見出し画像

【最速解説】GIGAスクール構想 補助金交付要綱

前回のGIGAスクールにおけるインターネット接続 ローカルブレイクアウトのススメが、予想よりもアクセスが多かったので、ホッとしています。
校外ネットワークの設計がGIGAスクールの肝だと思っているのですが、補助金の対象ではないことと、ニッチなジャンルになるので興味を持ってもらえないのでは、と怯えていました。良かったです。

そんな中、2/21にGIGAスクールの補助金交付要綱が自治体に送付されたようです。まだ文部科学省のWEBにはUPされていないようですが、勝手に最速解説してみます。(セキュリティポリシーガイドラインに続いての最速解説シリーズ?)

「お前はどの立場で国の通知文を解説するのだ」というツッコミがきそうですが、、、
自分が理解したサマリを共有することで、各自治体の方々もこれを読んでから見ると楽になるかも、という思いで書いただけですので、非公式解説としてお許しいただけたらと。
※できるだけ短い解説を心掛けていますが、読了に15分ほどかかりそうな分量(7000字弱)です。予めご容赦を。

どんな資料が送付されたのか

資料は以下の13種類のようです。a~mの項番はこちらで勝手につけています。

a. 公立学校情報機器整備費補助金交付要綱の制定について(通知)
b. 公立学校情報通信ネットワーク環境施設整備費補助金交付要綱の制定について(通知)
c. 公立学校情報機器整備費補助金交付要綱
d. 公立学校情報通信ネットワーク環境施設整備費補助金交付要綱
e. <情報機器整備>別記様式1~13
f. <ネットワーク環境整備>別記様式1~13
g. <情報機器整備>【申請書添付様式】(1)購入(2)リース
h. <ネットワーク環境整備>交付要綱添付様式
i. 【申請書添付様式】(3)都道府県事務費
j. 公立学校情報通信ネットワーク環境施設整備費補助金事業概要
k. 自治体の事例(仕様記載版)
l. 【別添1】「GIGAスクール構想」 Q&A
m. 【別添2】GIGAスクール構想の実現に向けた計画等確認書

うーむ、多い。
これだけの行政文書を作るのってすごい骨が折れそう。自分なら骨よりも心が折れるかも。文科省の中の人、寝ているのかしら。官僚の働き方改革は遠そう(遠い目)。

各文書の概要解説

まずはざっくり、各文書の概要解説してみます。

aとbは通知文。頭紙ですね。情報機器整備とネットワーク環境整備の補助やりまっせ、的な。

cとdが今回の本命、補助金交付要綱です。
4.5万円の情報端末整備が「公立学校情報機器整備費補助金交付要綱」、1/2補助の校内ネットワーク等整備が「公立学校情報通信ネットワーク環境施設整備費補助金交付要綱」です。

eとfは申請・変更・報告・中止などなどの手続き関連の書類一式。押印必須なんで決裁が大変そう。

gとhが「情報機器整備」「ネットワーク環境整備」の中身を記載する書類。学校ごとで記載要なので、結構大変そうです(これまでの調査報告で代替できそうな部分はありますが)。
これらと「l. GIGAスクール構想の実現に向けた計画等確認書」が資料作成作業の中心になりそうです。

iはとりまとめをする都道府県の事務費申請の書類。今回は基礎自治体向けの解説のつもりなので、詳細解説の対象外にします。

jはネットワーク環境整備の条件等が要綱より詳細で記載されています。「l. 【別添1】「GIGAスクール構想」 Q&A 」とセットで、実際の計画策定の条件確認として大事な文書です。

kはネットワーク環境整備の積算例の共有です。2次調査の結果(P29)半数近い学校で1500万円以上の整備費がかかるという申告があったので、他自治体の積算状況の共有でしょうか。とにかく時間がないので、各自治体・見積をしている事業者も大変です...。

lは事業のQ&A。ある意味で、要綱よりも実際の計画策定では重要になるぐらい、詳細が記載されてきています(しかも随時追記・更新中)。条件書としてはこっちが本命という感もあります。

mは申請にあたっての計画書。この予算規模の申請書にしては項目が少なく簡素にしてくれているように感じます。でも、きちんと考えて書かないといけない内容ですね。


休憩①

ふぅ、文字だらけだと読む気なくなりますね...。

さて、気を取り直してこの後は、情報量が多くて解説が必要そうなc, d, g, h, j, l, mについて、それぞれ詳細解説してみます。

「c. 公立学校情報機器整備費補助金交付要綱」&「d. 公立学校情報通信ネットワーク環境施設整備費補助金交付要綱」

今回の本命、補助金交付要綱です。
情報機器整備とネットワーク環境整備で分かれていますが、結構同じことが書いてあります。重要そうな部分をかいつまんで箇条書きしてみます。

・申請は都道府県経由で
・【情報機器整備のみ】リースの場合はリース事業者と一緒に共同申請
・申請処理に要する時間は、申請書が都道府県に到着してから文部科学省に届くまで標準で30日
・交付決定通知に要する時間は、申請書が文部科学省に都道府県に到着してから標準で30日
・もし取り下げする場合は、決定通知から30日以内に
・調達は一般競争が原則(価格競争という意味ではなく、指名や随意は原則外という意味)
・変更や中止、事業の遅延、状況報告の要求があったら指定様式で速やかに連絡
・事業完了後30日以内、または2021年4月10日のいずれか早い日までに様式10で実績報告
・経理関連の証跡書類は年度終了後5年間保存

交付決定までのスケジュール感が共有されており、申請から交付決定までは、都道府県のとりまとめと文部科学省の審査を入れると標準で60日となっています。例えば、2月末に申請すると標準だと4月末、ということ。
ただ、これも各都道府県がどのようにとりまとめるのか、などに依存するのだと思います。実際のスケジュールは都道府県ごとに変わるのかも、です。

また、要綱ではそれぞれの補助の対象範囲が記載されています。

情報機器整備
・地方財政措置算定分(児童生徒3人に1台)を超え、児童生徒1人1台分(児童生徒3人に2台)の学習者用コンピュータ等の新規整備又は更新に要する経費
※情報機器の運搬費、情報機器の設置・据え付け費を含む
・補助率は1台4.5万円を上限(1台4.5万円を下回る場合は実費)
※離島やへき地は+2%
ネットワーク環境整備
・小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校に校内LANを新設又は更新するために必要な経費
・小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校の前期課程並びに特別支援学校の小学部及び中学部に電源キャビネットを校内LAN整備と一体として新設又は更新するために必要な経費
・補助率は2分の1

情報機器の対象は義務教育段階。1人1台のうち、2/3にあたる部分。要は地方財政措置算定分は国として予算化済みなので、ということ。
ネットワーク環境整備は、校内LANは小・中・高だけど、電源キャビネット等は情報機器整備があるから必要なものなので、義務教育段階のみ、という感じです。
この辺は今までも情報が出ていた部分ですが、おさらい程度で。

g. <情報機器整備>【申請書添付様式】(1)購入(2)リース

こちらは情報機器整備に関して、どの学校・学年に何台・いくらで・いつまでに納入予定か、を記載するシートです。
端末価格や納入完了予定日などは、まだまだこれからだと思うので、暫定的な金額や日程を入れるしかないのかも。
購入とリースでシートが分かれていて、リースの場合は事象者名を入れる必要があります。
申請までにリース会社を決めるのはかなり困難では...。リースを選択する場合は、早めに事業者に声掛けしつつ、選定を行わないといけなそうです。

h. <ネットワーク環境整備>交付要綱添付様式

こちらはネットワーク環境整備に関して、どの学校・どの工事を・いつかいつまでに・いくらで・どれぐらいの広さ・機器があるなら台数で、を記載するシートです。こちらは情報端末整備と違って、記入例があります。
これまでの調査の延長で記載できる部分もあるのでは、とは思いますが、結構大変そう...。
費用や工事期間などは、まだまだこれからだと思うので、暫定的な金額や日程を入れるしかないのかも。

j. 公立学校情報通信ネットワーク環境施設整備費補助金事業概要

ネットワーク環境整備に関し、要綱より具体的に条件が記載されています。結構大事。
ちなみにこの資料だけコピペができない形式...。うーん、いじわる。
対象範囲は以下のように記載されています。
まずは校内LAN工事

・校内LAN工事
校内LANを新設又は更新するために要する経費とする
a. 幹線、支線ケーブル(公共ケーブルからの引き込みを含む。)、サーバー、ルーター、ハブ、情報コンセント、ソフト(校内LANとして機能するための最低限必要なものに限る。)等。
※本工事で使用するLANケーブルについて、基幹部分については原則10Gbps以上(カテゴリー6A以上)とする。
※校内LAN整備の施設整備と一体として無線アクセスポイントの整備を行う場合、無線アクセスポイントも含めて補助対象とする。
b. 情報化に対応するため必要となる内部改造工事(電源工事等)及び校内LAN整備に関する部分仕上げ等の撤去・復旧に要する経費
c. 校内LAN設計・調査・ネットワーク機器設定・工事期間中のPC等端末の調整について、当該事業と一体不可分となる初年度に必要となるネットワークの設計・調査等の経費を附帯工事として対象に含む。

校内LANについて「基幹部分は原則10Gbps=カテ6A以上」と明記されています。この書きっぷりだと、支線系はカテ6でなくても良さそうな書きっぷりです(勿論、カテ6にできるならその方が良いでしょうけど)。

また、ネットワーク環境整備の事業のなかで、PC等の端末の調整は附帯工事として認める記載があります。
情報機器整備は、運搬・設置・据付までのため、設定(≒現地で電源を入れて端末の設定をすること)は対象範囲外になっています。ただ、ネットワーク環境整備側で一定の対応が認められそうです。
別の資料ですが「GIGAスクール構想の実現に向けた1人1台端末整備 基本モデル例(P18)」において

校内LANを通じて上記のような学習用ツールを端末から利用するための設計/設定については、初年度校内LAN環境構築に必要な費用として、「「GIGAスクール構想の実現」に向けた校内通信ネットワーク整備事業」にて整備するものとする

とあるので、学習系ツールの設計/設定も一定の対応を含めることができそうです。
ネットワーク環境整備はR2年度のみなので、やはり情報機器整備とセットで申請した方が良さそうです。

続いて電源キャビネット整備工事

・電源キャビネット(①校内LANとともに一体として整備する学校、②既に1Gbps以上ネットワークが整備されている学校、又は③LTEによる対応を計画又は対応済みの学校を対象)整備工事
電源キャビネットを校内LAN整備と一体として新設又は更新するために要する経費とする。
a. 電源キャビネット整備に伴う本工事費 ※建物に固着したもの
b. 電源キャビネット整備に必要となる内部改造工事及び電源キャビネット整備に関する部分仕上げ等の撤去・復旧に要する経費
c. 当該事業と一体不可分となる附帯工事

1文目では「②校内LAN整備済み」や「②LTE対応」の学校もOKのように見えますが、2文目では「校内LAN整備と一体」と記載されています。多分、1文目が正しそう。
電源キャビネットは建物固着が条件として記載されています。
校内LNA工事も大変ですが、色々聞いていると「電源キャビネットの製造・提供が間に合うのか」が一番難しそうな感じです。
色々と意見や異論・電源容量問題もあると思いますが、こういう手段も...。1人1台であれば、持ち帰り前提にして充電、という選択肢もあります。
運用面で超える壁が多数ありますが、電源キャビネットの供給不足はほぼ確実なので、色々と考えておく必要はありそうです。

また、補助額の条件としては、上限額:学校単位で3千万円、下限額:学校設置者単位で400万円。1学校は3千万円までで、教育委員会単位では400万円以上ですよ、と。

l. 【別添1】「GIGAスクール構想」 Q&A 

こちらの資料は日々更新されていて、補助条件が明確になったり、一部変更になったりしています。ある意味で、条件確認で一番重要な文書かも、です。
Q&Aは全部解説をすると膨大な量になるので、今回の更新箇所で重要そうな部分を抜き出してみます。

Q5 端末管理(MDM)ツールは端末の補助に含まれるか。
A5 端末管理(MDM)ツールについては、標準仕様書でお示しした機能は、学習者用コンピュータとして適切に運用するために最低限必要なものと考えております。自治体において、端末管理( MDM )ツールを学習用コンピュータの必要な機能とし、「学習者用コンピュータ」として調達する場合は、補助の対象とします。(学習者用コンピュータと別個に調達する場合のように、単品(有償)として扱われるものは補助の対象外となります。また、端末を学習者用コンピュータとして適切に運用するために最低限必要なものに限ります。)。

情報機器整備に関し、説明会等でMDMが対象になる旨は発表されていましたが、正式に補助の対象になっています。
少し気になるのは

「学習者用コンピュータ」として調達する場合は、補助の対象とします
別個に調達する場合のように、単品(有償)として扱われるものは補助の対象外

の辺りの記載。
「学習者用コンピュータ」とのセットパッケージみたいなものが想定されているのでしょうか。

また、リース契約の場合の流れも追記されています。

リース

これを見ると、前述の通り交付申請の前にリース事業者の決定が必要な様子...。リース事業者を決めるには、普通に考えると機種選定などもしないと難しいでしょうし、企画競争での選定を想定(Q&Aの18)とあるので、時間的にはかなり厳しそうです。

m. 【別添2】GIGAスクール構想の実現に向けた計画等確認書

最後に計画等確認書、です。
最初に各項目のチェックリスト。この1枚目にも押印箇所があるのでお気を付けを。

そして、以下の各項目について計画を記載していくことになります。

(1)ICT活用計画及び達成状況を踏まえたフォローアップ計画
(2)通信ネットワーク環境整備計画
(3)学習者用コンピュータ配備計画
(4)広域・大規模での共同調達実施計画
(5)計画の取扱い等に関する事項

記載例があるので、それを見ながら、自分たちの自治体の計画を記載していく感じでしょうか。
このタイミングで共同調達するかどうかを聞かれるのは、まだ未整理の都道府県が多いので結構キツそうです...。
時間がないので資料作りが本当に大変だと思いますが、折角なら記載した計画をKGI/KPIにセットして、整備後に運用できると良さそうです。

おわりに

とりあえず、ざっと読んだうえでの解説は以上です。長くなってしまい失礼しました...。
いやー、一気に書いて疲れました...。もう以下みたいな感じになっています。

放心

(近所の地域ネコ。コイツ、すごい人懐っこくてカワイイです。)


最後に、なんでこんなの書いているか、について記載しておわりにします。

本来、今回のような情報は、企業としては先行取得者として抱え込んでおくのが吉です。情報の非対称性を活かして、儲けることができるので。

一方で、そのやり方は情報が偏るので全体最適にはなっていません。

今回のGIGAスクールを通じて目指す社会像は、脱工業化社会だと認識しています。

GIGAスクールを推進しようとしている人たちのなかでも、以下で書かれているような「修正された工業化社会」を目指す人と「真の脱工業化社会」を目指す人の2パターンがいるように感じています。

修正された工業化社会を目指す人は、あくまでポジションチェンジを狙う人で、真の工業化社会を目指していない。
自分もそうなりがちなので、自分が得たコトやモノを広く共有するよう心掛けるようにしていきたいと思っています。
noteを始めたきっかけもそうですし、前回のローカルブレイクアウトを伝えたかったのも、自分のこれまでのやり方への戒めなのかも、です。


ということで、今回は以上です。

なんか真面目なのが続いたので、次はマサルさんミルクボーイくらい、くだらないの書きたいっすね。もしくは輪をかけて深刻なヤツとか。

ではまたー。


※今回は自治体担当者向けに書いたので、資料はお手元にある前提で記載しています。もしこれらの資料が手元になくて、何か悪い目的以外で見たいという方はこちらに置いておきます。
ただ、まだ文部科学省のWEBで共有されていない内容なので、アクセス権限は付与していません。
必要でしたらu17da522(アットマーク)gmail.comかFacebookTwitterのDMで、どなたなのかと共有権限付与するGoogleアカウントをご連絡ください。

【追記】
以下の公式に公募要綱等が追加されました。


いいなと思ったら応援しよう!