実際の商談でのヒアリング例
プリセールスエンジニアのセールス入門、今回は、実際の商談でのヒアリング例を紹介してみたいと思います。
これまでの記事はこちらをご参照ください。
それではさっそくですが、前回の記事でも例を挙げました、営業支援システムを例にして、その導入を考えているお客様との商談でのやり取りの例を挙げてみたいと思います。
さて、この例を見てどう思われましたか?
すぐ気づかれたかと思いますが、これはよくない例です。どこが良くないでしょうか。お客様としては顧客情報の共有がスムースに行えないところが現状の課題(ペイン)なのに、担当者は、製品の優位点である、データ分析を説明したくてたまらなくなってしまっているところですね。前々回の記事でよくない例として挙げた、プロダクトセリングになってしまっています。
このように、客観的に文字にすると気づきやすいと思いますが、実は、お客さんからヒアリングした課題、この例では顧客情報の共有について、自社の製品にあまり強みがない場合など、ついついこういうトークをしてしまいそうになります。ただ、やり取りを振り返ってみると、お客様との信頼関係の構築という観点ですでに失敗しかけていることがわかると思います。
それでは、課題ヒアリングの良い例を挙げてみたいと思います。
こちらについて、どの辺りがよいヒアリングになっているか考えてみてください。
まず、冒頭から、現状をヒアリングしているわけですが、課題を聞けた上で、その影響を掘り下げて確認しています。お客様の顧客に重複したアプローチをしたり、フォローアップが漏れてしまうことにより、非効率な営業活動になっていたり、信頼関係を損ねてしまったり(重複したアプローチを受けた顧客はこの会社大丈夫かなと思ってしまいますよね)、営業機会損失を生んでしまったり、ということがわかります。今後提案をする上で、この論点をぜひ盛り込んでいきたいですね。
次に、明らかになった課題に対して、これまで対策の取り組みを行ったか、という掘り下げを行っています。いくつかのCRMツールを試してみた、という言葉が出てきました。その上で、使い勝手が悪く、カスタマイズに限界がある、とのことでした。これらは、今後製品紹介やデモをする時に、ぜひ見せていきたいですよね。実際にデモに至る前に、例えばどんなところの使い勝手が悪かったり、どんなところをカスタマイズしたいのにできなかったのか、というところを更に掘り下げておきたいですね。
最後に、理想とする営業プロセスについて、更にヒアリングの質問をしました。これも重要で、理想のプロセスがわかれば、プリセールス的には営業支援システムがどの程度容易に対応可能なプロセスなのかがわかると思います。これにより、案件の確度がある程度予想できますし、どうしても対応が難しいプロセスの場合は、プロセス変更の可能性を探り、場合によっては早期撤退する選択肢も出てくるからです。
さて、こちらが基本的なヒアリングベースのソリューションセリングですが、あなたの会社での普段の商談でのヒアリングの進め方と比べて、いかがでしたか。
実は、私も以前はどちらかと言えば、前者に近い話の進め方をしていました。初回商談ではまずは会社概要と製品概要、その後に、お客様がシステムに求める要件を聞く進め方です。
しかし、商談に時間を割いてくださったお客様の多くは、何らかの困りごと(課題・ペイン)を抱えていたり、理想的にはこうしたいというビジョンがあるけど実現できていない、という状況にあります。こうしたお客様に、製品や会社の紹介は必ずしも行う必要はありません。お客様の現状課題ややりたいことを尋ね、それを掘り下げていくことで、より良い成果を達成できます。最初は慣れないかも知れませんが、ぜひ、試してみてください。
日本の会社、あるいは多国籍業の日本支社でも、このような商談の進め方が一般的ではないところもまだまだあるかと思います。ただ、世界的には、この形の営業スタイルが広まり、体系化されてきていると感じています。日本は営業手法の体系化の点で遅れていると感じていて、今後の記事で、より様々な観点からアプローチしてみたいと思います。
さて、最後に大きめのネタばらしですが、実は今回の商談の例、よくない例良い例とも、丸ごとChatGPTに作ってもらいました。AIにはこの知識をすでに習得しています。AIに置き換えられない商談ができるプリセールス目指して、頑張っていきましょう。また、今後は生成AIを活用したセールス力アップの情報なども記載していければと思います。
今回の記事はいかがでしたか。記事に「スキ♥」を押してくださったり、私をフォローしてくださると励みになります。質問ご意見などもありましたらお気軽にどうぞ。
次の記事を書きました。古典的な営業フレームワークである「BANT」を、これまた具体的な会話例も交えながら紹介します。
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