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【現場から声をあげて欲しい】デジタル教科書の設定を楽にしたい(切実)

前々回に引き続き、デジタル教科書のことを書いてみます。
今回は色々突っ込んで自分なりの考えを書いていますが、あくまで個人の意見として書いていますのであしからず。
そのうえで、学習eポータル:まなびポケットの責任者として対応していくことも書いています。
※所属組織を代表した発言ではない、ということでご理解を

「デジタル教科書、利用するまで大変」問題

今年4月ごろにSNSでそれなりに話題になった件。デジタル教科書、利用するまでがかなり大変、という話です。

しまいにはこんなのつくられる状況に…。

https://60th.gendai-shinsho.jp/maker/books/FBivRTFUkIOrLmkwhn5YL

結構、SNSでは火があがっていたのですが、もう半年前はなので過ぎ去ったこと?
いやいや、来年度も新規導入・追加するなら当然必要、そうでなくとも新入生やライセンス割当などの変更は発生します。
先生の働き方改革と言われて久しいなか、これはどうにかせねばならない案件。

なんでこんなに大変なのか?

それは、デジタル教科書のプラットフォームが複数あり、それぞれに登録・設定が必要だからです。

例えば、文部科学省が行っている学習者用デジタル教科書の事業は「小学校5年生~中学校3年生の英語及び算数・数学」が対象ですが、その範囲でも、7つのプラットフォーム(Lentrance Reader、つばさブック、まなビューア、みらいスクールプラットフォーム、超教科書、エスビューア)に分かれています。

上記の文部科学省のサイトで、各プラットフォームごとのアクセス先、登録・設定方法が紹介されています。

画像化するとめっちゃ小さくなる、、それぐらいリンクの数がある…。

上記はあくまで文部科学省の学習者用デジタル教科書事業の範囲。自治体独自で購入などしていると、さらに対象が追加される。

そりゃ、現場から切実な声があがります…。

具体的にはどんな作業が必要?

学校現場がやらなくてはいけない作業は

  1. 名簿作成

  2. 名簿登録

  3. 閲覧権限設定(ライセンス割当)

  4. グループ・クラス設定 ※これは任意

  5. アクセスするURLの配布

です。7つそれぞれのマニュアルを確認しましたが、用語は違えどやることはほぼ同じ。ただし、1-2, 5はビューアごと、3-4は学年・教科ごとに必要です。

詳しい人は「あれ?デジタル教科書の登録って国が音頭取って標準化いていなかった?」って思うかも。

いやいや、それって「1. 名簿作成」の部分だけなのです。なので、1は国のフォーマット使えば1回でOK。文字で書いても分かり辛いので、図にするとこんな感じ。

CSVでの名簿登録ってやってみると結構大変。問題あるとエラーだけど、何が問題か分かり辛い。
そもそも、どの出版社がどのビューアか、見比べるのも大変。実は指導者用の場合は、早期利用のためにクーポンつかって仮発行、とかまであったりして、、、

これ、全国の学校でどれぐらい時間かけているのか。デジタル庁の調査実証報告書によると

現状、学習アプリの年次更新作業そのものにおいては、各学校で1 アプリあたり、およそ2 時間 人程度の工数を要しており、これを削減可能であると判断している。
(中略)
全国の小中学校およそ29,000 校において、学習者用デジタル教科書は、1ないし2アプリがすでに利用されていることから、各学校で設定に要している時間を延べ時間に換算すると、6~12万時間/人の工数を削減可能と試算できる。

「事業II 学習支援システム‐複数の学習アプリ間のデータ連携調査研究」より

とあります。

全国累計だと先生方の稼働が6~12万時間!?

先生はクソ忙しいって散々言っているだろ。ありえねー。(口が悪い)

むーん。学校現場から「これなんで1つにできないの(怒)」って声が出るのは当然の感想だと思います。


でも1つにする方法、あります。


学習eポータルをハブにして連携する方法

昨年度行われたデジタル庁「令和5年度教育関連データのデータ連携の実現に向けた実証調査研究」にて、デジタル教科書と学習eポータルが標準規格で接続することで、前述した学校現場での登録・設定が不要になることを実証しています。

上記の実証Ⅱの成果なのですが、概要図としては以下みたいな感じ。

実証事業報告書(概要版)より

むーん、この画像だとどういうことが分かり辛いですよね。ざっくり画像で説明するとこんな感じ。

箇条書きすると

  • MEXCBTや教材等の利用のために登録していた名簿情報を活用
    →「①名簿作成」「②名簿登録」が不要になり、「④グループ・クラス設定」が必要な場合も不要に

  • 学校設置者の依頼に基づいて、事業者側で利用する学年のみリンクを設定
    →「③閲覧権限設定(ライセンス割当)」と「⑤アクセスするURLの配布」が不要に

という感じです。

これで学校現場は何もしなくても利用できるようになります。
つまりは、ビフォー・アフターを比較するとこんな感じ。

いや、先生は学校で寝てないだろ

この方式が実現すれば学校現場の作業はゼロに!
先生方に無用な仕事をしてもらわなくて済む!!

実現に向けたハードル

ではなぜ実現していないのか。実現に向けたハードルは大きく3つです。

  1. 学習eポータル側が接続してくれるか/設定を行ってくれるか

  2. 教科書側が接続してくれるか/運用方法を変えられるか

  3. 諸々みんなでこの方式を合意して進められるか

詳細書くとそれで1本note書けちゃうので、それぞれざっくり補足。

学習eポータル側が接続してくれるか/設定を行ってくれるか

学習eポータル側からすると、接続は各社ウェルカム。
設定についてはそれなりに稼働はかかるので、お金がかかります。

でも、前述の通り全国累計だと先生方の稼働が6~12万時間かかるのですよ!
先生はクソ忙しいって散々言っているだろ。ありえねー。(2回目)
申込を誰かがしっかりまとめてもらえたら、こっち(事業者)でやったら60時間で済むよ。1/1000。

そのためのプログラムをつくらないとだし、申込をしっかりまとめたり受付するとか大変そうなので、もっとかかるかもですが、、
でも、6~12万時間は絶対にかからない。必ず1/100以下にできる。

なので、自分がやっているまなびポケットは、国事業の学習者用デジタル教科書については、設定を無償でやります。接続にかかるコストもずっと無料にします。

中央で一括でやると現場が大幅に楽になるなら、やるしかない。ましてやそれが先生の稼働削減ならなおのこと、です。

他社のことを勝手に書けないですが、他の学習eポータル事業者も、多かれ少なかれ同じような気持ちのはずです。

教科書側が接続してくれるか/運用方法を変えられるか

教科書会社にとっては
①接続のための開発が必要
②閲覧権限設定を学習eポータルに委ねる運用に変えられるか
が主な課題になるはずです。

①については、「学習eポータル標準モデル」に則って実装することで、少なくともデジタル教科書の利用においては、学習eポータルごとの開発上の差異はなくなります。

「学習eポータルが複数あるので接続方式もバラバラなので開発が大変」という話をチラホラ聞きますが、それは標準の範囲外の部分で違い。
デジタル教科書については、連携データが標準の範囲なので各社違いなく接続が可能。なので開発上の差異は出ません。
ただ、開発費用がかかるのは確か。

また、②については契約したライセンス数通りに設定されるのか、の問題。
でもデジタル教科書の場合って、対象学年からのアクセスに絞ればほぼ大丈夫なはず。この辺は権利も絡むので簡単ではないのですが、条件合意と運用方法の整理によって実現していくもののはず。

一方で、教科書会社にとっても良い面も。
アカウント管理を手放せるのは嬉しいことでは
、と思っています。多分、アカウント登録関連での問合せが4月とかはものすごかったはず。アウトソースできるならしたい、というのが本音では。

なので、アカウント登録・管理周りの対応費用と、開発・運用変更の費用の比較なのかな、と思っています。

諸々みんなでこの方式を合意して進められるか

そして実は一番難しいのはココなんじゃないかと。
誰が受付して、どうやって学習eポータルや教科書会社に情報共有するのか、などなど。
「申込を誰かがしっかりまとめてもらえたら」と前述しましたが、これがなかなか大変。
本当は国側が音頭とって・予算確保してやって欲しい気持ちがありますが、、、それを待っていると間に合わない。

なので、少なくとも自分たちのできる範囲、まなびポケットは、学校設置者からの受付、接続・表示設定、教科書会社への情報共有を無償でやります。

やることは以下みたいな感じ。

まなびポケットって、1,000を超える学校設置者(教育委員会・学校法人)で導入されていて、14,000校で利用されています。そんな数の申込できるのか、設定できるのか。

知るかボケ、やったるわ。
だって、全国の先生方の稼働が6-12万時間ですよ。ありえねー。(3回目)

じゃあ、これをどう周知するのか、などなど考えることはありますが(これこそ国にやって欲しい)、一番コストかかって面倒な受付処理が解決できればなんとかなるはず。

現場から声をあげて欲しい(切実)


「そこまでお膳立てできてるなら、国や事業者とかでうまくやってよ」
という声が出てきそうですが、、、いや、本当にそうだと思います。気持ち分かります。

でも、実は1年以上、この条件も開示してあらゆる方面と調整していますが、うまくいっていません。
理屈や筋は通っても、多くの人や団体が関わるやり方を変える・運用方法を変えるってそう簡単じゃない。
一部で同じ方向を向いて準備してくださっている方もいますが、全国対応を考えると全く足りない。
単に自分の力不足とも言えます。ぐぬぅ、申し訳ない。

自分の力では「国や事業者とかでうまくやってよ」はできなそう。なので、学校現場の皆さんを頼りたいです。
今ならまだ、来年度の4月まで6か月あります。現場で奮闘する先生方からの怨嗟の声を、全部じゃないけど減らせるかもしれない。
現場から声があがれば、変わるのでは?という一縷の望み。

自分は妻も教員(非常勤)なのですが、めっちゃ頑張っています。
「最近の先生ヤバい」みたいな報道もありますが、多くの先生はめっちゃ現場で奮闘している。
なので、無用な仕事を減らせるのであれば何とかしたい。自分にできることがあるならやっておきたい。
でも1年以上かなり真剣に取り組んでみましたが自分の力ではダメそう。

なので、皆さんから声をあげてもらえないでしょうか?

おわりに…何かのきっかけになることを願って

なんか、4年前の「ローカルブレイクアウトのススメ」以来、感情的な書きっぷりになってしまいました。

上記の記事は、それなりに学校からの直接接続が広がるきっかけになったのだと自負しています。

今回の記事も、何らかのきっかけになってくれたらと願って書いています。
全部は無理でも一部でも、来年度は無理でもそれ以降でも、次に繋がることを願っています。
※本当は署名とかの仕組み用意しておけば良かったのですが、、、

ここで書いたこと以外にも、議論・整理しないといけないことがありますが、そもそもこの課題が公になっていないので、まずはそのきっかけになればと思っています。
本件も関わる方々が怠けているか、というと全くそうではなく、それぞれの範囲で努力しています。
でも、言い方悪いですが個別最適であって全体最適じゃない。
ましてや、そのシワ寄せが学校現場にいく方法を選択するのは悪手中の悪手。ダメ絶対。

なので、ここまで読んでくださった方。もし「これは進めた方が良いかも」と思ったら、SNSなどでシェアしてもらえないでしょうか。
学校現場から、保護者の立場から、なんか関係ないけどヤバそうだから、などなんでも良いので、意思決定に関わる人に声が届くことを願って。


うーん、なんかアツくなってしまったので、今日はこの辺で。
次も別観点でのデジタル教科書のこと書こうかな。

ではまたー。

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