欠けたスコーンとコーヒーの行方
ひとりぼっちのある休日、少し離れたカフェに来た。
ドキドキしながらめがけて行ったお店の名前は"ドキドキ"。
50分ほど歩いてやっとたどり着いたころにはいつしか雨も止み、持っていた傘が鬱陶しく思うくらい晴れていた。
普段、予定のない休日は大体ひとりぼっちで、寝るかゴロゴロするか怠惰に過ごしている。
「今日こそは」と、重い腰を持ち上げて支度をする時も、街を歩いている時も、気分は上がらず、目的地に着くまで何度も帰りたいと思った。
ふと、周りを見ても家族や友達、恋人と歩いている人が多く、仕事でこの地に移り住んで来た私にとってはやはりここは「仕事の街」になっている。
あちらこちらに担当営業先があり、生活圏内がもはや職場なのだ。
社会人になり、私服を着る機会が格段に減って、好きだった青色を身に纏うことが滅多になくなった。ということに、最近気づいた。
抗うように、半ば意地になって青色のジャケットと青色のイヤリングをして出かけた今日なのだが、当たり前のように見せる相手がおらず、行き交う人々は誰も私を見ていない。
ここにいるよ!!と主張するような青い服はモノクロな人混みに溶けていくようでもあった。
そうだ、街はこれからクリスマス。
むしろ赤が勢力を拡大していく中だった。
いつの間にか着いたドキドキでコーヒーとスコーンを頼む。
「ごゆっくりどうぞ」と笑ってくれた店員さんは、1人で本を広げていた私に気遣いを示してくれたのではないだろうか。
ゆっくり、ここにいてもいいよと言ってもらえたようで嬉しかった。
少しずつ、少しずつでもいいから自分の居場所を作りたい。
この街で少しでも長くやっていけるように、と考えながら食べるスコーンは本当に美味しかった。