見出し画像

せつな たんせつな ろうばく むこりった[川っぺりムコリッタ/映画感想]

生きるには金が必要。
生きるには人が必要。
生きるには喪失がつきまとう。
生きる意味を見失った人におすすめ。

山田(松山ケンイチ)は、北陸の小さな街で、小さな塩辛工場で働き口を見つけ、社長から紹介された「ハイツムコリッタ」という古い安アパートで暮らし始める。無一文に近い状態でやってきた山田のささやかな楽しみは、風呂上がりの良く冷えた牛乳と、炊き立ての白いごはん。ある日、隣の部屋の住人・島田(ムロツヨシ)が風呂を貸してほしいと上がり込んできた日から、山田の静かな日々は一変する。
できるだけ人と関わらず、ひっそりと生きたいと思っていた山田だったが、夫を亡くした大家の南(満島ひかり)、息子と二人暮らしで墓石を販売する溝口(吉岡秀隆)といった、ハイツムコリッタの住人たちと関わりを持ってしまい…。図々しいけど、温かいアパートの住人たちに囲まれて、山田の心は少しずつほぐされていく―。

映画『川っぺりムコリッタ』予告編 (youtube.com)

松山ケンイチさんが演じる山田。すごくよかった。
最初はほとんど話さず、苛立ちを冷蔵庫にぶつけたり、炊飯器から香る炊き立てのご飯に感動したりと胸の内を語らずとも表情豊かな人間だった。
そこに言葉がのる。アパートの人間と交流し自分の気持ちを少しずつ吐露する。懺悔的な語りは大家の南に川辺であった時だけ。人間の変化や葛藤がリアルに感じられた。
隣人の島田の過去を表面的にしか触れられず、溝口は謎の人のまま物語は幕を閉じる。
でも登場人物全員がお互いの過去をぶつけ合う必要なんてない。
心地よい距離で心地よく付き合っていくのが大事なんだと言ってもらえてるような気がした。
過去を消せないけど清算する事はできる。
ラストの温かな音楽と散骨(これはいいやつだった?笑)が明るい未来に向かって歩き出す感じでうるっときた。

終盤、山田がおかずを用意して島田を待っていたり、冷たくされてしゅんとしたりすごくかわいかったな。
あと幽霊が出てきて「ふふっ」ってなるのもよかった。
死んでもなお、人に愛されるのはその人の幸福ではないだろうか。

物語の中にでてくる「せつな たせつか ろうぼく むこりった」
調べたら仏教の時間の単位でした。

刹那 [せつな]    =1/75秒

怛刹那 [たんせつな] =120刹那 

縛 [ろうばく]   =60怛刹那
須臾 [しゅゆ]    =30臘縛


牟呼栗多(むこりった)=1/30日    2880s

呪文みたい。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?