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「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」世界遺産登録から時事問題を考える。

 5月10日、ユネスコの諮問機関が「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」に対して「登録は適当」とする勧告を出しました。世界自然遺産の正式な登録は7月に行われる会議になりますが、「登録は適当」と判断して登録されなかったケースは稀であることから、登録はほぼ決まりと考えてよいです。

参考:世界遺産登録の記事

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE1093E0Q1A510C2000000/
「奄美・沖縄」世界遺産へ 再挑戦実り登録勧告: 日本経済新聞 (nikkei.com)

 2020年は新型コロナウイルスの影響で世界遺産登録の会議が開かれませんでしたが、2010年代はほぼ毎年世界遺産が登録され、中学受験で扱われてきました。

参考:日本の世界遺産

https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/sekai_isan/ichiran/
日本の世界遺産一覧 | 文化庁 (bunka.go.jp)

 では、中学受験では世界遺産登録を基にどのような問題を出してきたでしょう。今回の登録を例に来年の中学受験でどのような出題が考えられるか、まった中学受験における時事問題の扱い方を通して見ていきます。

1,「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の登録について


 
 ではまずは世界自然遺産の登録がほぼ決定的な「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」について見ていきます。ここではポイントをかいつまんで紹介します。詳しくは環境省のHPを見てください。

参考:環境省のHP

http://kyushu.env.go.jp/okinawa/amami-okinawa/
環境省|奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島世界自然遺産推薦地 (env.go.jp)

ポイントは以下の通りです。
①登録地が、奄美大島・徳之島(以上鹿児島県)、沖縄島北部・西表島(以上沖縄県)
②多様な生物が生息しているのがポイント。特に有名なのがヤンバルクイナとイリオモテヤマネコ
 この2つを押さえておけばよいでしょう。もし登録が決定されれば知床(北海道)・白神山地(青森県・秋田県)・小笠原諸島(東京都)・屋久島(鹿児島県)に続いて5例目になります。
 では次に中学受験では今回の世界遺産登録をどう出題するか見ていきましょう。

2,「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」からどう出るか?

(1)奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島自体の出題は少ない?

 まず注意して欲しいのは、中学受験の時事問題でニュースそのものを詳細に聞くことはないことです。少し語弊のある言い方になりますが、
「秋に出版される時事問題集には覚えなくてもよい情報が多い。」
と言えます。
少しオブラードに包んで言うと、
「優先して覚えなくてもよい情報を多く掲載している。」
になります。つまり、時事問題集の内容を事細かく覚えようとするよりも、「鎌倉幕府の主な執権」や「日本国憲法第9条」を覚えた方が入試では得点につながると言うことです。
 この点については、去年noteに書いた記事を参考にしてください(2021年版はこれから作成します)。

2021年入試の時事問題を考える|中貴社|note


 今回の登録についても同様です。おそらく秋に出版される時事問題集では登録地に生息している動植物を多く掲載することでしょう。しかし、それらの多くは入試に出る可能性が極めて低いです。それよりも、今までに習ってきたことを覚え直した方が効率的です(※)

「中学受験の社会で点を取るためには何が必要か」を前提に話していることを強調しておきます。中学受験、特に時事対策に関係なければこうしたことは言いません。しかし、時間が限られた中で細かいことを全て覚えるのは難しいですし非効率的です。覚える優先順位を考えての発言であることをごどうか理解ください。

では今回の登録に直接関わることで出題されるものは何でしょう。おそらく先述の登録地の島とそれらに生息するヤンバルクイナとイリオモテヤマネコくらいでしょう。また、今回登録された島の位置関係が出るかもくらいです。それ以外は出題される可能性は極めて低いです。
重ねて言いますが、そこに生息する動植物に執心するよりは、今扱っているテキストに太字で書かれているものを覚え直す方が効率的です。

(2)予想される出題

 それでは実際にどのような出題が考えられるでしょう。世界遺産に関する問題は大きく2つの傾向に分かれます。
①日本の世界遺産全般
②登録された世界遺産の地理・歴史

 それぞれ見ていきます。まず①ですが、現在日本の世界遺産は23で、今回の「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」が登録されれば24になります(さらに「北海道・北東北の縄文遺跡群」が登録されれば25になります)。数的にも入試の大問で扱うにはちょうどいい量です。そのため、これから世界遺産の学習をする生徒はそこで日本の主な世界遺産を覚えるようにしてください。

参考:現在の世界遺産(外務省)

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/culture/kyoryoku/unesco/isan/world/isan_2.html
我が国の世界遺産一覧表記載物件|外務省 (mofa.go.jp)
※ 「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」はまだ掲載されてません。

一応、例題として2年前に作った問題を載せておきます(解答は不掲載)

22_百舌鳥古市古墳群世界遺産登録_日本の世界遺産_1

22_百舌鳥古市古墳群世界遺産登録_日本の世界遺産_2

22_百舌鳥古市古墳群世界遺産登録_日本の世界遺産_3

22_百舌鳥古市古墳群世界遺産登録_日本の世界遺産_4

 次に②ですが、地理と歴史に分けて考えます。
 地理で考えられる出題は以下の通りです。
・奄美大島と沖縄島の島の形
・沖縄県の産業(農業・観光業)

 島の形は沖縄島と択捉島は見た目が近い(引っかけに使われる可能性がある)ので気をつける必要があります。他の島は判断が難しいので出題される可能性は低いです。あっても今回の登録のメインである奄美大島くらいだと思います。
 産業については沖縄県の産業の方が出題されやすいと思います。奄美大島がある鹿児島県に関する出題も考えられますが、沖縄県よりは扱われにくいと思います。それは沖縄県の事情(2022年で返還から50年、首里城焼失など)もあります。
 一方歴史ですが、こちらは以下の出題が考えられます。
・奄美大島と沖縄の歴史(アメリカからの返還など)

 奄美大島と沖縄島はいずれも戦後アメリカの占領下に置かれました。前者は1953年、後者は1972年に返還されました。特に沖縄は入試年の2022年は返還からちょうど50年の節目です。もしかすると、今回の登録を素材にアメリカと沖縄の関わりを問題に出す可能性があります。

こちらも、2年前に「百舌鳥・古市古墳群」を題材に、さらにそこから天皇陵を振りにした問題を掲載します(天皇陵にしたのは改元も関係しています)。参考にしてください。

21_百舌鳥古市古墳群世界遺産登録_天皇陵の歴史_1

21_百舌鳥古市古墳群世界遺産登録_天皇陵の歴史_2

21_百舌鳥古市古墳群世界遺産登録_天皇陵の歴史_3

21_百舌鳥古市古墳群世界遺産登録_天皇陵の歴史_4

 以上を見ると、地理・もしくは歴史だけで今回の世界遺産登録を素材に大問を作るのは少し難しそうです。出題するなら今回の登録に関する問題を少し多めにした上で日本の世界遺産全体を聞くという大問が無難だと思います。

3,もし「北海道・北東北の縄文遺跡群」が登録されたら


 今回は「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の登録をメインに記事を書いていますが、実は今年もう1件登録される可能性があります。それが「北海道・北東北の縄文遺跡群」です。これは2020年に新型コロナウイルスの影響で会議が出来なかったため、今年の会議で去年と今年の登録候補の話し合いを行うからです(因みに日本は来年の登録候補を決定していないので、来年日本から世界遺産が登録される可能性はないです。あるにしても、「北海道・北東北の縄文遺跡群」の登録が来年にズレる場合です)。

参考:「北海道・北東北の縄文遺跡群」

https://jomon-japan.jp/
北海道・北東北の縄文遺跡群 – 世界遺産登録をめざして (jomon-japan.jp)

 勧告については5月24日の週の予定ですが、一足先に登録された場合に考えられる問題を、先ほど同様に地理と歴史に分けて考えていきます。
 まず地理で考えられる出題は登録地である北海道・青森県・岩手県・秋田県の地理になると思います。いずれも第一次産業に特徴がありますので、それらと関連づけた出題が考えられると思います。また各道県に世界遺産や有名な伝統的工芸品がありますのでそちらも押さえておくとよいでしょう。
 そして「縄文遺跡群」とあることから出題されやすいのは歴史分野、特に古代史でしょう。そして考えられる出題は縄文時代を含む古代の遺跡と人々の生活です。おそらく秋に出版される時事問題集では授業で扱わなかった遺跡も紹介するかもしれません。しかし先述した考えの通り、出題される可能性はほとんどありません。あっても日本史で扱うことのある亀ヶ岡遺跡くらいでしょう。
 以上から、地理は登録される4道県の地理、歴史は縄文時代が中心にその前後の時代(旧石器~古墳時代)の遺跡が出題される可能性があります。

結び~中学受験における時事問題の考え方について~


 以上、今回の登録の可能性が高い世界遺産を通して、中学受験における世界遺産、時事問題の関係について見ていきました。簡単にまとめると以下の通りです。

①世界遺産は扱いやすい素材のため、登録された遺産は入試で扱われやすい
②ただし聞かれるのはこれまで学習してきたことが中心で、今回の世界遺産自体を詳細に聞かられることはほとんどない。
③「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」については、沖縄県の地理や歴史に関する出題が考えられるが、世界遺産全体での出題が考えられる。
④「北海道・北東北の縄文遺跡群」が登録された場合、構成する4道県の地理と古代史全般の出題が多くなる可能性が高い。

 そして、以上を踏まえた世界遺産の対策は以下の通りです。
A:日本にある世界遺産を全て押さえる
B:授業で習ったことのある①に関することを概ね確認する。
C:今回登録の可能性のある道県の地理・歴史を押さえる。

 Aは授業で習ったときに行うといいでしょう。Bも世界遺産の授業、もしくは世界遺産が試験範囲のクラス分けに関するテストの前に対策も兼ねて復習するといいでしょう。そしてCは受験での出題が考えられることから、夏休みに取り組むといいでしょう。

 今回は世界遺産登録を通して中学受験と世界遺産、そして時事問題について見てきました。ただし、中学受験と時事問題の関係については十分に説明できたとは言えません。これについては近いうちに改めて載せたいと思います。


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