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『日向坂で会いましょう』の眼鏡は視野を狭め、こころを解き放つ

今回も『日向坂で会いましょう』おもしろかったですね。

先週は夏休みをいただきました。昨年から8月のどこかに取る方針に舵を切ったのですが、休んだことでリフレッシュできたといえばできたし、できなかったといえばできなかった

日々の生活から「文章を書く」だけが抜け落ちただけ、良くも悪くも変わらない一週間を過ごした。さながらスーツ一着をクリーニングに出したクローゼットのような、有っても無くても景観に大した差異はないといったところだ。

しかしながら、この一着が在るのと無いのとでは気の持ちようが大きく違ってくる。それがなくても生活に支障をきたすことは全くないけれど、スーツを着た時の”大人として”と背筋が立つあの着心地のような、これによって保たれてた見栄があることに気づく

毎週の「文章を書く」という気張りはわたしが思う以上にほどよい緊張感をつくっていたのだと実感した夏休みだった。

さて、今回の『日向坂で会いましょう』では【世間にバレる前に…偽インテリメンバーを炙り出しておきましょう!】と称した負け抜け戦をおこなった。対決内容はインテリらしいクイズ企画…ではなく、インテリキャラをまとって大喜利や一人芝居を打つシビアなお笑い企画であった

わたしは眼鏡っ子が好きなので、ビジュアル的にはそれだけで大満足な回だった。個人的に山口陽世の眼鏡姿が素晴らしかったのだが、その思いの丈は文末にすこしだけ記したので、興味があれば読んでみてください。

具体的で漠然とした”インテリ”というキャラ設定で、かつおもしろい回答を、となればその道は細く狭い。その影響で予選第2ブロックでおこなわれた「自分史上MAXインテリ選手権」では、企画が倒れかける事態に発展した。

そもそも『日向坂で会いましょう』のクイズやお題は「※大喜利ではない」という前提があるのだが、これが前提にしてもフリにしても現場で参加しているメンバーにとって疑心暗鬼に陥る要素のひとつである。そこへ追い打ちをかけるようにインテリというキャラクターである。そんな過酷な状況下で視野狭窄によりパニックに陥った結果、番組は終始スベりそうな感じを抱えながらコーナーを進めていった。

こうして見ると、大枠はキャラを被って高負荷のお笑いに参加する企画ではあるのだが反転、キャラを被ることで思いきりが良くなるというメリットがあるのだろう。自転車に乗ってる時に大声で歌をうたったり、ネットで大口を叩いたり、仮面をかぶり正体が見えにくくなることで人間は自意識から解放されるのだ。

予選第3ブロック「即興インテリセリフ選手権」では、ラーメンズばりの何も無い空間に置かれた小西夏菜実がフレミングの法則を右手で駆使し手術を成功させていた。わたしが意外に思ったのはあの彼女の開けっぷりである。クールなイメージだけどすこしお茶目な彼女の外殻を大きく飛び越えて、解放的な小西夏菜実の姿はとても印象的だったその姿からは番組から降ってくる設定やプレッシャーの抑圧から解放されるカタルシスを感じられる

この企画を注目していくと、全員がキャラクターを装って収録にのぞんだ場合、おのおのが自分の役柄とどう向き合うかがみえてくる。パブリックイメージを演じるもの、イメージを自己の内から見つけ出すもの、役柄をスイッチするか持続するか、やり徹すか恥ずかしさが勝るか。その演技性はアイドルという職業、役柄を演じつづけている彼女たちのアイドル性にも通じる何かの示唆があるような気がした今回の企画だった。これを書き終えたあと、あらためてこの回を見返そうとおもう。

番組の最後にあった『恋のから騒ぎ』オマージュの説教コーナーに倣い、わたしも最後に一つ説教を。眼鏡好きとして、ひな壇で頭にサングラス掛けしていたメンバーは許しがたい全員反省してほしいあれは君たちの肉体の一部なのだよ

おしまい。

以下、余談

強く訴えたいので、大事なところは太字にした。

わたしは言いたい、山口陽世のメガネ姿が素晴らしかったということを。重めの前髪にアンダーリムからのぞきこむ生意気そうな目。つるの内側にサイドバングが入り込んでいるところも芸術点が高い。極めつけはメガネのズレを指の第一関節で直していたところである。

所詮メガネは道具である。しかし、道具とは趣が深いものである。大工の鉋、ジョンウィックの銃器、手前の相棒である道具の扱い方は、その人の人間性を写すエロスである。

第一関節で押し上げるあの直し方は、メガネが自身の肉体の一部になるほどに使い慣れつつも道具以上の愛着はもっていないことがうかがえる。その動作をする彼女の生意気そうなビジュアルイメージ通りの、様式美のうつくしさを感じる所作には心をつよく打たれるほかなかった。

以上。お付き合いいただきありがとうございました。


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