「モンキーマン」激辛RRR・インド発哀しみの復讐劇。
「モンキーマン」鑑賞。
母を殺された一人の少年。
時が経ち、底辺で泥水を啜り続けた青年が復讐の鬼と化す。
監督・脚本・主演の3役を担当はデヴ・パテル。
「スラムドッグ$ミリオネア」で子役から名を馳せ、「LION」でアカデミー賞候補。多様性の現代映画界でインド系トップの役者が血みどろのバイオレンス復讐劇を作り上げた。
インド映画で最近ヒットした作品で「RRR」がある。
歌唱パートで印象が薄まってはいるものの、植民地時代にイギリス軍に虐げられる民を描いていて、主役2人も中々に目を背けたくなる拷問を受けていた。当時よりも差別と迫害が蔓延る現代の本作はそういう描写も無く、より痛々しく映る。インド=カレーにちなんで、激辛RRRとでも言おうか。
在りし日の母の記憶、目の前で殺されたトラウマ、一度は挑み傷だらけにされる前半からの大逆襲。「ジョン・ウィック」再現。漆黒の主人公が深紅に染まる壮絶な最終決戦が行われる。
主人公の回想で母が聞かせてくれたハヌマーンの話が頻繁に出てくる。
教養のない私はハヌマーンといえば、ウルトラマンシリーズの海外進出を長年阻み続けた黒歴史を連想するが、実際はインド神話の神猿を指す。
主人公が地下格闘技のリングで猿の仮面を被り「モンキーマン」と呼ばれるのはこれの影響。重傷を負った彼を助けるヒジュラ(LGBTQ)の人たちもハヌマーンの格好で助太刀。意外に強い。確実に敵陣を減らすサポート。常に1vs1で撃ち合う。決してウルトラリンチはしない。
ラスト。復讐の最終標的である宗教教祖が命乞いの意味も込めて問う。
「何故、暴力の連鎖を止めない?」
彼は答える。
「俺の母の名を知っているのか?」
全てを成し得た時。その瞳で彼は何を見るのか。
哀しみと憎しみの終着点をお見逃しなく。