谷区の事例は、少なくとも自分が検証する限りはボロ儲けではない、という感じでしたが他はどうか。

結論をいうと、学校ICT導入の案件はちゃんと儲かる案件とかなり赤字の案件とで2極化しています。割合は感覚論ですが3:7ぐらい。

儲かる理由は、調達仕様が規定され公共調達で事業者が決まるから。
赤字の理由も、調達仕様が規定され公共調達で事業者が決まるから。
同じ理由で違う結論っておかしくないか?とツッコミがきそうですが、同じ仕組みでもやり方次第ではどっちにもなります
以下、簡単に解説します。

黒字の理由はベンダロックイン

黒字案件の要因の多くはベンダロックインです。
ベンダロックインについてはちゃんと書いてくれている記事が少なく、、

要は特定の企業(ベンダ)の製品やサービスに縛られてしまう(ロックイン)ことです。
上記のリンクでも書かれている通り、絶対的な悪ではなく(と私は思っています)、自分で管理をしない分コスト高になるリスクがある、ということです。

これに公共調達というルールが被さると、さらにシステムが高額化しやすくなります。
この辺りは業界的にはタブーな内容ですが、以前にもロイロの杉山さんが「公立ICT整備の商習慣」として記事を書いています。

上記の中身を簡単に図示化するとこんな感じ。

ロックイン図示化

・教育委員会の担当者はシステム詳しくないので誰かに任せたい(切実)
・A社がZ社の製品を元にした調達仕様案を教育委員会に提案
・A社に任せるとなんとかなりそうな気配だから提案を元に仕様策定
・その結果、Z社ロックインの調達仕様が公示される
・Z社はA社にチャンピオン価格(安い価格)、他社(B社)には通常価格で見積
・A社は差額を意識して入札し、当然ながら落札する

杉山さんも書いていますが、チャンピオン価格(特価とも言う)と通常価格の差が大きいとA社は勝ちやすく、儲けやすくなります。つまりは製品の価格より差額が重要になってきてしまいます。
もっと言えば、大きな差額が作りずらい定価の安い製品は提案されにくい状態になります。
安くて良いものが導入されるべきなのに、本末転倒な状況です。

そこで今回の記事のタイトル ”ベンダロックインのそばにも授業支援システムあり” です。
前回の記事で書いた通り、授業支援システムは学校ICT導入の前提となっています。既にコンピュータがコモディティ(一般)化して差別化が難しいので、授業支援システム=上記図のZ社部分で差別化をしよう、となることが多いのです。

結果、システム全体の価格が高止まりしてしまいます。
もっとお金をかけるべきトレーニングやサポートの費用、デジタル教材の費用がそれはもう圧縮され、現場での活用が難しい状況になってしまう
日常化に大事な支援が減る、という流れです。

通常、この「差別化しよう」は製品・サービスをより良くする好循環になるはずですが、少なくともこの市場の多くは悪循環の元になっています。
以下みたいな感じです。(またも悪循環画像ジェネレータ

悪循環_機能追加

①売る(売ってもらえる)には差別化が重要(=ロックインできるので)
②先生等の意見を聞きながら他社と差別化できる機能をつくる
③うまくいくと売れる
④味をしめて差別化機能を求めて先生等にヒアリング
⑤アレコレと先生がやりたいことを機能を追加
⑥うまくいくと売れる ⇒ ④に戻て永遠にループ

④から⑥がループで繰り返されるとこんな問題が起きます。

A. 機能が追加される一方なので、かえって使いづらいシステム
B. 機能が多くなって動きの重いシステム
C. 先生ヒアリングに偏り過ぎて、先生が管理する機能が増えがち
D. (行き過ぎると)使えるかどうかより見映え重視で機能を追加

「こんなことになったら採用されないでしょ」と思っている方もいるかもですが、そんなことはありません。

一般競争入札(内容は後述します)では、示された仕様に合致またはそれ以上かだけが問われるので上記のA~Dは以下のa~dを産みます。

a. 調達仕様の要求が機能仕様がほとんどなので、機能が多い方が高評価
b. 非機能仕様はほぼ問われないので、動作重いは関係なし
c. 管理機能はリスク低減と管理欲を満たされるので高評価
d. そしてこの記事の1回目の通り見映えが持てはやされる土壌もある

上記の結果、それなりに高い金額を払って、日常活用が難しいシステムが導入されてしまうのです...。
そんなループが続いているのです(血涙)。

赤字の理由は過剰な価格競争

そして赤字の理由です。
学校のICT導入の多くは、一般競争入札方式(最低価格)で行わることが多いです。
一般競争入札方式(最低価格)とは何かは、以下の政府電子調達の用語集から引用すると以下の通り。

一般競争入札方式(最低価格)
あらかじめ調達の概要等を示した公告を行い、競争参加資格を有する入札参加希望者により入札を行い、最低の入札金額(見積金額)で応札した者を落札者とする入札方式をいう。

調達仕様が公示され、それに合致、または上回る内容で価格競争を行い、最も安価な事業者が受注する仕組みです。
当然、事業者は受注したいのでコスト削減を行います。パソコンメーカーもアプリを提供する事業者も半値八掛け二割引が当たり前、人件費もびっくりするぐらい安くなっていく。さながらチキンレースです。

結果、机上計算では赤字にならないギリギリラインで応札し、実態は机上のようにうまくいかなくて赤字に...。こんなのがこの業界のあるあるです。
適正な利益もないので、問題が生じたときに融通する余力もない。
結果、やはりしっかりサポートができない状況に追い込まれてしまいます...。

本来は安く調達できたのであれば、余った金額をそういったサポートに回せれば良いですが、、、自治体は予算主義的な体質が多く、そう柔軟にはいかないところがほとんどです。

公共調達制度の功罪

この辺りは公共調達制度の功罪と言わざるを得ません。
多すぎる黒字もかなりの赤字も良い状態とは言えず、適切な黒字が継続的な経済活動の前提です。
そういう案件がほとんどないことは本当に問題です。

誤解を恐れずに言えば、赤字で入札してしまう事業者やベンダロックインをする事業者が悪いわけではなく、ある意味でルールの範囲(一部で逸脱している人いるかもですが)での経済活動です。
要因を辿ると調達担当者のリテラシの問題ですが、一方で数年で異動する担当者に高度な知識を求める方が筋違いですし、もし総合評価方式とかで調達しようとしたら膨大な手続き(仕組みづくりとかスタンプラリーとか)が必要でムリゲーだったりします。

こういった複合的な制度疲労を放置してしまっていることが、学校ICTのシステムを安くしすぎたり、高くしすぎたりして、使い辛いシステムの導入になっています。

転換点かもしれない「自治体ピッチ」

GIGAスクールの場合は、3/18と3/27に「自治体ピッチ」なるものが行われます。前回の記事でこの「自治体ピッチ」の説明会について、私も最速解説を書きました。

ここではYouTubeライブのオープンな場で教育委員会向けにパッケージ提案が行われ、(文科省の要請で事業者もできる限り)提供価格が提示されます。
クローズな場ではなく情報が公開されることで、この市場の在り方も転換する可能性があります。
チャンピオン価格が存在せず、学校現場にとって本当に使い勝手の良いシステムが選ばれる市場に。

ググってみたら既にYouTubeライブのURLが公開されていました。
教育委員会の担当者は、是非ご覧いただき、自分の自治体にあった製品・サービスを選んでもらえたらと思います。
もしかしたらここから変わっていくのかも、と期待をしています。

自治体ピッチ YouTube Live URL

3月18日:https://www.youtube.com/watch?v=P-ztF6wHvto
3月27日:https://www.youtube.com/watch?v=hmry42X9lXE
※3/24も実施予定とのことで続報あれば共有させていただきます
※私も3月18日の11:05-11:20で登壇予定です

次回予告

なんか書いているうちに、タイトルとは逸れた内容になってしまったような…。でも個人的には大事だと思っている部分なので、長々となってしまいました。

私自身も公共入札制度の範囲でこういうことをやっていた身です。
自分なりに制度のなかで、どこまで活用に、効果に力点を当てられるかをやっていたつもりですが、限界を感じることも多く、また当たり前ですが自分が関われない案件の方が圧倒的に多い。
そのシワ寄せは結局、学習者や先生、学校現場にいってしまいます。
もうそれが嫌で嫌でしょうがなかった。

ずっとそれをどうにかしたい思い、裏で色々仕掛けていました。
その1つの結実が自治体ピッチでもあり、リスクもあるうえで書いているこのnoteだったりします。

次回の3回目は『授業支援システムも転換点がきている』として、私なりに授業支援システムの必要性と果たす本来の役割について、「学校ICTの日常化を阻む元凶は「授業支援システム」ではないか?」というタイトルとはちょっと矛盾しているようなことを書いてみたいと思います。

ではまた。

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